ようやく台風も打ち止めになったようで、晴天と涼風が心地良い。旅行ガイドサイトでは紅葉情報も始まった。東武鉄道は先週から「日光の紅葉情報」の掲載が始まり、JR北海道も9月18日から紅葉情報を提供している。ニセコアンヌプリや阿寒湖、層雲峡は見頃とのこと。さすが北海道だ。紅葉が早い。

鉄道趣味において、10月初旬といえば「鉄道の日」関連のイベントが各地で開催される時期。その余韻も冷めないうちに、先週は鉄道会社・旅行会社からユニークな鉄道旅行ツアーが続々と発表された。個人旅行ではできないパックツアーの魅力を探してみよう。

  • フジドリームエアラインズ エンブラエル175型

まずは静岡県の大井川鐵道、フジドリームエアラインズ、富士山静岡空港が共同で企画した「富士山遊覧飛行と大井川鐵道SLと南アルプスあぷとライン」が面白そうだ。11月30日の日帰りプランで、ジェット旅客機の遊覧飛行とトロッコ列車・SL列車を組み合わせた「空飛ぶ&SLツアー」という贅沢な内容だ。大井川鐵道の公式サイトから申し込める。

行程表によると、静岡駅南口に集合し、富士山静岡空港を6時45分頃に離陸。伊豆半島や富士山上空を遊覧飛行して富士山静岡空港に戻る。その後、バスで「ふじのくに茶の都ミュージアム」を訪問し、茶の文化を体験した後、大井川鐵道の奥大井湖上駅へ。ここから「南アルプスあぷとライン」こと井川線に乗車して千頭駅へ。SL列車に乗って新金谷駅まで。ここからバスで富士山静岡空港を経由し、静岡駅で解散する。

  • 富士山を眺める遊覧飛行

フジドリームエアラインズは富士山静岡空港を拠点とする航空会社だ。定期便の就航路線は静岡から出雲・福岡・鹿児島、名古屋(小牧)から青森・花巻・山形・新潟・出雲・高知・北九州・福岡など。使用機材は日本では珍しいブラジル製のエンブラエル170シリーズで、日本では日本航空グループのジェイエアとフジドリームエアラインズの2社が採用している。このうち、やや定員の多いエンブラエル175は、日本ではフジドリームエアラインズのみとい珍しい機体。170は76席、175は84席。このツアーは募集人員が最大80名だから、84席の175型機が担当することになりそう。飛行機好きにも魅力的だ。

南アルプスあぷとラインでは、鉄道ファンにおなじみのアプト式区間がある。急勾配で運行するために、2本のレールの間に歯車の歯のようなレールを敷き、機関車側の歯車を噛ませる。かつて信越本線横川~軽井沢間で採用されたけれども、同区間が廃止されたため、日本ではここだけとなった。奥大井湖上駅は秘境駅として有名で、接岨湖と呼ばれる長島ダムに突き出した半島にあり、両端は鉄橋という絶景スポットにある。昨年は11月下旬に紅葉を迎えたとのことで、11月30日の催行は大いに期待できる。

  • 奥大井湖上駅は紅葉に期待

  • 窓を開けて秋の空気を楽しむSL列車

SL列車「かわね路号」は大井川鐵道のメインコンテンツ。飾り気のない旧型客車を使用し、SL全盛期のリアルな旅を体験できる。冷房のない客車だからこそ、この時期に窓を開けて風を浴びる旅が心地良い。ただし、トンネルに入ると蒸気機関車の煙を浴びることになり、おしゃれな服を着て行くと燻製になりかねない(笑)。これも昭和のリアルな旅だ。

11月30日は日帰りツアーというけれど、静岡駅出発は朝5時台。遠方から参加するなら前日泊が必要になる。また、座席配置の都合上、複数名で参加してほしいとのこと。もし1人で参加したい、あるいは宿泊も込みで予約したいなら、旅行会社のクラブツーリズムが11月23日出発で1泊2日のツアーを受付中だ。ツアー名は「1名1室同旅行代金! 11月23日出発限定! FDAフジドリームエアラインズ『富士山遊覧飛行』と郷愁の大井川鐵道SL列車・アプト式列車・奥大井湖上駅 2日間」で、東京駅を8時台に発車する新幹線「こだま」に乗り、初日は大井川鐵道の南アルプスあぷとラインとSL列車への乗車、翌日はフジドリームエアラインズの遊覧飛行が予定されている。11月3日に開業する日本平展望回廊(日本平夢テラス) の訪問も魅力的だ。

