今日の一杯は「越後十日町そば がんぎ」。都営浅草線「三田」駅すぐ、JR山手線「田町」駅からも至近の、都内でも指折りの有名人気店だ。実はこの「がんぎ」、この連載でも2016年に茅場町の方の店舗を紹介しており、今回はその姉妹店となる。当時と繰り返しの説明になってしまうが、店名の肩にもついているように越後十日町の郷土そばを頂ける店であり、「布海苔」という海藻だけでつないだ麺は独特のツルツルした食感がやみつきになる。
夜は飲み屋を兼ねる立ち食い店
平日午前10時から開店。訪れたのは10時半頃だったが、店員さんが店内外を慌ただしく出入りしていた。白いビニール袋に包まれた弁当が大量にダンボールに詰め込まれている。どうやら弁当販売も手がけているようで、迫るランチタイムに向けて仕込みの真っ只中なのであろう。
そんな光景を脇に、外の券売機でそばを購入。かけ、たぬき、きつね、わかめやとろろ、なめこなど。天ぷらはいか天や海老天、かき揚の取り揃えで、もちろんそれぞれが温冷あり。茅場町の方で食した「椎茸五目」もある。今回は少し奮発(?)して、立ち食いそばではなかなかお目にかかれない「にしんそば(温)」(580円)を注文。店内に入って突き当りの厨房で手渡す。
左右両側にカウンターがあったが、その片側は弁当の山でつぶされていた。もう片方に陣取ると、先客が1名。なんと、そばではなくその弁当を頬張っていた。そういうプランもあるのか。そばは完成までにしっかり3分はかかる。その間、店内を見ると、日本酒のボトルやつまみの短冊メニューがいたるところで散見される。夜は飲み屋を兼ねるタイプのそば屋だ。
筆舌に尽くし難いほど美味いそば
さて、いよいよ「にしんそば」を頂こう。丼からはみ出すほどの、にしんの甘露煮がのったおそば。その甘さとやわらかさが寒い日にやさしい。個人的には「にしんそば」=「年越しそば」の印象もあり、まさにこの季節にふさわしい味だ。
そしてこの麺、やはり筆舌に尽くし難いほど美味い。そばの香りや味などにはあまり頓着しないのだが、そんな自分でもはっきりと違いのわかる蕎麦。口当たりはシコシコ、喉越しはツルツル。誤解をおそれずに言えば、コシのある素麺のような食感だ。さらに風味豊かなダシのきいたツユがそこにプラス。たくさんのネギとワカメも添えて、ボリュームたっぷりなのも嬉しい。
新潟に行く機会があれば、ぜひ本場の味もためしてみたくなるほど、実に満足度の高い一杯。未食の方は、ぜひまずこちらで。