日本人は保険が大好きといわれています。読者の皆様も、万が一に備えて死亡保険や医療保険に加入している人も多いのではないでしょうか?

テレビでもよく保険会社のCMを見ますし、最近では様々な保険商品を取り扱う保険ショップをショッピングモールなどで見かける機会も増えています。

「買い物ついでに株式など投資をしよう」という人は少ないようですが、「日曜日で少し時間もあるし、もしもの場合に備えて保険について考えようか?」と思う方は多いようです。

  • 保険について考える機会はありますか?

リスクを取る投資にはやや保守的ですが、リスクに備える保険には積極的。これが私たち日本人のモデルケースのようです。

保険に加入することを否定するものではありませんが、そもそも私たちは、幅広く様々な保障をしてくれる保険に誰もが加入しているということに目を向けてもらいたいです。それが「社会保険」です。

特に医療保険制度は「国民皆保険」といわれ、私たち全員が加入しています。"社会"全体で、"険"しい状態になっても、一定の生活水準を"保って"くれる社会保険について連載を通して学んでください。今回はその1回目です。

覚えておきたい5つの柱

社会保険は大きく2つに分かれます。生活レベルでの保障をしてくれる狭義の社会保険と、仕事シーンで保障をしてくれる労働保険。そして(狭義の)社会保険が3つ、労働保険が2つに分かれ、5つの柱で成り立っています。

  • 社会保険は5つの柱で成立する

入院したときは医療保険制度

例えば、入院した時には(1)の医療保険制度で原則、医療費の3割を負担すればよく、安心して治療に専念することができます。心疾患や脳疾患など治療費が高額なケースでも、医療保険制度のおかげで手術や治療を行うことができます。皆さんのお財布の中に入っている健康保険証の制度といった方が分かりやすいかもしれません。

実はこの健康保険証にはもっとスゴイ機能があるんですよ。次回以降お伝えしていきます。

介護が必要なときは介護保険制度

それから、将来、病気やケガで、もし食事や衣服の着脱などができなくなるといった「介護」が必要な状況になった場合、あなたはどうやって生活していきますか? 「その時は、配偶者がいて子供も優しくしてくれて……」と言いきれるでしょうか。

現在は家族の在り方も大きく変わってきており、どのような60代や70代を迎えることになるか、全く想像がつかないという人も多いことでしょう。たくさんの子供や孫に囲まれ、ご近所付き合いも積極的で、何があっても大丈夫。という過ごし方が理想ではありますが、これからは難しくなるかもしれません。

「もし1人だったら……」そんな状況でも、訪問看護や介護施設などで手厚い介護を受けながら生活をすることができます。充実した介護サービスを受けようと思うと、月額何十万もお金がかかりますが、原則、その1割負担で介護してもらえます。これが(2)の介護保険制度です。

このような医療や介護制度があることで経済的に大きな負担をすることなく、誰かに支えてもらえるという安心感を得ながら生活することができます。

誤解されがちな年金制度

若い人が割と誤解しているのが(3)の年金制度です。

「どうせ老後の年金は、自分たちの頃にはもらえないし」という発言を良く聞きます。老後の年金額が減るかどうか? 受給年齢が65歳から引き上げられるかどうかは別の機会に譲りますが、そもそも年金は老後のためだけじゃないということを知っておいてください。

あなたが障害者になった場合、あなたの生活を支えてくれる障害年金や、あなたが守るべき大切な家族がいるのに亡くなってしまった場合は、遺族年金があなたの家族を守ってくれます。ぜひ、「年金なんて……」と言わずに、まずはその仕組みを知ることからはじめてください。

それ以外にも、「仕事中に事故にあったら?」「大切な仕事をある日突然失ったら」など、長く働いていく上でも様々な不安がありますよね。こういった時には労働保険[(4)労災保険、(5)雇用保険]の出番です。こういう時のために私たちは保険料を払っているのです。

保険料はいくらぐらい払っている?

社会保険は「助け合い」制度です。多くの人が保険料を払ってくれるので、入院した人や介護が必要な人が助けてもらえるのです。

この保険料、会社員の人は給与から徴収されています。自営業の人はお住まいの役場から納付書が届いていると思います。

このように働き方や住んでいる場所、会社の規模(健康保険組合があるかどうか)などによって保険料は変わりますが、典型的なケースを1つ紹介します。

会社員Aさん(中小企業勤務・月収25万円)
健康保険料 約1万3,000円
年金保険料 約2万4,000円
合計 約3万7,000円

上で述べた(1)の医療保険制度の保険料が約1万3,000円で(3)の年金の保険料が2万4,000円です。(2)の介護保険は40歳以上が対象のため、保険料はありません。

「高い!」と感じた人も多いと思いますが、実は、これと同額の保険料をAさんの会社も負担しています。つまり、約7万4,000円の保険料を毎月、Aさんの会社とAさんで折半して払っているのです。

1カ月で7万円といえば、家賃や住宅ローンと同じぐらいという人も多いのでは。みなさんは現在の住居を選ぶとき、きっと真剣に選んだと思います。日当たりは? 駅までの時間は? そして家賃は?

社会保険も生活の基盤となる住居費のようなものだと捉えて、ぜひ興味を持って真剣に向き合ってください。

人生100年といわれる時代

いろんなシーンで聞く機会が増えていますが、特に若い人は「人生100年」を意識しながら、これから50年も60年も前に進んでいくことになります。

「1本の矢は折れても、3本の矢は折れにくい」といいますが、社会保険は3本どころか、5つの大きな柱があります。

必死に歯を食いしばって頑張らないといけない時もありますが、時には誰かに頼りながら生きていくことも長い人生少なくないはずです。

特にシニア層になった時に、大樹に寄りかかりながら安心した生活を送れるように、上手に社会保険と付き合っていきたいですね。次回以降、その社会保険の仕組みについて一つひとつお伝えしていきます。

著者プロフィール: 内山 貴博(うちやま・たかひろ)

内山FP総合事務所
代表取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP)FP上級資格・国際資格。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 FP国家資格。 九州大学大学院経済学府産業マネジメント専攻 経営修士課程(MBA)修了。