JR西日本が新型客車による「SLやまぐち号」の運行日程を発表した。9月2日から12月24日まで、土曜休日の37日間。運行時刻は9月2日を除いて現在と同じようだ。動力車の性能が上がったわけではないから当然といえる。それにしても、9月2日の下りだけ運行時刻が変更される理由は何だろう?

JR山口線の下り列車のダイヤ。青い線が「SLやまぐち号」。青い点線が9月2日のみの変更時刻。赤い線は特急「スーパーおき」。黒い線は普通列車(列車ダイヤ描画ソフト「OuDia」で作成)

報道資料に示された各駅の時刻と、現行の山口線の時刻をもとにダイヤを描いてみた。途中の篠目駅の発車時刻が約8分延びて、以降の停車駅の発車時刻も繰り下がっていく。注目ポイントは地福駅だ。ここで益田発山口行の上り普通列車2546Dとすれ違う。「SLやまぐち号」は普通2546Dの運行時刻に影響を与えないぎりぎりの時刻まで、篠目駅の停車時間を延ばしている。

考えられる理由としては、9月2日だけ運行する上り臨時列車があって、「SLやまぐち号」が篠目駅ですれ違う必要があるか。あるいは、篠目駅に長時間停車して、なんらかのイベントが行われるかもしれない。篠目駅は蒸気機関車現役時代からの給水塔が残っている。鉄道ファンの撮影スポットとしても人気の場所だ。

ちなみに、9月2日は津和野駅で新型客車を出迎えるイベントが開催される予定だ。山口県の観光情報サイト「おいでませ山口へ」によると、津和野高校の生徒による『鉄道唱歌 ~山口線~』の合唱などが行われるようだ。まさかこの日だけ篠目駅で給水するというわけではないだろうから、篠目駅でもなんらかのイベントが用意されているとみていいかもしれない。新型客車の運行初日に乗って確かめたくなってきた。

8月27日までに現行客車に乗る人も、9月2日から新型客車に乗る人も、「SLやまぐち号」に乗りに行く予定を立ててみよう。下り列車の新山口駅発車時刻は10時50分。東京駅からだと、当日の朝、6時16分発「のぞみ3号」に乗車すると間に合う。名古屋駅は7時52分発、新大阪駅は8時42分発。新山口駅の到着時刻は10時34分だ。

発車15分前の到着では慌ただしい。新山口駅で「SLやまぐち号」の入線を出迎えたい。そんなときは、名古屋駅6時20分発「のぞみ95号」に乗ろう。新大阪駅は7時12分発。広島駅で「こだま729号」に乗り換えて、新山口駅に9時45分に着く。残念ながら当日の東京発でこの時刻に到着できる列車はない。ただし、前日の22時に東京駅を発車する寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」なら岡山駅6時27分着。ここから7時3分発「ひかり441号」に乗り継ぐと、新山口駅に8時45分に到着する。このルートがおもしろそうだ。

9月10日まで「青春18きっぷ」(夏季)の利用期間内だから、普通列車を乗り継いで前日までに新山口駅に到着し、節約できた分でちょっといい宿に泊まるという選択も良さそう。時間があるならやってみたいルートだ。

東京・羽田空港から飛行機で行く場合、山口宇部空港行の便はスターフライヤーが7時20分発、9時ちょうど着。日本航空(JAL)は7時55分発、9時30分着。山口宇部空港からバスに乗れば、新山口駅に10時20分頃に到着する。でも、なるべく鉄道で行ってほしい。JR西日本が大阪から離れた山口線で「SLやまぐち号」を走らせる理由のひとつは、山陽新幹線の乗客を増やしたいだろうから。

山口線の上り列車のダイヤ。青い線が「SLやまぐち号」。山陰回りで乗るなら、特急「スーパーおき3号」で津和野乗換えがおすすめ

上り「SLやまぐち号」は、下りより指定券を取りやすいかもしれない。津和野駅15時45分発の列車に間に合うためには、昼頃までに新山口駅に到着し、12時53分発の特急「スーパーおき4号」で津和野駅13時55分着。これなら約2時間の津和野観光もできる。山口線の往復ルートがつまらないと思ったら、前日から「サンライズ出雲」で出雲市へ、そして「スーパーおき3号」に乗り継ぐと、津和野駅に13時55分に到着する。でも、山陰の小京都と呼ばれる津和野だから、1泊したほうが楽しそうだ。

上り「SLやまぐち号」の新山口駅到着は17時30分。東京行の新幹線の最終便は新山口駅19時19分発「さくら568号」に乗り、広島駅で「のぞみ64号」に乗り継ぎ、東京駅に23時45分着。乗換えなしで行きたいなら、新山口駅18時46分発「のぞみ60号」がおすすめ。東京駅到着は23時11分だ。もっと早く帰りたいなら、新山口駅18時7分発「こだま754号」に乗り、広島駅で18時57分発「のぞみ58号」に乗り継げば、東京駅に22時53分に着く。

どうしても1日しか休めないというなら、早朝の新幹線で新山口駅へ行き、「SLやまぐち号」で往復して、最終の新幹線で戻れる。かなり強行軍だし、旅としては味気ないと思う。しかし、東京から鉄道を利用して「SLやまぐち号」に乗りに行き、日帰りできるとは。時代の変化を感じる。

まだ東京発九州方面の寝台特急が走っていた頃、新幹線の始発列車では当日の「SLやまぐち号」に間に合わなかったと記憶している。前日に発車する九州行の寝台特急に乗り、早朝の小郡駅(現・新山口駅)で降り、時間をつぶすしかなかった。レトロなSL列車に乗る日程を組んでみたら、皮肉なことに新幹線のスピードアップに驚く結果となった。