リモートワークと切っても切り離せないのがWeb会議です。オフィスに出社する必要がなくなった代わりに、毎日Web会議に出席しているという人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、無料で使える代表的なWeb会議アプリについて、最新のバージョンをもとに主要な機能を紹介します。

主要なWeb会議アプリの機能比較

新型コロナウイルスが流行したことでもっともユーザ数を増やしたツールのひとつがWeb会議アプリです。その爆発的なユーザー数の増加と世の中の状況の変化に対応するため、ベンダー各社は過去に類を見ないほどのスピードで、アプリをアップデートしてきました。

今でもその勢いは続いています。したがって、今回紹介するのは、あくまでも2020年10月の本稿執筆時点での情報である点に留意していただければと思います。また、本稿では個人でも手軽に利用できるアプリを中心に紹介するため、法人向けに提供されている各種ソリューションには触れないことも先にお断りしておきます。

今回取り上げるのは、「Zoom」、「Microsoft Teams」、「Google Meet」、「Skype Meet Now」、「Facebook Messenger Rooms」、「Discord」の6つです。最初に、各アプリの主要な機能について比較した表を載せておきます。

  • ビデオ会議アプリの機能比較(2020年10月21日現在)

    Web会議アプリの機能比較(2020年10月21日現在)

Web会議アプリを選ぶ際のポイントとしては、まずは手軽さや最大で何人が会議に参加できるのかが挙げられます。もっとも、最大参加人数についてはどのアプリも数十人単位での参加が可能なため、セミナーなどのイベントを開催する場合以外はあまり問題になることはないでしょう。手軽さでは、アプリをインストールせずにWebブラウザだけで参加できるかどうかや、ゲスト参加者がアカウント登録せずに参加できるかどうかなどがポイントになります。

機能面では、現在は自宅から参加するケースが多いという性質上、仮想背景や背景ぼかしが利用できるかどうかが重要になってくるでしょう。加えて、仮想ホワイトボード機能や挙手や投票といった参加者の反応をサポートする機能などが使えるかどうかで、選ぶアプリが分かれてきます。

ブレイクアウトルームというのは、別室を作って一部の参加者だけで個別に議論などができる機能です。新たに別の会議室を作るのに比べて、別室と本会議との行き来が簡単なこと、議論の時間やグループ構成などをホストが管理しやすいことなどがメリットとして挙げられます。

そのほか、一部のアプリでは無料版の場合に会議時間が制限されているため注意が必要です。基本的には、制限時間が過ぎても会議室を作り直せば何時間でも利用できますが、何度も接続し直すのはやはり少々面倒です。

それでは、上記のような観点も踏まえながらそれぞれのアプリについて見ていきましょう。

ダントツのシェアを誇る「Zoom」

  • Zoomミーティング

    Zoomミーティング

新型コロナウイルスによる外出自粛が始まって最もシェアを伸ばしたのが「Zoom」です。ゲストがWebブラウザからログインなしで参加できる手軽さや、初期の頃からグリーンスクリーン(背景処理用の緑のスクリーン)なしで自然な仮想背景が使えたことなどから、リモート会議だけでなくリモート飲み会のようなプライベートのイベントでも利用されてきました。

ホワイトボードやブレイクアウトルームなど、一通りのビジネス向けの機能が無料で使える点も大きな魅力です。一方で、無料版の場合は3人以上の会議が最長40分に制限されているため、会議が長引きそうな場合にはあまり適していません。40分の制限を逆手にとって、会議時間を短縮して無駄をなくすといった取り組みをしているところもあるようです。

筆者の周囲では、特にほかに要件やこだわりがなければ、Zoomを使う傾向が強いように感じます。

統合的なコラボレーションツール「Microsoft Teams」

  • https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/microsoft-teams/group-chat-software
  • Microsoft Teams

    Microsoft Teams

Microsoft Teamsは、Microsoftが提供しているリモートコラボレーションツールです。機能の1つとしてWeb会議があり、新型コロナウイルスの流行後に急速に機能の拡張が行われました。無料版はゲストもMicrosoftアカウントによるログインが必要なことや、録画ができないといった制限はあるものの、そのほかの一通りの機能が使えるため、Zoomに迫る勢いでシェアを拡大しています。

Teamsはもともとがチャットを中心としたビジネス向けのコラボレーションツールなので、チャットやチーム作業などとの連携に優れているという強みがあります。チャットから簡単にWeb会議を始められるため、オフィスにいる時と同様の感覚でミーティングの場を設けることができます。

有料版になると、高度な管理機能やセキュリティ機能が追加されます。有料版といってもMicrosoft 365のビジネス向けプランに含まれているため、既にライセンスを契約している企業も多いでしょう。ビジネス用途では、Teamsが一歩先んじていると言えるかもしれません。

