仕事でモヤモヤすることは、社会人なら誰しもあること。「自分ばかりがんばっている」「意見を言っても聞いてもらえない」……長く働いていくうえで、そんな焦りや無力感を抱いたときに、どうすればよいのでしょうか。

それを解決するヒントは、「思考のクセ」にあるかもしれません。キャリアコンサルタントである著者・福所しのぶさんが、変化が激しい今の時代に必要な「働くためのマインドセット法」についてまとめた書籍『仕事のモヤモヤ・イライラを止めて自分を取り戻す 小さなルーティン』(あさ出版)より、一部をご紹介します。

全5回の連載、第2回は「脳は『なじみのある考え方』を大切だと思いたがる」です。

→第1回「自分らしく働けないのはストレス思考のせい」から読む

脳は「なじみのある考え方」を大切だと思いたがる

  • 『仕事のモヤモヤ・イライラを止めて 自分を取り戻す 小さなルーティン』(あさ出版刊)より

では、なぜ大切な人生のハンドルをうっかり手放してしまうのでしょうか。それには、思考のクセが関係しています。実は脳というものは、これまでの経験から作った思考のクセを優先し、ラクをしたがるものなのです。

私たちのまわりには膨大な情報があふれています。
でも、脳にはそのすべてを、1から処理するキャパシティはありません。必要と判断した情報だけを取り込み、うまくいった方法を次から優先するように神経ネットワークを作ります。

たとえば、パソコンをはじめて使うとき、手指のポジションを確認しながらキーボードの文字を打ちます。このときは、いろいろなことに意識をとられますが、自分の動きをこと細かに考えている状態です。これは自らコントロールしようとしている状態でもあります。慣れると、考えなくても入力ができます。

この「考えなくてもできる」というのは、脳が学習を重ねて、神経ネットワークを作り、無意識にできるようになる状態です。1つひとつの状態をコントロールしようとするとき、脳は多くのエネルギーを使うので、無意識にできるように作業を自動化して、省エネを図る性質があるのです。

行動とフィードバックで思考のクセが作られる

そして私たちは、子ども時代からの経験を通じて、行動とそのフィードバックから、次のような思考のクセを作ります。

・Aをしたら(行動)、ほめられていい気分だった(フィードバック)
▼思考グセ「Aは積極的にやったほうがいい」

・Bをしなかったら(行動)、ほめられていい気分だった(フィードバック)
▼思考グセ「Bはやらないほうがいい」

・Cをしたら(行動)、怒られてイヤな気分になった(フィードバック)
▼思考グセ「Cは絶対やらない」

・Dをしなかったら(行動)、怒られてイヤな気分になった(フィードバック)
▼思考グセ「Dはやらなければならない」

そして、この思考のクセは習慣(行動パターン)を作ります。

心理学的な研究では、人間の行動の9割が思考のクセに支配されていることがわかっています。
また、認知行動科学の分野では、感情は出来事(事実)そのものではなく、出来事に対する意味づけや解釈によって生じると考えられています。これはABC理論として、アメリカの臨床心理学者のアルバート・エリスが1950年代に提唱したモデルで、現在臨床的成果をあげている認知行動療法の基礎の1つにもなっています。

ここからわかるのは、仕事でストレスを抱える原因は、仕事での出来事自体ではなく、出来事を意味づける思考のクセが大きく関わっているということです。
「仕事がしんどい」という状態にならないためには、ストレスをためやすくするストレス思考に日頃から気づき、手放していく必要があります。
自分の思考を立ち止まって判断できるようになると、自分の選択で結果がコントロールできている、あるいはコントロールできそうだ、という感覚になります。
すると、「自分らしい」と感じられることが増えていくのです。

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『仕事のモヤモヤ・イライラを止めて 自分を取り戻す 小さなルーティン』

  • 『仕事のモヤモヤ・イライラを止めて 自分を取り戻す 小さなルーティン』(あさ出版刊)

★転職を考える前に身につけておきたい「仕事で疲れないためのマインド」について書いた本
★仕事で結果を出していても、仕事でストレスをためてしまう理由について書かれた本
★仕事で気を遣いすぎてしまう人が結果をだせるようになる本
★「意見を言っても聞いてもらえない」「まわりから評価されていない」「自分ばかりがんばっている」と思わなくなる本

社会人なら嫌な仕事もガマンしてやるのが当たり前。リーダーなんだからきちんとできて当たり前。
こうした考えが残る一方で、人手不足、職場の高齢化、価値観の多様化の影響で、キャリア形成を考えながら自主的に働くことが求められる時代なりました。
変わらなきゃと思いつつも、「自信がなくて意見が言えない」「意見を言ってもわかってもらえない」「何を言ってもムダ」という焦りや無力感を感じている方も多いかもしれません。長く働いていくうえで避けては通れない問題です。

とはいえ、今すぐ転職するのは難しいのも事実。
では、どうすればいいでしょうか。そのヒントは、「思考のクセ」にあります。
キャリアコンサルタントである著者が、変化が激しい今の時代に必要な「働くためのマインドセット法」についてまとめたのが本書です。
仕事でストレスを抱えやすい3つのタイプの特徴をもとに、毎日できるルーティンを通して、働き方をアップデートするヒントをまとめました。キャリアコンサルティングのヒアリングで得た悩みをもとに、これからのキャリアをあなたらしく築いていくための方法をお伝えします。

◎こんな人におすすめ
・「このままでいいのかな?」というモヤモヤを抱えているが、今すぐ転職は考えていない人
・「自分ばかりががんばっている」と仕事でストレスをためている人
・仕事で評価されず、やりたいことや得意なことが見つけられていない人
・今の組織で働き続けていかなければならない事情のある人

→amazon.co.jp『仕事のモヤモヤ・イライラを止めて 自分を取り戻す 小さなルーティン』

著者:福所しのぶ
出版年月日:2023年05月10日
ISBN:9784866675022
定価:1,485円