石原さとみが多喜二の恋人役に! 劇団☆新感線の最新作も - 10月の3作品

10月、すっかり秋も本格化してきました。そうです。秋といったら、芸術の秋ですっ! 　「演劇? なんか堅苦しいし」「チケットを取るのが面倒くさ～い」というあなたも、いつもとは違う芸術体験、してみませんか。一部、チケット入手困難な演目もありますが、大抵のものはみなさんが思うよりもチケットを取るのは簡単。プレイガイドや劇場窓口ですぐに手に入ります。「劇場」という異空間で芸術体験をしたあとは、芝居の余韻に浸りながら、ワイングラスを傾けるのもまた楽し。長い秋の夜をしっとり、華麗に楽しんで!

『ヘンリー六世』 - 上演時間9時間、出演者38人の超大作!

『ヘンリー六世』は、かのシェイクスピアが、ヘンリー六世が王位に就いた生後9ヵ月(!)から50歳で死ぬまでを描いた、史実をもとにした大作。権力闘争に翻弄されたヘンリー六世を中心に、彼を巡る人々が織りなす愛憎劇は、今も昔も変わることのない人間の普遍的な愚かさにリリカルに迫る。上演時間9時間に渡るこの壮大な歴史劇の全編を上演してしまおうというスペシャルな舞台が、10月27日、ついにヴェールを脱ぐ。出演者は総勢38人! ベテランから注目の若手まで、またバックグラウンドも異にする実に多彩な顔ぶれのキャスト陣はあたかも日本の演劇界の縮図と、発表直後から演劇ファンの中で大きな話題になっていた。毎日のようにさまざまな舞台が幕を開ける日本の演劇界でも、これは滅多にない「事件」なのだ。その上演時間から、めったに上演されることのない同作、見ておけば、きっと、将来の自慢になるはず。

『ヘンリー六世』
日程	2009年10月27日(火)～11月23日(月・祝)
会場	新国立劇場　中劇場(東京・初台)
原作	ウィリアム・シェイクスピア
翻訳	小田島雄志
演出	鵜山仁
出演	浦井健治、中嶋朋子、渡辺徹、村井国夫、ソニン、木場勝己、中嶋しゅう、上杉祥三、立川三貴、木下浩之、久野綾希子、鈴木慎平、今井朋彦、金内喜久夫、菅野菜保之、勝部演之、鈴木瑞穂、岡本健一ほか
料金	S席7,350円、A席5,250円、B席3,150円、Z席1,500円

※平日:1部～3部を日替わりで上演。
※週末・祝日:三部通し上演あり

『組曲虐殺』 - 井上ひさしの真骨頂、昭和の世界にどっぷり

井上ひさしの書き下ろし最新作は、プロレタリア文学の旗手・小林多喜二の生きた時代を斬新な手法で綴る音楽劇。今、再注目されている『蟹工船』の作者で、昭和の初期に活躍し、官憲の拷問によってわずか29歳4ヵ月の若さで生涯を終えた、多喜二の生きざまを中心に、井上戯曲の真髄とも言える"昭和の世界"を描く。

多喜二を演じるのは、ミュージカル界のプリンス、井上芳雄。ヒロイン、恋人・瀧子役は、今回で舞台出演は3度目となる石原さとみ。高畑淳子や山崎一ら演技巧者や世界的ジャズピアニスト小曽根真の参加(作曲と生演奏を担当)など、見どころは尽きない。普通の芝居とも、ミュージカルとも違う、井上ひさしならではの「音楽劇」という世界観をたっぷり堪能して。

『組曲虐殺』
日程	2009年10月3日(土)～10月25日(日)
会場	天王洲 銀河劇場(東京・天王洲アイル) ※地方公演あり
原作	井上ひさし
演出	栗山民也
音楽	小曽根真
出演	井上芳雄、石原さとみ、山本龍二、山崎一、神野三鈴、高畑淳子
料金	S席8,400円、A席6,300円、学生割引5,250円

『蛮幽鬼』 - 豪華キャストでおくる復讐劇の結末は?

1年ぶりとなる劇団☆新感線の新作は、古代国家を舞台にした復讐劇。アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』をモチーフに、無実の罪で捕らえられた男が復讐鬼と化す姿を描く。劇場を轟かすような激しい立ち回りや、初めての人はびっくりすること必至(!?)の独特の効果音──。新感線"らしさ"全開の舞台構成の中で、感情の動きを繊細に描き、人間の業にまっすぐ、深く迫っていくことで定評のある"いのうえ歌舞伎"シリーズ。第6弾にあたる同作は、上川隆也と堺雅人のタッグに稲森いずみや早乙女太一などが加わり、これまで以上に刺激的な舞台になりそう。加えて、初日の幕を開けるまで、どんな舞台になるのかまったく予想がつかないのが、劇団☆新感線。それがまた、スリリングであり、楽しみだったりするのだ。ちなみに、「歌舞伎」と聞いて、たじろいでいる方、"いのうえ歌舞伎"はエンタテインメント性の高い舞台も特徴のひとつ。ご安心あれ!

『蛮幽鬼』
日程	2009年9月30日(水)～10月27日(火)
会場	新橋演舞場(東京・新橋) ※地方公演あり
原作	中島かずき
演出	いのうえひでのり
出演	上川隆也、 稲森いずみ、早乙女太一、橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと、山内圭哉 、山本亨、千葉哲也、堺雅人ほか
料金	1等席12,600円、2等席7,500円、3階A席6,300円、3階B席3,500円

長谷川あや
大学時代から舞台にはまり、小劇団のストレートプレイから大型ミュージカルまでジャンルを問わず観劇。卒業後は出版社に入社し、編集者として活躍。1996年に退社し、現在はフリーライターとして、All About演劇・コンサートや女性誌、情報誌などで読みものページを中心に執筆している

イラスト:gnk