本連載の第141回では「成果で差別化する働き方とは」と題し、「希少性」と「模倣困難性」という2つを軸に成果で差別化するための方法をお伝えしました。今回も成果に焦点を当てて、圧倒的な量の成果を達成する方法についてお話します。

周りの人達と同じ時間しか働いていないのに同僚を大きく上回る量の成果を上げている人はいませんか。平均の3倍の売上を上げ続ける営業担当者や、処理する伝票の枚数が他の人の2倍の経理担当者などです。その生産性の高さの源泉はどこにあるのでしょうか。それを理解するには、まず成果の量そのものについての理解を深める必要があります。

成果の量 = 1時間あたりの生産量 × 成果に繋がる労働時間

このように捉えると、成果の量を上げるには単位時間あたりの生産量を上げるか、成果に繋がる労働時間を増やすかのいずれかで実現できるということが分かります。以降ではそれぞれのケースで考えてみましょう。

1時間あたりの生産量を増やす

営業担当者なら1時間あたりの売上額または利益額、経理担当者なら1時間あたりの処理伝票数などが分かりやすい指標になるでしょう。その上で、売上額または利益額であればさらに次のように分解して考えます。

1時間あたりの売上額/利益額 = 1商談あたりの平均受注額/利益額 × 単位時間あたりの商談件数 × 成約率

なお、「単位時間あたりの商談件数」は一般的には「1日あたりの商談件数」でカウントすると思いますが、それでは「残業して商談件数を稼ぐ」という発想になりかねないのでここでは敢えて1時間あたりにしています。1時間あたりにすると商談件数が0.2や0.5といった少数になるかもしれませんが、それでも差し支えないでしょう。

そしてこのように分解すると、1商談あたりの平均受注額/利益額または単位時間あたりの商談件数、或いは成約率のいずれかを増やすことで単位時間あたりの売上額/利益額を増やせるということが分かります。

その上で、「自分が最も伸ばせる余地があるのはどの要素か」を考えてみるとよいでしょう。たとえば平均受注額がエースの営業担当者と比べて著しく低いのであれば、クロスセルやアップセルができないかといった提案内容の見直し、単位時間あたりの商談件数が少ないならアポ取りのペースアップや顧客訪問ルートの最適化などで対応すればよいでしょう。また、成約率に改善の余地があるなら、成約に繋がる成功要因を探るために上司に相談を持ち掛けるといった行動に移すのがよいかもしれません。

無論、こうした考え方は営業担当者だけではなく経理や総務、人事など他の職種にも当てはまります。1時間あたりの生産量を構成する要素は何か、その中で自分が梃入れすべきものは何かを特定し、対応しましょう。

成果に繋がる労働時間を増やす

「成果に繋がる労働時間を増やす」というと残業を増やすことと同義と思われそうですが、そうではありません。これはあくまでも成果に繋げるための時間を増やすということであり、勤務時間を長くするのではなく時間配分を見直すことを意図しています。

この時間配分の見直しには大きく分けると「空き時間の有効活用」と「成果に繋がる仕事への転換」の2つの方法があります。

最初の「空き時間の有効活用」は、移動時間やちょっとした隙間時間などを使って成果に繋がる仕事を行うことです。それには電車での移動中に顧客へのメールに返信するとか、提案資料を作成するといったことが想定されますが、必ずしも実作業である必要はありません。

提案力を磨くために交渉術や行動経済学の本を読んだり、顧客の業界についての情報収集をしたり、或いは競合他社に打ち勝つための作戦を考えるといったことでも良いのです。それは必ずしも何か形があるもののアウトプットである必要はなく、情報や知識のインプットや無形のアウトプットであっても問題ありません。あくまでも重要なのは「成果に繋がることか否か」という観点です。

続いて「成果に繋がる仕事への転換」についてです。これは成果に繋がらない仕事を特定し、そこにかけている時間を成果に繋がる仕事に振り向けることを指します。このようにお話すると当たり前な感じがしますが、改めて自分の仕事を振り却ってみると案外成果とは無関係な仕事にかけている時間が多かったりします。

よくあるのが社内での報告会議に使う資料作成です。社内報告用なのに過度に力を入れて、大量の資料を用意したり見栄えをよくすることに何時間も費やしたりする例は珍しくありません。そこに費やしている時間の一部でも、アポ取りや顧客の課題分析などの成果に繋がる仕事に振り向けられれば成果を伸ばすことができるはずです。

以上見てきたように成果の「量」で他を圧倒するには、ただ漠然と頑張ろうとするのではなく「量」を構成する要素を特定し、その中で自分が改善すべきものを決めて集中的に取り組むのが効果的でしょう。ご自身の成果を上げるために参考になれば幸いです。