なお、大井川鐵道も12月に1泊2日のツアーを予定している。12月21日発・12月22日発の2回で、初日は日本平展望回廊(日本平夢テラス) を訪問し、翌日は11月30日の日帰りツアーとほぼ同一行程になる。ただし、こちらのSL列車は「きかんしゃトーマス号」になる。これが最大の魅力かもしれない。「きかんしゃトーマス号」のクリスマス運行の時期に重なっているためだ。受付開始は10月10日から。先着順ではなく、受付多数の場合は抽選になるとのこと。

  • 12月には「きかんしゃトーマス号」と組み合わせたツアーもある

秋は他にも魅力的なツアーがある。びゅうトラベルサービス(JR東日本グループ)は11月4日出発の日帰りで「【ネット限定】乗車チャンスの少ない貨物線乗車(山手貨物線・常磐貨物線・武蔵野貨物線・高島線経由)新宿発 両国行き 首都圏ぐるり約8時間の旅」を募集中。貨物線乗車は鉄道ツアーの定番となりつつある。同社はその他、「IZU CRAILE&THE ROYAL EXPRESS 伊豆の旅 2日間 下田東急ホテル(本館)[高層階指定]」も募集中。こちらは10月28日からの1泊2日の行程で、伊豆方面の新しい観光列車2種類に乗れる。こどもたちと遊べる列車「お座敷プラレール号で行く秋のぐんまの旅~碓氷峠鉄道文化むらを楽しもう!」も楽しそうだ。

鉄道ツアーは前出のクラブツーリズムが力を入れている。今後の予定として、山陰の観光列車「あめつち(山陰本線)」「昭和(若桜鉄道)」「ラ・マル・ド・ボァ(山陽本線)」を組み合わせた「山陰山陽憧れの3つの観光列車に乗車する鉄道旅 2日間」、飯田線秘境駅号と恵那峡遊覧船を組み合わせた「船から・列車から眺める秘境紅葉~錦に染まる『香嵐渓』たっぷり約3時間滞在とJR飯田線秘境駅号・クラブツーリズム貸切特別運行 2日間」、JR四国の2つの観光列車を組み合わせた「『伊予灘ものがたり』と『四国まんなか千年ものがたり』食事自慢の2つの観光列車2日間」があった。クラブツーリズムはJR東日本のE655系「なごみ」に乗車するツアーも多く企画しており、旅好きは注目だ。

西武鉄道系の西武トラベルは、11月16日深夜発の夜行日帰りで「西武鉄道40000系(S-TRAINの車両)使用 秩父・三峯神社で絶景の雲海&星空鑑賞を目指す! 夜行列車で行く秩父絶景ツアー」を募集中。西武鉄道の雲海ツアーも定番商品になりつつある。天体望遠鏡のシェア国内トップを誇るビクセンによるスターパーティ(星空観賞会)も開催される。秋の澄んだ夜空を楽しめそうだ。

「超低速スノータートル」が話題のほくほく線では、11月10日に車両基地などを見学する「『南田裕介さん・久野知美さんと行く ほくほく線』≪鉄分“ほっくほく”ツアー≫」を実施する。こちらは新潟県十日町市によるJR飯山線、ほくせく線を核にした沿線活性化の取組みのひとつとなっている。

鉄道ファンはきっぷの知識や宿の手配に慣れているから、フリーきっぷなどを駆使して自由に出かける機会が多い。しかし、旅行会社のツアーには、団体バスを使って効率よく観光列車を乗り継げたり、個人では立ち入れない施設を見学できたり、タレントさんと旅を楽しんだりと個人旅行では体験できない魅力もある。インターネットで検索できるツアーが多いので、「自分の興味」と「ツアー」をキーワードに探してみよう。