■「グランクラス」は日本の鉄道の「最上級クラス」

2011年3月5日から運行開始した東北新幹線「はやぶさ」で、初めてお目見えした「グランクラス」は、それまでのグリーン車を上回る「最上級」とJR東日本が胸を張った、ハード・ソフト両面のサービスが大いに注目を集めた。

  • 東北・北海道新幹線のE5系・H5系の場合、新函館北斗側の先頭車が「グランクラス」となる(写真はイメージ)

    東北・北海道新幹線のE5系・H5系の場合、新函館北斗側の先頭車が「グランクラス」となる(写真はイメージ)

6日後に発生した東日本大震災で一時的に運休を余儀なくされたが、その後はE5系が増備されるにつれて、「グランクラス」のサービスを提供する列車も拡大。北陸新幹線E7系・W7系にも広まり、いまでは「はやぶさ」の他にも「かがやき」「はくたか」などで上質な新幹線の旅を楽しめるようになった。今回は「グランクラス」のサービス内容や利用方法について紹介しよう。

まず、「グランクラス」を連結する列車は、東北・北海道新幹線でE5系またはH5系を使用する列車と、E7系・W7系で運転される北陸新幹線の列車のうち、「つるぎ」を除くすべてとなる。「はやぶさ」「かがやき」といった長距離を走る列車が中心ではあるが、朝夕には東京~那須塩原間の「なすの」などでもE5系が運用に入る。

今年3月16日のダイヤ改正からは、上越新幹線「とき」「たにがわ」での営業も始まる。時刻表の使用車両形式、または「グランクラス」のシンボルマークを目印にしよう。連結位置はE5系とH5系が10号車、E7系・W7系が12号車だ。なお、E5系、H5系とE7系・W7系の基本的な設備、サービスはほぼ同じなので、ここからはまとめて述べてゆく。

  • 「はやぶさ」の「グランクラス」の表示とシンボルマーク(写真はイメージ)

  • 国内最高級のゆとりを持たせた「グランクラス」の客室(写真はイメージ)

基本となる座席配置は横3列(1列+2列)。1両あたり18席しかない。それぞれ座席は独立しており、2列側の座席間はパーテーションで仕切られている。表地は本革製だ。座席自体も「バックシェル型」で、後ろを気にせずリクライニング(最大45度)できる。

背ずりを倒したり、レッグレストを引き上げたりする動作はすべて電動で行われ、肘掛けにコントロールパネルが取り付けてある。角度を自由に変えられるデスクライトも付いているし、肘掛け内にはダイニングテーブル、カクテルトレイが内臓されている。

  • 1人掛け側の座席。リクライニングやレッグレストなどは電動式(写真はイメージ)

シートピッチは通常のグリーン車の1,160mmに対し、「グランクラス」は1,300mmある。座席幅は520mmで、飛行機の国内線のファーストクラスに匹敵するといわれる。前述の通り、E5系、H5系とE7系・W7系の基本的な設備はほぼ同じだが、室内のインテリアデザインが多少異なり、それぞれ雰囲気が違う。

■アテンダントが行うサービスとは?

東京~新青森・新函館北斗間「はやぶさ」、東京~盛岡間「やまびこ」、東京~金沢間「かがやき」「はくたか」の「グランクラス」には専任のアテンダントが乗務し、サービスにあたる。沿線の食材を用いた軽食(洋食または和食)も季節変わりで無料で提供される。この軽食のうち、洋軽食は上り・下りともに共通だが、和軽食は下り東京発の「東京編」、上りの「東北・北海道編」と「北陸編」が用意されるなど、芸が細かい。

他にドリンク類(酒類、ソフトドリンク)は飲み放題だし、おつまみや茶菓子も提供される。左党にはたまらないところだろう。ただし、車内販売は回ってこないので、お土産品などが欲しい場合はアテンダントに頼んで取り寄せてもらうことになる。

  • 「グランクラス」の和軽食。飲み物と軽食は無料で提供される(写真はイメージ)

アメニティとしては、スリッパ、ブランケット、アイマスクなどが用意されている。モバイル機器用コンセントや、可動式の枕などは言うまでもないところ。荷物棚はハットラック式で、室内の美観も保たれる。

ただし、仙台駅始発・終着の各列車(「はやぶさ」も含む)と盛岡~新函館北斗間の「はやて」、「あさま」の全列車、長野~金沢間の「はくたか」にはアテンダントが乗務せず、軽食などのサービスもない。その代わり、グランクラス料金が安く設定されており、時刻表のマークでも区別される。

  • 「あさま」など短距離の列車ではアテンダントが乗務せず、座席のみのサービスが行われる(写真はイメージ)

意外に知られていないサービスだが、東京駅の八重洲中央口向かいにある「グランルーフ」1階のラウンジ「ビューゴールドラウンジ」は、当日のグランクラス券を提示することで利用できる。ここでもソフトドリンクとお菓子は無料だ。

■予約方法は普通車・グリーン車と同じ

新幹線開業前の「1等車」をも上回るサービスといわれる「グランクラス」だが、予約やきっぷの購入自体は普通車・グリーン車と同じようにできる。駅の「みどりの窓口」はもちろん、「えきねっと」での予約、「モバイルSuica特急券」での乗車も可能となっている。その点では気軽である。

気になる値段だが、利用区間の乗車券・特急券・グランクラス券の合計となる。東京~新函館北斗間で3万8,280円、東京~金沢間で2万6,970円だ。同じ区間の普通車指定席(通常期)はそれぞれ2万2,180円と1万4,120円だから、普通車の2倍までは行かず、70~90%増しといったところである。

  • 3月16日のダイヤ改正からは、北陸新幹線に続いて上越新幹線もE7系での「グランクラス」の営業が始まる(写真はイメージ)

なお、「フルムーン夫婦グリーンパス」などのグリーン車を利用できる割引きっぷの場合、そのままでは利用できないが、運賃(乗車券)部分のみは有効。特急券・グランクラス券を別途購入すれば、「グランクラス」に乗車することができる。

※写真はイメージ。本文とは関係ありません。

筆者プロフィール: 土屋武之

1965年、大阪府豊中市生まれ。鉄道員だった祖父、伯父の影響や、阪急電鉄の線路近くに住んだ経験などから、幼少時より鉄道に興味を抱く。大阪大学では演劇学を専攻し劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。芸術や評論を学ぶ。出版社勤務を経て1997年にフリーライターとして独立。2004年頃から鉄道を専門とするようになり、社会派鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事を毎号担当するなど、社会の公器としての鉄道を幅広く見つめ続けている。著書は「鉄道員になるには」(ぺりかん社)、「まるまる大阪環状線めぐり」(交通新聞社)、「新きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「JR私鉄全線 地図でよくわかる 鉄道大百科」(JTBパブリッシング)など。