今回は久しぶりに宮造りタイプの銭湯を紹介したい。「松の湯」の場所は、品川区西五反田。最寄りは東急目黒線「不動前」駅(徒歩6分)だが、もちろん五反田駅からも徒歩圏内と、意外に都心に位置しているので「仕事帰りに、昔ながらの銭湯で疲れを癒やしたい! 」という人にもオススメできる。

  • 「松の湯」へは、東急目黒線「不動前」駅から徒歩6分

    「松の湯」へは、東急目黒線「不動前」駅から徒歩6分

昭和の面影を残し、坪庭には金魚がすいすい

堂々とした千鳥破風と唐破風の屋根がシンボリック。短いのれんをヒョイとくぐるとまずは下足場だ。鍵は板製。こういう佇まいをしていながらも、実は番台式ではなく、時代に合わせたフロント式の銭湯となっている。

ただ、元々番台の銭湯をやむなくフロントにしました、というところだろうか、ロビースペースと呼べるほどの場所はなく、脱衣所前には小さな腰掛けとドリンクケースが置かれているのみである。雰囲気を壊さない改装でいいと思う。男湯は右、女湯は左に進む。

天井を見上げれば、折上格天井に。言うまでもなく、高くて開放的。境目に柱時計があったり大入額が飾られていたりなど、昭和の面影を残す一方で、路ロッカーや床、洗面台には全く古さを感じさせない。マッサージチェアも新しい型で、清掃も行き届いている。

浴場組合の公式サイトによれば、脱衣所は総ひのき造りだとか。なんとも立派な建築である。一部のロッカーは縦長で、内部に仕切りがあり2段構造になっているのが使いやすい。背側には坪庭がある。池には金魚が泳いでいた。

そのほか、ビン牛乳の自販機やマンガ雑誌棚など。はかりはEIKO SCALE製だったか。平日15時過ぎに伺い、相客は3~4人ほどいた。浴室への戸のサッシも木製である。

歴史を感じる木桶も味わいのひとつ

男湯のイメージ(S=シャワー)

男湯のイメージ(S=シャワー)

奥側に湯船が3種類並ぶ、シンプルなお風呂。深風呂とジェットバスは43度くらいか、やや熱めだが浅風呂は42度くらいで入りやすくなっている。日曜には薬湯もあるとか。

正面には富士山のペンキ絵あり。中島絵師と見られるが、男湯側・女湯側両方に山が描かれた不思議な構図になっている。桶はケロリンではなく、なんと木桶。長年水を吸っているため少し重いが、傷みやすい木桶を使っているということは、清掃の自信の表れでもある。

当然のように、風呂場もピッカピカで明るい。ボディーソープ、リンスインシャンプーは備え付けがあり。両方泡タイプである。

松の湯は古い銭湯でありながら、そこで時間が止まっているようなことはなく、この時代に活躍する現代的な銭湯だ。清潔感も高いので、初めての人も抵抗なくデビューしやすい銭湯のひとつである。

※イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。