さて、前日にマオリの伝統文化を堪能したので、今度は現在のマオリ末裔たちの暮らしぶりを見てみよう。向かった先は、テ・プイアの横にある施設「ファカレワレワ地熱地帯」である。ファワカレワレワ地熱地帯では、ロトルアならではの地熱を活かしながら、マオリの伝統を守ろうとする人たちの生活の一端を垣間見ることができる。

もちろん、ファワカレワレワの中もいたるところで温泉が噴き出ている

民家の脇にも小さな温泉が。ファワカレワレワでは、実際にマオリの末裔たちが生活をしている

地熱を利用して蒸し料理。この湯気、本当にムチャクチャ熱い。いたるところで100度を超える湯気が出ているので、うっかりしているとやけどする

(左)100度近い温泉なので、食物などを温めるのにも利用する。ちなみに、温泉卵はここではあまり食べないらしい(上) こんな温泉がいたるところにあって、とても楽しいが、うっかり落ちると大やけどするので注意

すぐ横には、違った色の温泉が。順番に入っていくと楽しそうだが、ここの温泉に浸かるのはダメ(笑)

前日に、間近で見た間欠泉を今日は別の角度から。一日10~20回も噴出しているので、ここを訪れて、間欠泉を見落とすことはなさそう

こちらは昔ながらのお風呂。古今東西、人間はお風呂が好きなのである(僕の独断)

もし、夜に「マイ・オラの夕べ」に行けなかったという人は、ここでもハカ(戦士の踊り)やワイアタ(歌)を見物することができる。

(左) 踊っているのはマオリの末裔たち。もっともイギリス入植後、ずいぶん経っているので、純粋なポリネシアンの血だけを引く人よりは、イギリスなどさまざまな国から来た人を祖先に持つことのほうが多いようだ(上) 何度見てもちょっとファンキーな、舌を出すマオリ戦士の威嚇行為。でも、戦場でこれをやられると、訳もなくビビりそう

(上)マオリ文化を語る上でなくてはならないのがこのニュージーランド・フラックス(ニュージーランド固有の麻の一種)という植物(右)フラックスは、乾燥させて装飾品や日用品などさまざまなものに利用する。日本でも麦や稲のわらをさまざまな物に利用しているが、それと同じらしい

(上)乾燥させたフラックスを染色すると、こんな感じ。いくつかの家の軒先にこんなふうにぶら下げてあった(右)フラックスは近年、マオリ文化の象徴の1つとして見直され、さまざまな所で活用されている。写真はWOWのフラックスを活用した作品

ウェリントンの小物屋さんでもフラックスを使った小物をたくさん売っていた

近年、フラックスの編み物や木彫りといったマオリアートと、近代アートを融合した新しいニュージーランドアートが数多く生み出されている

こんな感じで、マオリの文化に触れつつ、湧き上がる温泉を眺めるのは非常に楽しい。え、最初に紹介した「温泉にゆっくり浸かる」部分が抜けている? はい、すみません、忘れてました。でも、ご安心ください。ロトルアの市街地には多数のスパがあり、気軽に楽しむことができるのだ。

ロトルア市街地、ロトルア湖の湖畔にあるのがポリネシアン・スパ。のんびりお風呂を楽しむだけでなく、女性なら温泉の成分を利用して肌のお手入れなど、一日中ここで過ごすことができる。なお、温泉は混浴で水着着用だが、持っていかなくても借りられるので、ご安心を。

「ポリネシアン・スパ」は、プール(右上)と、混浴の温泉 (左下)、ファミリー向けの貸切風呂(右下)、トリートメントの施術室が用意されている巨大施設。温泉は4つあり、それぞれ42度、40度、38度、36度に設定されているので、好みのスパにつかることができる。源泉は3つが硫黄で、1つがアルカリだそうだ

