映画化&イベント化も決定した『カメの甲羅はあばら骨』(SBクリエイティブ刊)で人気の古生物イラストレーター・川崎悟司さん。今年4月の新刊は、なんと「耳」だけにスポットを当てた動物図鑑です。

「人間がもし同じ耳の構造を持っていたら」というユニークな視点のイラストで楽しく読める動物図鑑『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)より一部を抜粋し、連載にて紹介します。

第4回のテーマは、「デカ耳で体温を下げるフェネック」です。

体に対する耳の大きさの割合は哺乳類で最大

フェネックは北アフリカなどに分布するキツネの一種で、尾を含めない体長では30~40cmほどと、大人になっても体重は1㎏前後ほどにしかならない世界最小のキツネです。大きな耳が特徴で、肩までの高さと耳の長さがほとんど同じで、体に対する耳の大きさの割合は、哺乳類中最大です。

小顔に大きすぎる耳と目鼻パーツがぎゅっ!

フェネックは、小さな顔の下の方に目や鼻などのパーツが集まっています。とてもかわいいですが、耳は大きすぎるし、ちょっとバランスを欠いているからこそ、より一層キュートに見えて人気があるのかもしれません。

  • 『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)より引用

過酷な砂漠の環境を、毛皮と耳でサバイバル

フェネックの耳は、砂漠生活に特化して現在の姿に進化したと考えられます。耳には毛細血管が張り巡らされており、耳が大きいほど広い面積に風を当てられ、体温上昇を防げるというわけです。ヒトと違い、汗をかいて体温を下げることができないので、耳で冷やした血液を巡らせ体を冷やしています。

  • 『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(2022年4月発売・宝島社刊)より引用

耳は大きいだけでなく、耳を動かす筋肉もよく発達しており、特定の方向に向けて角度を変え、さまざまな方向から音をキャッチできます。砂の中の獲物が出す音をキャッチする収音器としても働くのです。

フェネックは日中の強烈な日差し、夜間の凍える寒さを避けるために、巣穴に潜んで暮らしています。周囲の環境を把握し、スナネコなどの外敵を素早く察知し、餌を探すためにも大きな耳は視覚よりも頼りになるというわけ。

まだある! 語れる耳ネタ

アレンの法則を知っている?

寒冷地の恒温動物は、体の中の熱が体の表面から逃げるのを防ぎ、体温を奪われないようにしなくてはなりません。耳や足などの末端部分が小さい、短いと、熱が逃げにくくなります。砂漠のフェネックより、日本のキツネは耳が小さく、ツンドラ地帯のホッキョクギツネではさらに小さくなります。同系統の動物では、耳など体表の突出部が、寒い地域では小さく、温暖な地域では大きくなる「アレンの法則」があります。この法則を意識しながら動物を観察すると、新しい発見があるかもしれません。

『人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑』(宝島社刊)

動物が持つ驚異の能力は「耳」がカギ!

効率的にエサをとるため、敵が出す音をよく拾えるようにするため―― 厳しい自然界で生き残るために進化した動物の耳。さまざまな能力があり、それはコミュニケーションのあり方につながります。

【川崎悟司さんより】
生き物の耳にはさまざまな形と機能があり、人間が感じることができない音を聴くことができる生き物もいます。また頭部に耳があるともかぎらない生き物や、そもそも耳はなく、体のどこかで音を感じとっている生き物もいます。だから生き物によってそれぞれ感じる音の世界は異なるでしょう。「そんな生き物たちの耳を人間が持っていたら……」を、イラストで可視化してみました。

動物園・水族館の飼育員、獣医師など、現場のプロに取材し、その秘密を解き明かします。

『カメの甲羅はあばら骨』(SBクリエイティブ)で人気の古生物イラストレーター・川崎悟司さんが描く、「人間がもし同じ耳の構造を持っていたら」というユニークな視点のイラストで楽しく読める動物図鑑です。