本連載の第201回では「新年度に入って心機一転、人間関係のスキルを磨こう」という話をお伝えしました。今回はタスク管理の手法についてお話します。

効率的に仕事をこなすには、タスクそのものを迅速に行うだけでなく、タスク管理を工夫することによっても実現できます。本稿ではソフトウェアのアジャイル開発で使われる、スクラム手法を用いたタスク管理の手法で仕事を効率的に行う方法をお伝えします。

その前に、アジャイル開発とは何かについて説明します。アジャイル開発とは、ソフトウェア開発のプロセスを柔軟かつ効率的に行うためのアプローチで、顧客の要求や状況の変化に迅速に対応できることを特徴としています。アジャイル開発では、短期間の反復的な開発サイクルを通じて進捗を確認し、必要に応じて方向性を修正していきます。これにより、プロジェクト全体のリスクが低減され、顧客に価値を提供する製品が短期間で開発されます。

一方のスクラム手法とはアジャイル開発のフレームワークの一つで、プロジェクトやタスク管理を効率化する方法です。短期間の反復的な開発サイクルを通じて進捗を確認し、方向性を修正します。

それでは、このスクラム手法を用いたタスク管理の方法を説明します。

1. スクラムボードの作成

スクラムボードは、タスクを可視化し進捗を管理するための強力なツールです。スクラムボードを作成することでタスクの優先順位付けや進捗管理が容易になります。

まずはスクラムボードに使うツールを選択しましょう。アナログではホワイトボードやポストイットでスクラムボードを作成することができます。デジタルではTrelloやAsanaといったタスク管理アプリも使えます。これらのアプリ内で項目やカードを作成し、タスクの進捗を管理できます。また、通知機能を活用することでタスクの期限が近づいていることをリマインドすることができます。

スクラムボードの項目はTo-Do(やることリスト)、In Progress(作業中)、Done(完了)という3つの要素で構成されます。タスクが進行するにつれて、カードを適切な項目に移動させます。それによってタスクの進捗状況が一目でわかります。

なお、To-Doには、まだ手が付けられていないタスクをリストアップします。In Progressには、現在取り組んでいるタスクを配置します。そして、Doneには完了したタスクを移動させます。

タスクのカードにはタスク名、期限、詳細やサブタスク、優先順位などの情報を記載します。この情報が整理されていることで、タスクの内容や期限を把握しやすくなり、効率的に作業を進めることができます。

準備ができたら毎朝、毎夕など定期的にスクラムボードをチェックし、タスクの進捗状況を確認しましょう。新しいタスクが追加された場合や、既存のタスクの優先順位が変更された場合は、スクラムボードをアップデートします。

また、作業中のタスクが完了したらカードをDoneに移動させます。Doneに移動させることで達成感を覚え、モチベーションを維持する効果も期待できます。

2. タスクの分割と優先順位付け

スクラムでは、大きなタスクを小さな実行可能なタスクに分割するとよいでしょう。まずは目標達成のために必要なタスクをリストアップします。次に、そのタスクをさらに小さなサブタスクに分割します。例えば、プロジェクトの企画書を作成するタスクは「リサーチする」「企画書の構成を決める」「各セクションを記述する」「校正・編集する」といったサブタスクに分割できます。タスクを分割することで、取り組むべき具体的なアクションが明確になり、タスクの進捗がわかりやすくなります。

また、タスクに優先順位を付けることで重要なタスクに集中し、効率的に作業を進めることができます。優先度の高いタスクから順にTo-Doに追加しましょう。タスクの優先順位は、一般的には緊急性や重要性などを考慮して決定します。

なお、タスクの優先順位は状況が変化したり、新たな情報が入ったりすることで変わることがあります。定期的に優先順位を見直し、必要に応じてスクラムボード上でタスクの順序を変更しましょう。

3. タイムボックスを設定し、短期的な目標を立てる

スクラムでは、タイムボックス(制限時間)を設定し、短期的な目標を立てることで生産性を向上させます。タスクやプロジェクトに対して適切な期間のタイムボックスを設定しましょう。例えば、一日の中で取り組むタスクには1時間や30分などのタイムボックスを設定します。これによって時間を効果的に使い、タスクに集中することができます。なお、集中力を回復して作業の質を維持するために、タイムボックスが終了したら、そのタスクから離れて次のタスクに移るか、短い休憩を取るのがよいでしょう。

また、長期的な目標やプロジェクトを達成するために短期的な目標を立てるのも重要です。短期的な目標は、例えば1週間や1ヶ月単位で設定することができます。短期的な目標を設定することで、達成すべき具体的なタスクが明確になり、モチベーションも維持しやすくなります。

そしてタイムボックスが終了したらタスクの進捗を確認し、達成度を評価しましょう。完了したタスクはスクラムボード上でDoneに移動させ、未完了のタスクは引き続きIn Progressに残しておきます。タスクの達成度を把握することで、次のタイムボックスで取り組むべき点を明確にできます。

達成度の評価は、自分自身の働き方を振り返る良い機会でもあります。タスクの進捗が予想より遅い場合や、何度も同じタスクに取り組んでいる場合は、その原因を特定し、改善策を検討しましょう。

4. 定期的なレビューと反省

スクラムでは定期的なレビューと反省を行います。一定期間(例えば1週間や1ヶ月)ごとにタスクの達成状況をレビューしましょう。達成できなかった目標があれば、その原因を分析します。レビューを通じて、次の期間の目標やタスクの優先順位を見直します。また、達成できなかった目標を再評価し、新たなアプローチを検討することも重要です。

定期的に自分の働き方やタスク管理方法について振り返り、改善点を見つけるのもよいでしょう。例えば、タスクの進捗が予想より遅かった場合、タスクの見積もりや優先順位付けの方法を見直すことができます。反省を繰り返すことで、自分にとって最適なタスク管理方法を見つけ、生産性を向上させることができます。

個人の生産性向上のために、アジャイル開発で一般的なスクラム手法を活用してみましょう。スクラムボードの作成、タスクの分割と優先順位付け、タイムボックスの設定と短期的な目標の立て方、そして定期的なレビューと反省を実践することで、効率的なタスク管理が可能になります。これらの方法を取り入れることで、タスクの進捗が明確になり、時間を効果的に使うことができ、生産性の向上が期待できます。