Chrome拡張で機能追加できる「Gopgle Meet」

  • Gopgle Meet

    Gopgle Meet

Google Meetは、もともとHangouts Meetという名称で提供されていた、GoogleによるWeb会議アプリです。誰もが1つは持っているであろうGoogleアカウントでホストになれるため、新たにアカウントを取得しなくても気軽に利用できるのが強みと言えます。また、GmailやGoogleカレンダーと連携しており、メールアプリやカレンダーアプリにある「いますぐ会議」ボタンによってワンクリックで会議が始められるという手軽さも魅力です。

チャットやホワイトボードなどが利用できる一方で、ブレイクアウトルームや録画、挙手・投票などのビジネス向け機能が現時点では有料版でしか利用できないのが少々残念な点です。また、無料版では会議の最長時間が1時間という制限があります。単体では仮想背景は使えませんが、背景ぼかしには対応しています。

ZoomやTeamsに比べると若干見劣りする感が否めないGoogle Meetですが、実はGoogle Chromeの拡張機能によって機能強化できるという強みがあります。例えば、自動文字起こし機能やプッシュ・トゥ・トーク機能などといったChrome拡張が提供されています。仮想背景もChrome拡張で使用できます。

有料版は、Googleのコラボレーションツールスイート向けのGoogle Workspace EssentialsやGoogle Workspace Enterpriseといったプランに含まれています。これらのプランを導入している企業であれば、Google Meetの高度な追加機能を利用できます。

アカウント登録なしで会議を開催できる「Skype Meet Now」

  • Skype Meet Now

    Skype Meet Now

Microsoft傘下でビデオ通話サービスを提供してきたSkypeが、新たにWeb会議にフォーカスを当ててスタートしたのが「Meet Now」です。一番の特徴は、ホストとして会議を主催する場合でもアカウント登録が不要という点です。専用アプリのダウンロードも不要なため、思い立ったときにすぐに会議を始められるというメリットがあります。

機能面では、チャットをはじめとして、録画や挙手、投票といった一通りの機能をサポートしています。現時点では仮想背景は使えませんが、背景ぼかしで部屋を隠すことはできます。ブレイクアウトルームは作れないものの、同時に複数の会議を開くこともできるため、必要に応じて別の会議を作るといった方法で対応可能です。

新型コロナウイルス以前にも、ビデオ電話や小規模なWeb会議などでSkypeを利用したことがあるという人も多いのではないでしょうか。Skypeの使用感に慣れている人にとっては、Meet Nowは気軽に使えるWeb会議アプリの有力候補になるでしょう。

Facebookの交友関係を活用できる「Messenger Rooms」

  • Facebook Messenger Rooms

    Facebook Messenger Rooms

Messenger Roomsは、ソーシャルネットワーキングサービスのFacebookが、メッセージアプリのFacebook Messengerを拡張する形でスタートさせたWeb会議機能です。MessengerアプリからそのままWeb会議を始められるのが大きな特徴で、友達にメッセージを送るのと同じ感覚でミーティングの場を設けることができます。Messengerアプリを使用せずにWebブラウザだけで参加することもできます。

機能面では、360度バーチャル背景によって仮想空間上にいるような演出ができたり、豊富なエフェクトがデフォルトで用意されていたりといった特徴があります。Zoomなどで自分の顔にエフェクトをかけたい場合はSnapCameraのような外部アプリを使う必要がありますが、Messenger Roomsでは標準で提供されています。その一方で会議用という観点では、会議室内でのチャットには対応しておらず、録画やホワイトボード、挙手などの機能も用意されていないなど、他のアプリよりも大きく見劣りしてしまいます。

そんなMessenger Roomsの最大の魅力は、ソーシャルネットワークの交友関係がそのままWeb会議につながるという点でしょう。用途としては、Facebook上の交流で生まれたちょっとしたアイデアから、すぐに会議室を立ち上げてビジネスの話につなげる、というようなシチュエーションが想像できます。実際、現在は会議というよりは交流に重点を置いているような印象を受けます。今後、Instagram DirectやWhatsAppなどからも利用できるようになるとのことです。

オンラインに自分の居場所を作れる「Discord」

  • Discord

    Discord

Discordはもともとゲーマー向けのテキストチャットおよびボイスチャットのために作られたアプリですが、さまざまコミュニティ機能やビデオ通話機能なども備えており、Web会議にも活用することができます。ビデオ通話は当初、1対1のみでしたが、2020年4月に複数人の同時参加にも対応しました。このような経緯から、DiscordはWeb会議については最低限の機能しか備えておらず、専らコミュニティを作って交流するという部分に強いアプリになります。

Discordの使い方としては、まず自分のマシンにDiscordサーバを立ち上げて、そこに友人同士で招待し合ってコミュニティを作って交流するという形が基本になります。会議室を立ち上げるというよりは、日常的な交流の一貫としてビデオ通話があるというイメージです。Microsoft Teamsよりもラフに、Faceboookよりも多少クローズドに、自分の空間を作り上げることができるのがDiscordの魅力です。

自宅からのリモートワークが続くと、孤独感を覚えて不安になるという人も少なくありません。仕事上のオフィシャルなつながりだけでなく、気の知れた同僚や友人同士で日常的に緩くつながっていたいという人に、Discordはお勧めのツールです。