移動に都バスを使うことがしばしばある。東京のバスは本数も多く、電車では少し向かいづらいような場所にも連れていってくれるので重宝している。中でも新橋駅と渋谷駅を結ぶ「都06」はよく利用するのだが、浜松町駅付近で見かける黄色い看板がいつも気になっていた。この連載でもおなじみの「六文そば」だ。今回はその「金杉橋店」を紹介したい。

  • 浜松町「六文そば 金杉橋店」で、新年の一杯目に「かきあげ天そば」を注文

    「かきあげ天そば」(350円)

薄汚れたのれんは、繁盛店の証

黄色で目立つのは看板だけではない。入口脇の自動販売機も黄色にペイントされており、むしろこちらの方が目立つ。また、ライトボックスのような箱に、いくつかのメニュー写真が貼り付けられている。ドアは開けっ放し。のれんが少し薄汚れているのは、それだけ多くの人が出入りした繁盛店の証とも言われている。

午前10時過ぎ、先客は2名。イスはなくカウンターでの立ち食い形式になる。厨房の中にはオッチャンとオバチャンの2人。そばの種類はきつね、たぬきや月見といった定番から野菜天を中心に組み立てられているが、ちょうどランチタイムに向けて天ぷらの仕込みの最中で、ショーケースの中に並ぶ種類はさほど多くなかった。現に「いかげそ天はあと30分くらいかかるよ」という声も聞いたので、ここは無難に「かきあげ天そば」(350円)を口頭注文。

六文そば特有「かきあげ」が美味

水をくむ暇もなく、丼が目の前に置かれる。代金を渡したら、見た目にも鮮やかな、六文そば名物(?)の刻み唐辛子をふりかけたい。さて、かきあげ天だが、ちょっと崩れた玉ねぎ天が正しい形容で、いわゆるあの「かきあげ」を想像すると肩透かしを食う。これも含め六文そばの味である。玉ねぎは甘いし、溶けた衣でツユにコクが生まれるのは変わらない。

  • 浜松町駅付近に立地する「六文そば 金杉橋店」

そしてネギ。小口切り以上ぶつ切り未満の幅広サイズで、これがかなりのパンチ力。シャキシャキとした歯ざわりで、強い辛味と香り。これも他店ではそうそう頂けないだろう。 そば麺はやわらかく、ツユはほどよい温度でスピーディに食べられる。今年の一杯目、ごちそうさまでした。実は、同じ第一京浜沿いですぐ近くに「浜松町1丁目店」もあるのだが、それはまた今度。今年は六文そばの店舗をコンプリートしていきたい。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。