今回訪れた立ち食いそば店は、浅草橋の「ふじた」。JR「浅草橋」駅の西口を出て、神田川を渡ってすぐの角にある。エリアとしては、秋葉原・昭和通り側の立ち食いそば激戦区の一店に数えてもいいだろう。ちなみに「秋葉原」駅からは徒歩12分ほどである。

  • 浅草橋「ふじた」で、立ち食い店ならではの一杯「ソーセージそば」を堪能

    「ソーセージそば」(360円)

カウンターのみの小ぶりな店内

青い庇に「そばうどん」ののれん。店頭には文字のみのメニューが掲げられているだけの、簡素で商売っ気のない風貌だ。ラインナップは、月見やかきあげ、ちくわ、いか天など。「いかかき」というのが少し目新しかったが、ゲソのかき揚げのようなものらしい。時間はちょうど午前11時頃。中を覗くと、まだ客はいないようだった。引き戸から入っていく。

店内、L字型の立ち食いカウンターのみ。広くはなく、スペースとしては5~6人が限度か。カウンターの両端、2箇所に水。給水器は故障中らしい。背後のテレビからは情報番組の声がする。店員さんは1名。その背後の棚で、天ぷら類がバットに並んでいる。

注文は口頭で。代金は引き換え式。この日オーダーしたのは「ソーセージそば」(360円)。まず、この激安価格。そして、立ち食いそばならではの、このタネ。「ソーセージそば」は正確には「ソーセージ天そば」であるのだが、一般的なそば屋はもちろん、家庭でもなかなか味わう機会は少ないだろう。注文を通して30秒ほどで着丼。

親しみ深く、クセになる味わいのそば

見た目から非常にシンプルな一杯。縦半分に割られたソーセージの天ぷら、しかも魚肉。と、無造作に振りかけられた刻みネギ。果たしてこれを揚げる必要があったのだろうか、と逡巡しなくもないが、親しみ慣れている味なので、普通にうまい。

  • JR「浅草橋」駅の西口を出て、神田川を渡ってすぐの角にある「ふじた」

麺は太めで、やわらかい。そばなのはほとんど色だけかもしれないが、そもそも立ち食いそば屋にそば粉は求めて来ていないので問題ない。ツユは黒いが、見た目よりあっさりとしていて、かけそばなどだと少し物足りなく感じるかも。やはりかき揚げやコロッケ、ソーセージ天のようなガツンとしたタネが向いているそばだ。

正直なところチープな味ではあるが(実際本当に安いし)、どこか病みつきになる味でもある。そしてやはり、家では真似できない味でもあるのだ。実際に訪れて、立ってそばをすすって頂きたい。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。