前回、ストレートネックや頚椎症、首や肩の痛みの根本的な原因となる「ネックストレス」についてお話しさせていただきました。しかし、実はネックストレスは、首周りだけでなく他の箇所への痛みをも引き起こすことがあります。今回はネックストレスがもたらす負荷の連鎖について解説いたします。
姿勢が悪くなると首に負担がかかる
ネックストレスの原因は、悪い姿勢です。悪い姿勢になって首にかかった負荷のことをネックストレスと呼びます。
姿勢が悪いと、必然的に頭が前方向に出ます。その分首の下部(首と肩のつなぎ目あたり)は後ろに引っ張られた状態になります。その結果、ストレートネックや頚椎症などが引き起こされてしまうのです。
ただ、ずっと悪い姿勢で過ごしている人全員が、ストレートネックや頚椎症になるわけではありません。首や肩の痛みはあっても、病気やケガにつながるほどではないという人がほとんどです。では、ストレートネックや頚椎症になる人との違いはどこにあるのでしょうか?
首、手首、足首は体のバランスをとる上での重要ポイント
その答えをお話しする前に、人体の仕組みについて簡単に解説いたしましょう。
私が整体師として施術を行う上で、大切にしている部位が3箇所あります。それが「首」「手首」「足首」の3つの首です(もちろん、この3点以外が大切でないということではありません)。この3つの首の歪みやズレが、体の痛みや不調の原因になっていることが多いのです。
また、3つの首は、それぞれにかかった負荷によって崩れた体のバランスをとる役割を持っています。たとえば足首に負荷がかかっていたら、手首や首で体全体のバランスをとるということですね。
足首や手首を捻挫したり、骨折したりすると、治った後に違和感が残っていることがあります。妙な体の使い方の癖が残ってしまい、つまずきやすくなったりケガしたところ以外の部位を痛めやすくなったり……といった経験をしたことのある方は、少なくないでしょう。これは、足首や手首が正常に機能しなくなることにより、3つの首と他の2箇所が体のバランスを調整し、その調整が痛みや癖を引き起こしてしまった、ということですね。
首にかかっているストレスは足首や手首で解消
ネックストレスがかかっている人には、2つのパターンがいます。まず1つ目は、ネックストレスがかかり続けた結果、骨などがずれてしまうパターン。こちらが、頚椎症を引き起こしてしまった人ですね。
もう1つは、足首や手首で負担を解消し、体のバランスを補正し始めるパターンです。この場合、足や手に負担がかかるため、足や手の痛みとなって現れたり、知らず知らずのうちに足首や手首に歪みが生じたりします。
このパターンの厄介なところは、整体などに行っても根本原因にアプローチするような施術を受けづらいということです。たとえば足が痛いのであれば、普通に考えたら足に原因があると思いますよね。確かに足首の歪みが引き起こしているため、足を施術すれば一時的には良くなるでしょう。しかし、大元を辿れば、首にかかっている負荷が原因なので、こちらをなんとかしないと、すぐに痛みが戻ってきてしまいます。
また、足首や手首に負荷がかかり続けた結果、足や手が正常に機能しなくなると、そのバランスをとるために、さらに首に負担がかかることがあります。すると、その首の負担で崩れた体のバランスをとるために足首や手首に負担が……という負の連鎖に。気づいたときには体がボロボロだった……なんてことのないように、早めに対処しましょう。
その肩の痛み、足から? 手から?
ネックストレスによる体のバランスの乱れが引き起こした足首や手首への負荷が、またネックストレスにつながります。そうやって症状に現れた肩の痛みが、足首と手首どちらへの負荷によって引き起こされているのかをチェックする簡単な方法があります。
まず真っ直ぐ立ちます。そして、肩を回すよう手を前方から後方に真っ直ぐ引き上げてください。もしこの動きで痛みが増すようであれば、足首に負荷がかかっている可能性が高いでしょう。足首は前後のバランスをとる役割を担っているので、前後の動作で痛みが増す傾向にあります。
一方、真っ直ぐ立った後、手を横に真っ直ぐ引き上げた際に痛みが増す場合、手首に負担がかかっている可能性が高いです。手首には左右のバランスをとる役割があるので、痛みが増してしまうんですね。
もし前方・後方に手を引き上げた際に肩の痛みが増すのであれば足を、横に引き上げた際に肩の痛みが増すのであれば手を刺激してあげるだけで、肩の痛みが軽減する可能性があります。ご自分でやる際には簡単なマッサージで構いませんので、ぜひ試してみてください。