「湿度の高い雨の日に、いつものビジネスファッションがしっくりこない……」なんて経験ありませんか。湿気を吸った天然素材の風合いが「何か違う」と感じることもあるかもしれません。

  •  雨の日のビジネスファッションとは?

昨今、ビジネスファッションの多機能化は大幅に進み、化学繊維の地位は劇的に向上しました。雨に強い撥水効果・速乾性など、これまでの天然繊維では実現できなかった要素が加わったからです。雨の日を快適に過ごす「安っぽく見せない化学繊維のコーディネート」について、服のコンサルタントが教えます。

 雨の日に強い素材の共通点

インビスタ社のクールマックス、東レのソアスターやエバレット、小松精練のクールドッツ。これらは化学繊維の生地ブランドです。技術革新により多機能化したこれらの生地は、ツープライススーツ量販店のみならず、百貨店・セレクトショップまで幅広く並んでいます。

ペットボトルの材料として有名なポリエステルも、その多機能性をもってしてモダンな繊維として認知され始めました。撥水効果・速乾性という機能は、雨のビジネスライフを劇的に変えるだけのパワーがあるからです。なかでも、私がイチオシする雨の日コーディネートはパンツにあります。「折り目が形状記憶化されたスラックス」を軸に据えています。

  •  折り目が形状記憶されたスラックス

 雨の日はパンツからコーディネートをつくる!

傘をさしても足元が濡れる雨の日。雨脚の強さによりますが、跳ねた雨水で靴のみならずスラックスの足元も濡れやすいですよね。そこで、雨の日はパンツの生地感にこだわります。

クールビズが始まったこの時期、必ずしもスーツである必要はありません。サマーウールのスラックスやチノパンも選択肢にあがりますが、雨の日はコットン素材のチノパンは避けましょう。スラックスに比べ、生地が厚いチノパンは吸った水分が乾くまで時間が掛かるため快適ではないからです。

一方、センタープレスが形状記憶化されたスラックスは雨の日に重宝します。どんなに濡れても折り目がヨレないからです。アイロンで付けたスラックスの折り目は、雨に濡れてしまえばそのラインは弱まりますが、このスラックスは折り目が消えません。THE SUIT COMPANY(青山商事)で何種類か扱いがあります。では、何色を選べば良いのでしょうか?

 明るいグレーに気を付けよう!

化学繊維で織られた衣服が、濡れて変色することはありません。そういう意味では色は何でもOKです。ところが、天然繊維ではそうなりません。ジャケット・スラックス問わず、ミディアムグレーより明るいライトグレーでは湿った部分の色が濃く見えます。

雨脚が強い日は濡れるリスクも高いので、ずぶ濡れに見えないようダークカラーを中心にコーディネートしてみましょう。たとえば、ジャケパンならばチャコールグレースラックスにネイビージャケットが定番になります。一方、スーツの場合、ミディアムグレーより濃いグレースーツ、もしくはネイビースーツも良いですね。

また、太陽の日照具合で映える色も変わると言われています。雨のイメージがある曇天のイギリスと晴れのイメージがあるカラッとしたイタリアでは、そもそも好まれる色が違うそうです。雨の日にネクタイを街の雰囲気に馴染ませるならば、明るい色よりシックな色の方が映えるでしょう。

 軽量感ジャケットで快適なビジネスライフを!

湿気が強い雨の日だからこそ、快適に過ごすために軽量感も欠かせません。まるで着ていないような感覚の軽いサマージャケットは機能素材の真骨頂です。しかも、バッグに畳めます。シワに強いからです。

こういう素材の機能ジャケットは、シアサッカー生地のように細かい凹凸感を概ね付けています。こうすることでポリエステル特有の人工的な風合いを感じさせません。これらのジャケットは、軽さがあるからこそ暑い日にも役立ちますが、湿気が強い雨の日を快適に過ごすため重宝します。 

 撥水効果を期待できるスーツ

一方、スーツも撥水効果を期待できるものが増えてきました。ウールにポリエステルを配合した素材をツープライススーツ量販店で見掛けます。洗えることは当たり前、昨今は速乾性・軽量感・撥水効果は機能素材スーツのスタンダードになりつつあります。

 足元を濡らさない撥水シューズ

雨の日の革靴は水分が染みます。革底ではなくゴム底を選ぶ方は多いでしょう。このとき、アッパーソールの革自体に撥水効果があるシューズを選びたいところです。スコッチグレインのシャイン・オア・レインシリーズは定番ですし、ビジネスシューズをかたどったレインシューズなど、昨今はいろいろな靴を見掛けます。

このとき、靴に関しては完全防水という機能にこだわるより、デザインにこだわりたいです。多少撥水効果が期待できるならば、明らかにスタイリッシュな靴を選びましょう。どんなに防水効果が備わっていたとしても、明らかに印象が良くない靴ではテンションが上がりませんよね。

いかがでしたでしょうか。今回紹介したアイテムが、他のビジネスマンと差をつけるための「雨の日コーディネート」のお役に立てば幸いです。

著者プロフィール: 森井良行(もりい・よしゆき)

エレガントカジュアル 代表取締役
20代後半から40代の男性のファッションを「エレガントカジュアル」でワンランクアップさせる「服のコンサルタント」。 街のセレクトショップを歩き、顧客に試着を繰り返してもらいながら、その人に最も似合う服を探していく独自の「買い物同行」は9割以上の高い満足度を誇る。著書『毎朝、迷わない! ユニクロ&ツープライススーツの上手な使い方』 (WAVE出版)