9月15日。2018年版の手帳にそろそろ注目が集まるこの時期に、Amazonの手帳部門で1位になった手帳があります。その名も「逆算手帳」。発案・製作したのは、コボリジュンコ氏。発売から2年目にこの快挙を成し遂げた逆算手帳の発案から今後の夢までをうかがいました。

「逆算手帳」を発案・製作したコボリジュンコ氏

私はコボリジュンコ氏に拙著『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)でも取材しています。同書では、コボリ氏は既存の手帳をご自身の工夫で使いこなす方法を語ってくださいました。

「逆算手帳」を開発した理由

コボリ氏が昨年から作っているオリジナルの手帳が、逆算手帳です。コボリ氏はなぜこの手帳を開発・製作するに至ったのでしょうか?

コボリ氏「自分の夢をはっきりわかっている人は意外と少ないんです」

同氏が登壇する、夢をかなえるためのセミナーに来ているのに、自分の夢がわかっている人は300人に1人ぐらいなのだとか。ダイエット、海外旅行、仕事etc……。これらの目標のゴールが決まっていないと、今日の行動をどうすればいいのかに結びつかない。だからまず夢をはっきりさせる。これが大切なのです。同時に、今ある手帳についてはこんな感想を持っていたそうです。

コボリ氏「今の手帳は予定やタスクばかり=やらなければならないことがほとんど。やりたいことや、なりたいことは書くところがないんです」

ところがそのためのツールが世の中にはない。また、ご自身では、実現したいビジョンを大きなボード一面に貼るようなノウハウも試してみたそうですが、「持ち歩けないし、お客さんが来たときにはしまわなくちゃいけなくて」(コボリ氏)。

コボリ氏自身は、市販の各種文具をベースに独自のノウハウを実践していましたが、当然、それをそのまま応用するためのツールは市販されていないのです。それを他の人にも使えるように、汎用のツールとして作ったのが逆算手帳だそうです。

手帳を作った経験はなかったコボリ氏は、いろいろなリサーチをしました。まず知り合いをたどって、手帳を自作・販売した人に会って話を聞きました。また印刷工場で冊子が製作される工程を実際に見学。同時に自分の考えを手帳のページにコンテンツとして落とし込んでいったのです。

こうやってできた2017年版逆算手帳は、同氏のセミナーの参加者や主宰するBlog「名言コツコツ」の読者層を中心に人気を集め、製作した1,000冊がすぐに完売。そこで2018年版の製作が決定しました。よりブラッシュアップして登場したところ、前述の成果となったのです。

逆算手帳のページ構成

逆算手帳のページ構成は、かなり個性的です。最初のページは、「Vision」。これは、前述の自分のありたい姿を書くページで、楽しみやライフワーク、仕事、お金、人間関係など8つの項目が円環の図になっています。

逆算手帳「Life Vision」のページ。健康や仕事など8つのジャンルの記入欄が円環になっている

更にやりたいことを書くページ。これも「生きているうち」「10年以内」「1年以内」に分かれています。更に10年逆算シート、1年逆算シートと続きます。

「LifeGyakusan」(ライフ逆算シート)。やりたいことを、いつまでやるかを基準にして3つに分類して記入する

M10YearGyakusan。10年後にどうなっていたいかをイメージし、そこに至るまでの各年のイメージを書くページ@

1YearGyakusan。その年の各月に何をしたいかどうなっているかを書くページ。やはりジャンルごとに書く

そして年間目標シートのあとに、月ごとのガントチャートのページです。

1YearGoal。その年の目標と、目標を達成したときのワクワク感を書くページ。三角のマークでつながれた各ブロックがステップを意識させる。また右ページに達成率を見やすくするバーもある(達成段階ごとに目盛りごとに塗りつぶしていく)

ガントチャートページの記入例。日付が上部にあり、縦方向に項目があるが、進行管理だけでなく、習慣チェックや、簡単な予定管理にも使えることがわかる

つまり逆算手帳においては、いわゆる手帳的なページは目標設定ページのあとに初めて出てくるのです。手帳のサイズはA5で、ページ数も決して多い方ではありませんが、このページ構成だけでも十分個性的だといえます。

DairyVision。 現実の1日と理想の1日を記入する。時間軸のある記入欄の右横には「もっと増やしたいこと」「新しく始めたいこと」などの欄があり、生活の改善を意識できる

ユーザー向けのサポートも充実

この逆算手帳は、Amazonで販売されていますが、専用のサポートもされています。一つは、メール講座です。これはほぼ月1回発行されており、使い方や記入方法などをガイドしています。

もう一つは有料のセミナーです。8月から開始して翌2、3月まで、単発と連続の2タイプの講座があり、逆算手帳の考え方と書き方をレクチャーする内容だそうです。

また、逆算手帳の考え方と使い方を広めるための認定講師制度もあります。これは、ユーザーから提案されてできた制度で、現在17名(0期4名、1期13名)が研修を受けています。講師になると、「逆算手帳認定講師」の名刺が作られ、それを使えるようになるそうです。 2期の募集は11月からですが、講師認定されるのには、厳しい基準があります。

まず講師からの推薦がないと認定講師講座を受講できません。また、逆算手帳の考え方をきちんと理解しているかどうかを見るために、手帳の中身がチェックされるそうです。

ちなみに「悲壮感の漂う人や(逆算手帳の考え方が)理解されていない人はお断りしています。そういう人は"わかっちゃう"んですよ」(コボリ氏)とのことです。そもそも、コボリ氏は逆算手帳でゴキゲンな人を増やしたいと考えているそうで、だとすればこういう基準も実はとても逆算手帳らしいのかもしれません。一度認定されても取り消しの規定もあるとのことなので、認定講師の方は研鑽を怠ることができず、それはユーザーへの責任でもあるのかもしれません。

Amazon1位という目標は、発売前に逆算手帳に既に書いてあり、見事達成したことになります。そのコボリ氏の今後の目標はいろいろあるらしいのですが、手帳については以下の2つだそうです。

コボリ氏の手帳。確かに1位になると書いてある。見事実現

まず定番手帳として雑誌の手帳特集に出ること。ちまたには固有名詞を冠した人気手帳がいろいろありますが、その仲間入りをしたいとのことでした。

もう一つは、海外進出(!)。逆算手帳を他の国でも売りたいのだそうです。ターゲットとなる国は、北米、そしてシンガポールとのこと。このことはコボリ氏の逆算手帳に達成したいこととして、具体的な数字とともに書いてあるはずです。

日本国内には依然としてアナログな手帳のちょっとしたブームのような状態が続いており、作った人の名やブランド名を冠した手帳が続々と登場しているようです。そして逆算手帳が、こういう状況を海外に輸出する先兵の役割をひょっとしたら担うのかもしれないと思うと、なかなか先が楽しみに思えてきます。

執筆者プロフィール : 舘神龍彦

手帳評論家、ふせん大王。最新刊は『iPhone手帳術』(エイ出版社)。主な著書に『ふせんの技100』(エイ出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)など。また「マツコの知らない世界」(TBS)、「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)などテレビ出演多数。手帳の種類を問わずにユーザーが集まって活用方法をシェアするリアルイベント「手帳オフ」を2007年から開催するなど、トレンドセッターでもある。手帳活用の基本をまとめた歌「手帳音頭」を作詞作曲、YouTubeで発表するなど意外と幅広い活動をしている。

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