誰にでも、苦手なタイプの人はいると思います。私が苦手だなぁと思うタイプの男性は、社交的で元気いっぱいで、外見がものすごく男っぽくて気が強く威圧的で、でも心の中はけっこう繊細で、女の子のように観察力が鋭いことを隠すために、男っぽくふるまっているっぽい人という気がします。

このように、みなさんも考えてみると「こういうタイプが苦手かも」という傾向があることと思います。そして、ほとんどの人が、同性で苦手なタイプには、細心の注意を払い、彼に気を遣うか、うまく距離をおいて深くかかわりをもたないように注意しているはずです。

ところが、異性で苦手なタイプとなると、対処の仕方はずいぶんかわってくるようにみえます。

もちろん、中には、異性で苦手なタイプにこそ、とてつもなく気を遣っている……という人もいるやもしれません。けれど、そういう方はきっと、男性でも女性でも恋愛上手で異性からモテる少数派のように思えるのです。というわけで、周囲を見ても、たいていの男性が、同性には気を遣いながらも、ただでさえわかりづらい異性で、なおかつ苦手なタイプの人にはもうお手上げ状態、特に何の対処もしないまま関係が悪化していく……そんな気がしてなりません。


某病院に勤務する検査技師のEくん(26才)は仕事熱心で、仕事に集中しているとき、つまり職場にいるときは、周囲のことが目に入らないタイプです。彼は家に帰ってからも勉強をつづけるほど、自分の仕事が好きだし、仕事に対して誇りと幸せも感じています。

しかし、ひとつだけ気になるのが、同じ職場で事務をしているMちゃん(23才)の存在です。彼女とは、どうも相性がよくないようで、書類の些細な記入漏れ(患者さんの病状とはまったく関係のない部分)をネチネチ怒られたり、「ドアの開け閉めの音がうるさくて、患者さんをビックリさせている」と言いがかりをつけられたりしています。

女性に反論するのは男らしくないし、くだらなすぎて言い返す気もしないので、いつも「すみません」「ごめん」と言って黙っているのですが、Mちゃんのあまりのしつこさに彼はけっこうハラを立てているのでした。

あるとき、たまたま空き時間ができたので、Eくんはめずらしく食堂へ昼食を食べに行きました。すると、Mちゃんと同じ事務の仕事をしている同僚の女性Iちゃん(24才)が、ひとりでランチを食べています。彼女とは仲がよかったので、Eくんはとなりの席に座って、仲良く話をしながら食事をしていました。

なんとなく、背筋が寒いので、後ろを振り返ってみると、食堂の向こうのはじにMちゃんがひとりで座り、こちらをニラみつけていたのです。ムカッとしたEくんは、思わずこうつぶやいてしまいました。

「なんなんだよ、あいつ、休憩時間まで…。いい加減にしてくれよ」

そのつぶやきに驚いたIちゃんは後ろを振り返り、苦い顔をしているMちゃんに手を振ってから、Eくんにこう言うのでした。

「Mのこと、苦手みたいだね」
「苦手じゃないけど、ほんのちょっとしたことでもすぐからんでくるというか、何をするにも攻撃的だから疲れるんだよ」
「まぁね、Mはマジメで神経質だし、Eくんはひとつのことに集中すると周りが一切見えなくタイプだから、見ているとハラハラしちゃうんだろうね」
「うん…」
「それにさ、こういっちゃなんだけど、Eくんって私たちにも患者さんとかにも、いつも笑顔で接しているのに、Mに対してだけは、本当にイヤそうな顔してるよ」
「えっ、顔に出してるつもりないけど」
「やだー、バレバレだって。Mだってつらいよね。他の人には誰にでもやさしい人が、自分にだけイヤな顔を見せるんだもん。もう少し顔に出さないように注意したら?」
「うーん」
「じゃあさ、Mのことを別の人だと、たとえば患者さんとかだと思ってみたら? そうしたら、笑顔が出るんじゃないの」
「ふうん、まあムリかもしれないけどやってみようかな」
「何言ってるのよ。同じ職場で働いてて、女の子を敵にまわすと怖いよ。女は基本、女の味方だからね」
「はい、気をつけます」

というようなやりとりがあり、それからEくんはMちゃんが書類を持ってこちらに近づいてくるたび、彼女にも笑顔を見せるように心がけました。

そうすると、彼女もあまりキツいことは言わなくなり、ぶっきらぼうだけれど、「ここのところ、直しておいてくださいね」と、親切なものいいをするようになってきたのです。また、ドアの開け閉めが……とか、口うるさい奥さんのようなことも言われなくなってきたのでした。


男性は基本的に心が広い方が多いので(私も心は広いけど)、苦手なタイプを受け入れるやさしさがあります。

ところが、女の子は自分の身を守るために、気の合う人と苦手な人を瞬時にわけてしまう傾向があったりします。

プライベートで苦手意識をもたれるのは、いたしかたないとしても、学校や会社など公の場所に苦手な人がいるというのは、なかなかやっかいですし、勉学や仕事もスムーズに運ばなくなるかもしれません。

男性の場合、顔に「苦手なんだよね」とすべてが出てしまう人が多く、また相手をさけるにしてもやり方がロコツすぎるフシがあります。このように、相手をロコツにさけるのは、あまりよろしいことではありません。

では、いったいどうすればいいんだ? というと、苦手なタイプにこそやさしくする。気を遣って、細心の注意を払うことが必要だと思います。

不本意かもしれませんが、日ごろからホメておいてあげる。聞き上手に徹して、相手の話を興味深く聞くようにするなどしておくといいでしょう。

「本当に不本意で腹が立つ」と思う方もいらっしゃるでしょうが、大半の女性は日ごろから、苦手な上司や先輩にも、こういったやさしい対応をしているのです。

彼女を苦手と思う気持ちを、せめて顔には出さないようにしよう……と思ってみるだけでも、効果はあるはずです。ぜひとも、がんばってみてください。


こんにちは、酒井です。ムシムシしていて、体調を崩しやすい時季です。みなさま、くれぐれも健康には気をつけてください。ああ、暑いのは苦手。では、またね。