本連載の第139回では「最小限の労力で求められる成果を上げる働き方とは」と題し、この原理とドミノ倒しの発想を応用して効率よく成果を出す方法をお伝えしました。今回は仕事をしっかりこなしながら定時で帰るための方法についてお話をします。

多くの同僚が長時間の残業に追われているのに、毎日定時で帰る人はいませんか。それも、しっかりと求められる成果を上げているので誰も文句を言えない人です。本来、定時というのは「仕事を終えて退社しなければならない時間」なので残業する人の方がイレギュラーのはずなのですが、その議論はまたの機会にお話しするとして、なぜその人が定時で帰ることができるのかを考えてみましょう。

成果を上げながら定時で帰るために必要な要素は「時間配分の最適化」「仕事のスピードアップ」「今日やるべきことの明確化」の3つです。

1. 時間配分の最適化

なぜ残業が発生してしまうのか、その一因は時間配分にあります。既に目の前にある仕事や、上司や顧客から振ってくる仕事を発生する順番に片っ端から対応しようとするのでは、何にどれだけ時間がかかるか、もしくはかけるべきかを考えずに取り組むということです。これでは仕事を定時までに終えられるかどうかは「やってみないと分からない」のも同然です。

そうではなく、定時までの時間が既に分かっているので、その時間をどう使うかを先に考えることが重要です。そしてそのためには何の仕事にどれだけかかりそうか、予めざっくりで良いので見積もっておかなければなりません。さらに見積もった時間を勤務時間の中のどこに配分するかを考えます。そうすれば行き当たりばったりではなく、勤務時間を計画的に使うことができます。

なお一点、気を付けなければならないのが突発的な仕事の発生です。もし突発的な仕事が頻発するのであれば、それを見越して時間配分に多めのバッファー(ゆとり)を含めておきましょう。

2. 仕事のスピードアップ

当然ですが、仕事のスピードが遅くて残業に追い込まれてしまうということもあるでしょう。もし、システムへのデータ入力、情報の集計・分析、資料作成などの作業が遅いということであれば、改善の余地は十分にあります。改善方法は状況によって様々ですが、ここではよくある2つの方法をお伝えします。

一つ目は「仕事そのものを減らす」ことです。これは業務の目的を問い直したり、業務プロセスを見直したりすることで「やらなくて済む」ようにすることです。例えば会議資料作成なら、「本当にその会議に資料が必要なのか」や「その資料はそんなに凝ったものである必要性があるのか」などを問い直すことで無駄な作業を浮き彫りにすることができます。

2つ目は「仕事を自動化する」ことです。同じパターンの仕事が高頻度で発生する場合には自動化が威力を発揮します。定型的な転記、集計、分析などの作業をエクセルやGoogle スプレッドシードで行っている場合には、関数やピボットテーブル、マクロやGoogle Apps Scriptなどのツールを駆使することで自動化は容易にできます。それによって仕事のスピードが上がり、労力が減って、おまけに人的ミスもなくなります。まさに一石三鳥ですね。

3. 今日やるべきことの明確化

かのベンジャミン・フランクリン米大統領の言葉に「今日できることを明日に延ばすな」という言葉があるそうですが、この教えは定時で帰る際の阻害要因になります。そもそも「今日できること」とは何でしょうか。もしもそれが不明確なのであれば、際限なく仕事をし続けることになってしまうでしょう。

定時で帰るには「今日できること」と「今日すべきこと」の間に線を引いて、欲張らずに後者に特化して仕事をすることが不可欠です。そのためにも一日の最初に「今日何をすべきか」を決めておくことが有効です。他にできることが見つかったとしても、当日中にやらなければならないことでなければ潔く翌日以降に回してしまうのです。

なお一点、週単位や月単位での繁閑を考慮して「閑散期の今のうちにやっておいた方がよい」と判断した場合には、早めに対処するようスケジュールを組むことを忘れないようにしましょう。そのような場合には、もし仕事の期限が今日中でなかったとしても、その仕事を「今日すべきこと」として対処します。

本稿では定時で帰るための要素として「時間配分の最適化」「仕事のスピードアップ」「今日やるべきことの明確化」の3つをお伝えしました。かつては残業が美徳とされていましたが、最近では働き方改革の影響もあり、人々の意識が変わりつつあります。今では「仕事をきちんとこなしながら定時で帰ること」が評価されるようになってきました。本稿の内容が定時帰り達成のための参考になれば幸いです。