新幹線をお得に便利に利用する方法を紹介する当連載。今回は東海道新幹線を安く利用できる「ぷらっとこだま」について取り上げたい。「ぷらっとこだま」はジェイアール東海ツアーズが企画・実施しているフリープラン型の旅行商品である。

  • 東京駅付近を走る「こだま」。写真の700系は置換えが進められ、乗車する機会も少なくなった(写真はイメージ)

    東京駅付近を走る「こだま」。写真の700系は置換えが進められ、乗車する機会も少なくなった(写真はイメージ)

旅行商品といっても、宿泊や観光が伴った商品ではなく、添乗員も同行しない。希望する日時の東海道新幹線「こだま」に安く乗車することができるというものである。片道で販売しており、利用者の自由度も高い。現在、東京~新大阪間で「ぷらっとこだま」の普通車指定席プランを利用した場合、旅行代金は1万500円(通常期)。正規料金で「のぞみ」を利用した場合の1万4,450円(通常期)より3,950円もお得になる。

■「ぷらっとこだま」のメリットは

「ぷらっとこだま」は必ず「こだま」を利用しなければならないため、目的地まで時間がかかる。急ぐ人には向かない商品である。東京~新大阪間の所要時間は「のぞみ」で約2時間30分だが、各駅に停車する「こだま」だと約4時間かかる。

しかし、考えようによっては、1時間30分しか違いがないともいえる。筆者は新幹線に乗ると寝てしまうことが多いので、気づかない間に3~4時間くらい経っていることも多い。ゆっくり移動するのも悪くないのだ。車内で仕事をするのも良いし、駅弁を広げて楽しむのも良いだろう。

  • 「こだま」はしばしば「のぞみ」に追い抜かれるが、その停車時間に買い物や息抜きをするのもいい(写真はイメージ)

「こだま」は途中駅で何度も「のぞみ」などに追い越されるため、停車時間の長い駅が多い。その駅にしかない駅弁を買うのも「こだま」の旅の楽しみになる。筆者が所属する芸能事務所の大阪在住の先輩は、東京へ仕事に行く際、行きは必ず「こだま」に乗ると話していた。4時間かけて気持ちの切替えを行うのだそうだ。

「『こだま』ってコンセントがないんでしょう?」という質問を受けることもある。「こだま」は古い車両で運転されるイメージが強いのだろうか。しかし現在、「こだま」の半数以上はN700系で運行されており、窓側の座席であれば電源に困ることはない。また、700系であっても、各号車の最前列・最後列であればコンセントが備わっている。時刻表を確認すれば、どの車両で運行されるかも事前にわかる。

  • ドリンク引換チケットは東海道新幹線の駅ホームなどにある、このステッカーを貼った店で引き換えられる(写真はイメージ)

「ぷらっとこだま」にはワンドリンクサービスもある。駅の売店でドリンクと引き換えられるチケットが付いているのだが、これもうれしいサービスだ。

■グリーン車にも安く乗れる

お得になるのは普通車だけではない。「ぷらっとこだま」にはグリーン車指定席プランもある。このプランを利用した場合、東京~新大阪間は1万2,000円(通常期)。普通車指定席プランの旅行代金に1,500円を足すだけで、グリーン車が利用できることになる。しかも、従来の「のぞみ」のグリーン車より7,230円も安く、快適な旅を手に入れられる。

  • 「ぷらっとこだま」にはグリーン車指定席プランもある(写真はイメージ)

筆者は以前、大阪マラソンに参加し、非常に疲れた状態で帰りの新幹線を利用したことがある。そこで選んだのが「ぷらっとこだま」のグリーン車指定席プランだった。体をゆっくり休ませることができ、本当に助かった。そのことが強く印象に残っている。

■「ぷらっとこだま」には注意点も

安く利用できるとはいえ、「ぷらっとこだま」にはデメリットもある。まず、東海道新幹線の駅の相互間専用であることに注意が必要だ。山陽新幹線などにまたがっての設定はない。また、東海道新幹線の駅から目的地の駅、たとえば新大阪駅から大阪駅まで移動する場合など、運賃が別途必要となる。

自動改札機の利用もできない。新幹線・在来線の乗換改札口も利用できないので、「こだま」の乗車駅と降車駅では、必ず東海道新幹線専用の係員がいる改札口を通る必要がある。

予約後に利用する列車や日時を変更することもできない。もし乗り遅れた場合は無効となり、後続の列車にも乗車できない。旅行中止となる場合でも、取り消す場合は旅行開始日の前日からさかのぼって11日目にあたる日より前に申し出なければ、取消手数料がかかる。「こだま」には車内販売がなく、車内での飲食物は事前に調達する必要もある。

  • 「ぷらっとこだま」の予約・購入は、ジェイアール東海ツアーズかJTB各店で受け付けている(写真はイメージ)

こうした注意点はあるものの、「ぷらっとこだま」はそれ以上にメリットが多く、人気も高い。ただし、利用できる座席数に限りがあり、利用できる「こだま」も限定されるため、売切れとなることも珍しくない。スケジュールが決まれば早めに予約しよう。予約は通常の駅の窓口ではできず、JTBの各店やジェイアール東海ツアーズの店舗、もしくは同社の公式サイトからできる。店舗だと乗車前日まで予約可能となっている。

※写真はイメージ。本文とは関係ありません。

筆者プロフィール: 古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)

小学生の頃、社会見学で近くにある車両基地へ行き、特急電車の運転台に上げてもらったことがきっかけで、根っからの鉄道好きとなる。学校卒業後は新幹線の車内販売員、JR西日本の駅員として働く。その経験から、きっぷのルールや窓口業務には精通している。現在はタレント活動のほか、公立高校などで講師も務めている。2015年には「東洋経済オンライン」でライター・デビューし、旅行サイト「ぐるたび」などでも執筆活動中。泉佐野市PR大使。