じめじめした季節が続きますが、梅雨があけるまでの辛抱です。ビールを飲んで、はたまたお芝居をみて、スカッっと過ごしましょ~。この初夏も、気になる&見ておきたいお芝居が続々ラインナップ中。夏ならではのアウトドアも捨てがたいけれど、日本のショービジネスも熱い、です。W杯が終わったら何を楽しみに生きていけばいいの? なーんて心配されている方も心配はご無用ですよ。そんなわけで、7月のおすすめ演目を3本、ピックアップしました。

『くちづけ』 - 実際にあった話をもとにした、優しく、切ない物語

なんだか少し懐かしくて、最後には気持ちよく泣ける舞台が特徴の「東京セレソンデラックス」が、設立10周年を記念し、新作『くちづけ』を上演します。同劇団の主宰で、俳優かつ作家・演出家でもある宅間孝行の約3年ぶりの新作でもある同作は、宅間が約10年温めてきたというもの。実際にあった話を下敷きに、あるグループホームの住人と、住み込みのスタッフとしてやって来た漫画家とその娘が紡ぎだす「優しくも切ない切ない物語」を作り上げました。

大々的な宣伝をせずにクチコミで動員数を伸ばしてきた東京セレソンデラックスの新作で、この夏、ほっこり温かな涙を流してみませんか。じつは私も、数年前、知人に「絶対、泣けるよ、必見!」と同劇団の代表作『夕』を勧められ、劇場に足を運んだところ──。ハンカチを1枚しか持たずに行ったことを後悔した記憶が(笑)。今回の新作も、がっつり泣かせていただきます!

気持ちよく泣きたい人に、おすすめです

『くちづけ』
日程 2010年7月7日(水)~8月1日(日)
会場 シアターサンモール(東京・新宿) ※地方公演あり
作・演出 宅間孝行
キャスト 宅間孝行、金田明夫、加藤貴子、石井愃一、東風真智子、藤吉久美子、芳賀優里亜ほか
料金 全席指定6,000円

『空白に落ちた男』 - 台詞の一切ない異色の舞台、リニューアル上演

日本の演劇界に絶大な影響を与えた、伝説の小劇場、ベニサン・ピット。2009年1月に閉鎖した同劇場にて、2008年、約1ヶ月半にわたり53回もの公演を成功させた『空白に落ちた男』が、PARCO劇場に舞台を変え、リニューアル上演されます。

初演で好評を博したマイムをベースにしたパフォーマンスを開拓した小野寺修二とクラシックバレエの首藤康之の強力タッグに、「水と油」から小野寺修二のパートナーを務める藤田桃子。さらに、今回はコンテンポラリー・ダンスの安藤洋子と「コンドルズ」の藤田善宏が加わり、異質の個性を放つダンサー5人が勢ぞろい。初演同様、cobaが紡ぎだすアコーディオンの調べが私たちを不思議な物語の世界に誘います。台詞がなく、マイムでストーリーが展開していく異色の作品ですが、その動きは言葉以上に雄弁に物語を語っているから不思議~! 新たな世界観に開眼すること、必至です。

"台詞のない物語"の妙味を堪能すべし!

『空白に落ちた男』
日程 2010年7月24日(土)~8月3日(火)
会場 PARCO劇場(東京・渋谷)
作・演出 小野寺修二
音楽 coba
キャスト 首藤康之、安藤洋子、藤田善宏(コンドルズ)、藤田桃子、小野寺修二
料金 全席指定7,350円、U-25チケット5,250円

『また逢おうと竜馬は言った』 - キャラメルボックスの代表作、10年ぶりの再演

劇団創立25周年を迎える「演劇集団キャラメルボックス」が、記念公演の第3弾として上演するのは、『また逢おうと竜馬は言った』。1992年の初演以来、絶大な支持を得ている同劇団の絶対的な代表作のひとつで、今回が10年ぶり4回目の上演となります。ツアーコンダクターでありながら乗り物に弱い岡本の愛読書は『竜馬がゆく』。坂本竜馬にあこがれ、竜馬のような男になりたいと願っているのに、何をやっても失敗ばかり。そんな岡本が、ある事件に巻き込まれ、彼にだけ見える竜馬に時に励まされ、時に罵倒されながら、ある事件を解決するために奔走します。

私は再演から見ていますが、愛する人のため、見返りを求めずがむしゃらに走り回る(観ていただけばわかるけれど、まさにそうなんです!)岡本はこのところ定着しつつある、草食男子とは対極にある人物。不器用だけど、暑苦しいほど熱い彼の姿に、いつも小さな勇気をもらっています。さらに今回は、4回目の上演にして初めて、主人公・岡本役と彼とコンビを組む竜馬役にダブルキャスト制を採用。どちらのキャストで見ようか迷っているところですが、たぶん両方のキャストで見たくなっちゃうんだろうなあ~。

必死で走り回る不器用な男が、小さな勇気をくれる!

『また逢おうと竜馬は言った』
日程 2010年7月10日(土)~8月8日(日)
会場 サンシャイン劇場(東京・池袋) ※地方公演あり
作・演出 成井豊
キャスト 畑中智行・大内厚雄、左東広之・岡田達也ほか
料金 全席指定6,000円、学生割引4,000円
長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、演劇専門誌や女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk