西葛西駅。東京メトロ東西線で荒川を渡ってすぐのところ、江戸川区で最もにぎわっている代表駅のひとつだ。実はこれまであまり訪れる機会がなく、素通りを繰り返していたのだが、今回駅前にうまいそばがあると聞いて、初めて降りてみた。

「あさりそば」(税込430円)

お目当ての店の名前は「やしま」。駅から直結した「メトログルメセンター」というちょっとした飲食街があるのだが、その2番街の中にこの店はある。ちょうどこの店は角地になっていて、あるかないかくらいの短い暖簾で外と仕切られている。ほとんど路麺店と呼んで差し支えはないだろう。

「天玉三兄弟」の正体とは?

こちらは食券制。券売機は左右両側に1台ずつある。店は立ち食いカウンタースペースのみ、と思いきや、向かって左、返却台の裏側に小さなステンレス製のテーブルとイスが出ており、一部だが簡易着席式になっている。

平日のランチタイム、客は4~5人と、まあまあ。食券機のそばには「天玉三兄弟」とプリントされたポスターが飾られていた。長男が「天玉そば」、次男が「春菊天玉そば」、三男が「ごぼう天玉そば」らしい。派手な売り出し方だが、よく見ればそれほど奇をてらったメニューでもなさそうだ。これと迷ったが、今回はもうひとつのオススメメニュー「あさりそば」(税込430円)にした。

立ち食いそばらしからぬポテンシャル

刻み海苔に隠れて見えづらいが、あさりのむき身がどっさりと盛られている。イメージは「深川めし」だろうか。ただし、あさり自体に甘辛く味がついているわけではなく、あくまでそばのツユでいただく。

あさりは大粒ではないもののボリュームがあり、コリッとした食感が楽しい。ツユも関東にしてはかなり薄い色をしていて上品。麺そのものも白くて細く、歯ざわりがいい。およそ立ち食いそばらしからぬポテンシャルを兼ねた一杯だった。

「やしま」は東京メトロ「西葛西駅」から徒歩1分

5分足らずで完食して、すぐ西葛西を後にした。このためだけに訪れるぜいたくもまた、調味料だ。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。