本連載の第237回では「計画にはバッファーを持たせよう」という話をお伝えしました。今回はプロジェクトのキックオフ会議をうまく進めるためのポイントについてお話します。

新商品の開発や業務改善、DX推進など、普段の業務とは別に新しい取り組みを始める際にはプロジェクトを立ち上げるのが一般的です。ここで軽く、プロジェクトとは何なのかについておさらいします。

プロジェクトは特定の目標を達成するために行われる一連の活動や作業です。通常、これらの活動には始まりと終わりがあり、期限や予算、リソース(人材、技術、資金など)が限られています。そしてプロジェクトには以下の特徴があります。

目的と目標: プロジェクトは特定の目標や成果を達成するために行われます。これは新製品の開発、サービスの改善、イベントの実施など多岐にわたります。

一時的な取り組み: プロジェクトには明確な開始日と終了日があり、一定期間で完了します。

ユニークな取り組み: 各プロジェクトは独自の特性を持ち、他のプロジェクトとは異なる要素を含みます。

リソースの管理: 予算、時間、人材などの限られたリソースを効果的に管理し、目標を達成する必要があります。

進捗の管理: プロジェクトの進捗は定期的に把握され、必要に応じて調整されます。これにはスケジュールの管理、品質管理、リスク管理などが含まれます。

プロジェクトには、このような特徴があります。そして、このプロジェクトを円滑に開始するうえで欠かせないのがプロジェクトのキックオフ会議です。これまでにプロジェクトを経験したことのある方には頷いていただけるかもしれませんが、キックオフ会議はプロジェクトの初動で勢いをつけるために大変重要な役割があります。

そこで、本稿ではプロジェクトのキックオフ会議を開催するうえで考慮すべきポイントを2つお伝えします。

1. キックオフ会議で何を目指すか

プロジェクト開始の際にキックオフ会議が重要ということはすでにお伝えしましたが、ただ開催すればよい、というものでもありません。まずは、キックオフ会議で何を目指すか、あるいは目指すべきか、ということを考えましょう。なお、それにはどのプロジェクトにも当てはまるようなものはありません。

仮にプロジェクトの背景や狙い、取り組み内容などについて、キックオフ会議に召集するメンバー間で事前に共有できているのであれば、「プロジェクトで各メンバーに求める役割と責任を把握してもらうこと」や「これからメンバーにやってもらうタスクの進め方を理解してもらうこと」などを「目指すこと」として設定するのがよいでしょう。

しかし、そもそもプロジェクトの背景や取り組み内容などについても知らないままプロジェクトにアサインされたメンバーを招集したキックオフ会議においては、まずは「プロジェクトの目的と目標、取り組み内容について過不足なく理解してもらうこと」をキックオフ会議の狙いとしてもよいでしょう。

もちろん、時間が許せば役割と責任やタスクなどに言及するのもありですが、もともと何も知らないメンバーに対して過度に多くの情報を与えてしまうとアレルギー反応を示す人が出てくる恐れがあるので、メンバーの特性も考慮したうえで慎重に行いましょう。

2. キックオフ会議に誰が出るか

キックオフ会議の狙いと並んで重要なのが、会議の参加者です。狙いを達成するうえでは、可能であれば以下の項目について予め知っておくことができれば効率的・効果的に進められるでしょう。

A. 参加者の部署/職位/人脈
B. 参加者同士や自分との関係性
C. 参加者のスキル/知識/経験

Aについては、プロジェクトから純粋に恩恵を受ける部署なのか、一方的に負担がかかることが想定される部署なのか、プロジェクト遂行時に部署の協力をどれだけ取り付けることができそうかといったことがある程度予想できます。

Bについては、参加者間で関係性がよろしくないのであれば、感情に任せた無用な衝突を回避するために細心の注意を図る必要があります。また、もともとの関係性が希薄であれば、ちょっとした雑談を挟むことでお互いの人柄を知ってもらって、その後のコミュニケーションを円滑にすることもできます。

Cについては、プロジェクトを円滑に進めるうえで誰に何を期待するのかを考える際のインプットになります。また、参加者のスキルや経験次第では、キックオフ会議の中でも進め方やスケジュール、リソースなどについて重要な情報を得られるかもしれません。

これらの情報はキックオフ会議成功のための必須要件というわけではありませんが、押さえておくことでキックオフ会議やその後のプロジェクト運営において役に立つことは間違いありません。

プロジェクトでキックオフ会議を開催する際には、キックオフ会議の「狙い」と「参加者」の2つを意識することで成功の確率を上げましょう。