なお、今回紹介した観光施設だけでなく、街中にある公園を歩いているだけでも、ロトルアは小さいながらも飽きない街だ。ニュージーランドらしい澄んだ空気ときれいな花々、青々とした木々に加えて、ロトルアならではのそこかしこから湧き出る温泉が出迎えてくれるのである。

ロトルアの市街地からぶらぶら歩いていくと、大きな公園があった。一見すると、花が美しい普通の公園なのであるが

さすがロトルア。公園内にもいたる所に温泉が湧き出ている。さすがに、危険なので温泉の出ている所は囲ってある

囲いの中は、こんな感じ。ものすごい勢いで、泥の中からぶくぶくと温泉が湧いている。間近で見ると結構怖い

同じ公園内にあった大きな温泉の池。この池のほとりに行くと湯気で遠くが見えないので、一人で歩くのが、ちょっと怖い

さらに、散策好きの人は、そのままロトルア湖の回りを歩いてみよう。僕が歩いた日は、天気が良くなくて、風がきつくて少々大変だったのだが、そんな天候を忘れてしまうぐらい、いろいろな表情を見せてくれて、ただ歩いているだけでもものすごく楽しい。特に、バードウォッチングが好きな人には、このロトルア湖、宝の宝庫である。

(左) ロトルア湖の周囲は遊歩道があるので、誰でも散策できる。ただし、足元が少々悪いので、歩きやすい靴で行ったほうがいい(上) ロトルア湖は野鳥の宝庫。バードウォッチングの好きな人は、ここを歩いているだけでも楽しめるだろう

こんな風にガイドがいろんなところに設置してあるので、鳥に詳しくなくても、結構楽しめる

どの鳥も、人が近づいてもまったく怖がらない。僕は鳥にはまったく詳しくないので、なんて鳥かはわかりませんが

こちらは子連れのガチョウみたいな鳥。わずか1時間ほど歩いただけなのだが、何種類の鳥に出会ったのだろう

ここまでたくさんの鳥に囲まれると、ちょっと怖い。っていうか、この鳥たちは、人間が近づいても怖くないのだろうか

ただし、ロトルア湖畔を散策するときに注意しなければならないのが、地熱である。そこかしこから熱湯が沸き出していたり、靴の裏が溶けるぐらい地面そのものが熱くなっているところもあるので、「DANGER(危険)」の看板があるところに近づいたりしないようにしよう。

「DANGER THERMAL AREA」と書かれた看板が。ちなみにこの地面、ちょっと離れた所でも、触ってみると本当に熱い

パッと見は、ただの湖畔の窪み。でも、実はこの窪みの中にも温泉が湧き出していた。しかも、近づくと湯気がものすごく熱い

ここも温泉。写真をよく見ると、下から湧き出た温泉で泡立っているのがわかる。これ、ほとんどが100度近い熱湯なので、くれぐれも手をつっこまないように

散歩していて、勢いよく熱湯が湧き出ているところに遭遇するのも、ロトルアならでは!?

泥の温泉と乳白色の温泉。なお、疲れたからといって、こんな所に入ってはダメ。湖の向こうに見えるオレンジ色の屋根がポリネシアン・スパなので、入るときはそちらへ

大自然が素晴らしいニュージーランドであるが、その中でもロトルアは異色。ニュージーランドから日本への直行便はすべてオークランド発になるので、せっかくなら寄り道してロトルアの温泉で旅の疲れを癒すというのはどうだろうか。温泉でのんびりできて、さらにそれまで旅したニュージーランドの根底に流れるマオリの文化を知ることができる、小さいながらもとても楽しい街である。

ところで、今回の僕は行けなかったが、世界遺産にこだわるなら、世界遺産に指定されている「トンガリロ国立公園」を巡るツアーに、このロトルアから参加することができる。こうした、日本ではあまり知られていない、ニュージーランドの隠れた魅力を探すならば、ニュージーランド政府観光局のWEBサイトで情報を探してみるのがオススメだ。非常に情報が充実しているので、きっとあなた好みのニュージーランドを見つけることができるだろう。