財務省、MBA留学、マッキンゼーを経て、2015年にスタートアップ企業・ウェルスナビを立ち上げた柴山和久さん。お金にまつわる独自のキャリアを生かしながら、現在は、資産を自動運用するサービス、ロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」の提供を通じて、誰でも手軽に資産形成ができる世の中を作ることにチャレンジしています。
Q. 50代に入りましたが、今から資産運用を始めるには遅いでしょうか。(50代・男性・会社員)
■ 柴山和久さんの回答
50代からの資産運用が遅いということは、まったくありません。人生100年時代と言われるいま、働き方はさまざまで、「現役」の定義も広がっています。働く期間が長くなれば、資産形成ができる期間も長くなります。
では、50代からの資産作りをどのように考えていけばいいでしょうか。
まずは、現在の資産やこれから得られる収入から、将来のシミュレーションを行います。リタイア後の生活を預貯金で賄えそうなら、あえて資産運用を始めなくてもいいかもしれません。資産運用をする必要があるなら、「長期・積立・分散」の資産運用が有効です。
「長期・積立・分散」の資産運用では、最適な資産の組み合わせは、一人ひとり異なります。今後10年ほどでリタイアを考えているなら、債券などに比べてリスクが高い「株式」の割合を50~60%くらいにするのがいいでしょう。世界最大級のファンドである「ノルウェー政府年金基金」も、株式の割合が66%です(※)。
ただ、当面リタイアする予定がなかったり、生涯現役で働き続けるなら、20~40代と同じように株式の割合を70~80%くらいまで増やしてもいいでしょう。実際に、そのような資産運用をしている人もいます。
始める際は、以前のコラム「資産運用はいくらから始めればいい? 」でご紹介したとおり、「いくらからスタートし、月々いくらの積立であれば、途中であきらめずに続けられそうか」を考えます。
「長期・積立・分散」の資産運用のシミュレーションができるサイトで、一括ですべて運用するケース、少しずつ分割して入れるケースなどを試してみるのもいいでしょう。
なお、リタイア後は「運用しながら取り崩す」ことをおすすめします。資産を毎月少しずつ取り崩していっても、残りの資産については運用が続きます。
一括で引き出すわけではないので、リタイア時点でたまたま株価が高いか低いか、円高か円安かに左右されずに済みます。積立投資と同じように、毎月少しずつ取り崩しをすることで、株価や為替のリスクを和らげながら、より長期にわたって資産運用を続けられます。
(※)2018年12月末現在、出典:「世界最大級ファンドはどんな運用をしている?」
執筆者プロフィール : 柴山 和久(しばやま かずひさ)
「誰もが安心して手軽に利用できる次世代の金融インフラを築きたい」という想いから、プログラミングをイチから学び、2015年4月にウェルスナビ株式会社を設立。16年7月に世界水準の資産運用を自動化したロボアドバイザー「WealthNavi」、17年5月におつりで資産運用アプリ「マメタス」をリリース。
起業前には、日英の財務省で約10年勤務、その後マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤め、ウォール街に本拠を置く10兆円規模の機関投資家を1年半サポート。東京大学法学部、ハーバード・ロースクール、INSEAD卒業。
著書に『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』。
元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法
なぜ資産運用に尻込みしてしまうのか、どこでつまずいているのか、どんな勘違いがあるのか――。2年間で約80回の資産運用セミナーを開き、参加者から募った「1000の質問」のエッセンスを詰め込んだ1冊。「資産運用」初心者の疑問を解決する。
柴山和久 著
定価:1,500円(税別)
発行年月:2018年11月15日