東京メトロ日比谷線「人形町駅」A2出口を出てすぐ。昔ながらの老舗でにぎわう甘酒横丁も程近い路地に、今回の「福そば」は佇(たたず)んでいる。もちろん、東京メトロ半蔵門線の水天宮前駅からも近い。
派手な赤には酸味と辛味が両立する
一見すると、立ち食いではなく、個人経営の一般的なそば屋のようにも見える。大きく「立喰」と書かれたのれんがなければ分からないだろう。ガラガラと引き戸を開けて入ると、店内は奥に細長いL字のカウンターになっている。ラジオやテレビはないので、立ち食いそば店にしては驚くほど静かで、多少の緊張感も漂っているほどだ。入口の券売機で「天ぷら(かき揚げ)そば」(税込430円)を購入。
「そばで」のコールに続けて、春菊天やかき揚げ、ごぼう天など数種類の中から天ぷらを選ぶ。今回は紅生姜天をチョイス。派手すぎるとも言える赤色の天ぷらが、丼によく映える。
天ぷらは揚げおきだが、サクサクとした食感は損なわれていない。ダシが効いたあっさりめのつゆと細めで上品な生蕎麦が、立ち食いそばのレベルを超えている。そこに紅生姜天が溶けるにつれ、赤く染まっていく器。紅生姜の独特の酸味と辛味が、絶妙なアクセントになっていく。
また、この店ではメニュー全品テイクアウト可能。使用している生そばも、お土産用がある。さすが数多の名店が立ち並ぶ人形町界隈、一味違う立ち食いそばである。
※記事中の情報は2016年2月取材時のもの
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。