日本人の4人に1人は、「睡眠」に関して何かしらの悩みを抱えていると言われています。そして、何らかの理由で睡眠がうまくとれなくなる症状を「睡眠障害」と呼びます。原因はストレスや生活習慣、生活リズムの乱れなどさまざまありますが、睡眠障害を発症すると日常生活に影響を与えてしまうことも少なくありません。正しい睡眠をとり、毎日を健康に過ごすために、まずは睡眠の役割とメカニズムについて知りましょう。

  • 睡眠はなぜ必要なのか。そして、睡眠が不足するとどうなるのでしょうか

    睡眠はなぜ必要なのか。そして、睡眠が不足するとどうなるのでしょうか

何のために睡眠をとるのか?

睡眠の主な効果としては、身体的な疲労と脳の疲労を取り除くことが挙げられます。自律神経(交感神経)を休ませる、代謝・内分泌を調節する、ホルモンを整えることが役割であり、簡単に言うと「休息」とも表現できるでしょう。また、睡眠は記憶を固定させる役割も担っています。当日に学習した内容は、眠ることで脳に残りやすくなるのです。

現代人の多くは、不規則な勤務などにさらされ、十分な睡眠時間の確保が難しい生活を送っています。しかし、人間の体が機能を発揮するためには、原則的に一定時間以上眠ることが重要なのです。睡眠は、夜間の適切な時間にとることで疲労を除去し、翌日の生活のための機能を回復させる効果を持っています。

睡眠が負債として溜まっていく理由

睡眠の質や量(時間)が不足している毎日を送ると、それにより取り除ききれなかった疲れは徐々に蓄積されていきます。これが近年問題視されている「睡眠負債」です。この「睡眠負債」は長時間の睡眠で一度に返済したり、あらかじめ睡眠を蓄えておいたりすることはできません。寝不足が続き睡眠負債が溜まったときに、体は「脱同調」を引き起こしているからです。

「脱同調」とは、体内リズムや周辺環境などの同調関係が崩れた状態を指します。要は、時差ボケのような状態です。この状態に陥ると、疲労感や倦怠感が強くなり、起立性調節障害、いわゆる立ちくらみも起こりやすくなります。場合によっては、意欲や気力が低下することもあるでしょう。

眠りは質だけではなく、量も必要

睡眠の質を高めることは、疲労を効率よく回復させることに繋がります。しかし、いくら質を高めても、それで睡眠時間を短くできるわけではありません。睡眠には、質だけでなく量も必要なのです。必要な量には個人差がありますが、日本人は平均して7時間程度の睡眠時間を必要とする方が多いようです。この時間を基準として、自分にあった睡眠の量を探ってみましょう。

次回は、睡眠の量とともに必要になる、睡眠の質を高める方法をチェックしていきます。

監修者

井上雄一 (いのうえゆういち)

医療法人社団絹和会 睡眠総合ケアクリニック代々木 理事長
1956年生まれ。1982年 東京医科大学卒業・鳥取大学大学院入学。1987年 医学博士・鳥取大学医学部神経精神医学助手。1994年 同大講師。1999年 順天堂大学医学部精神医学講師。2003年 代々木睡眠クリニック院長、公益財団法人神経研究所研究員(現職)。2007年 東京医科大学 精神医学講座教授(現職)。2008年 東京医科大学睡眠学講座教授(現職)。2011年より医療法人社団絹和会 理事長(現職)。