社会人になると、「財形貯蓄制度」というワードを耳にすることがあるかと思います。これは、企業が福利厚生のひとつとして導入しているもので、ごく簡単に言えば、毎月の給与から一定額を天引きして貯蓄する仕組みのことです。

財形貯蓄の種類によっては税制優遇があり、将来の資金作りがお得にできるとあって、会社の先輩に加入を勧められるかもしれません。そこで本稿では、財形貯蓄制度がどのようなものなのか解説していきます。

  • 財形貯蓄制度について知識をつけ、上手に活用しましょう(写真:マイナビニュース)

    財形貯蓄制度について知識をつけ、上手に活用しましょう

財形貯蓄制度とは

財形貯蓄制度とは、毎月の給与から会社が天引きして積み立てる貯蓄制度です。財形貯蓄には、「一般財形貯蓄」「財形年金貯蓄」「財形住宅貯蓄」の3種類があります。

■一般財形貯蓄
一般財形貯蓄は、使用目的を限定せず、自由に使えるフレキシブルな貯蓄です。結婚や出産、教育、旅行などの資金や病気、けがによる出費など、幅広い用途に使うことができます。

原則的には3年以上積み立てることになっていますが、貯蓄開始から1年経てば払い出しは可能です。利用できる人はサラリーマンや公務員などで、積立限度額はありません。後述する「財形年金貯蓄」や「財形住宅貯蓄」との併用もできます。なお、一般財形貯蓄には非課税措置がない点に注意が必要です。

■財形年金貯蓄
財形年金貯蓄は、60歳以降に年金として受け取る老後資金作りのための貯蓄です。利用できるのは満55歳未満のサラリーマンや公務員などで、5年以上の積立期間が必要です。

年金の受け取りは満60歳以降となり、5年以上20年以内にわたって定期的に受け取ります。なお、積み立て終了から年金の受け取り開始まで5年以内の据え置き期間を設けることができます。「財形住宅貯蓄」と合わせて貯蓄残高550万円まで利息が非課税となります。ただし、年金以外の使い道で払い出す際は、利息に税金がかかります。60歳でリタイアし、年金の受給が始まる65歳までの間の生活資金を確保する目的で利用する人もいるようです。

■財形住宅貯蓄
財形住宅貯蓄は、マイホームの建設や購入、リフォームなど住まいの資金作りのための貯蓄です。利用できるのは、財形年金貯蓄と同様、満55歳未満のサラリーマンや公務員などで、5年以上の積立期間が必要となります。「財形年金貯蓄」と合わせて貯蓄残高550万円まで利息は非課税となる税制優遇があります。ただし、住宅の建設や購入、リフォーム以外の目的で払い出すと、利息に課税されます。

ちなみに、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄には貯蓄型と保険型があります。財形年金貯蓄の場合、貯蓄型は550万円まで、保険型は385万円(財形住宅貯蓄と合算で550万円)までが非課税となります。財形住宅貯蓄は、どちらの場合も550万円まで非課税です。

財形貯蓄制度のメリットやデメリット、注意点

財形貯蓄のメリットは、天引きで自動的にお金が貯められるほか、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄では利息が非課税になりお得になるという点が挙げられます。貯蓄は、生活費の余りを貯めようと思ってもなかなかうまくはいきません。しかし、財形貯蓄制度を活用して「先取り貯蓄」してしまえば、残りのお金を生活費に回せばいいだけなので、手間をかけることなく自然とお金が貯められるのです。

また、財形貯蓄制度の他のメリットとして、「財形住宅融資」を利用できる点が挙げられます。これは、住宅の建設や購入、リフォームを行う際に住宅金融支援機構から低金利で融資を受けられる制度です。

財形住宅融資を受けるためには、財形貯蓄を1年以上続け、申込日前2年以内に財形貯蓄の預け入れを行い、かつ、申込日における財形貯蓄残高が50万円以上であり、勤務先から住宅について援助(負担軽減措置)を受けられるなどの条件があります。融資額は、財形貯蓄の合計残高の10倍(最高4,000万円)までの額で、住宅取得価額の90%が限度となります。

このようなメリットのある財形貯蓄制度ですが、解約のタイミングによっては手数料などで元本割れの可能性がある点がデメリットと言えます。さらに、前述の通り、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、決められた目的以外で引き出す場合は非課税となりません。また、そもそも財形貯蓄制度は勤め先の企業が加入していなければ利用できないので注意しましょう。財形貯蓄を活用してみたい人は、この制度があるか勤務先に確認してみてください。

自動的にお金が貯まる仕組みを手に入れよう

「自分で貯金する自信がない」という人は、勤務先に財形貯蓄制度があれば活用してみてはいかがでしょうか。毎月給与口座からお金を引き出し、貯蓄用口座に振り分けるという面倒な作業をしなくとも、自動的に貯蓄ができます。

財形年金貯蓄や財形住宅貯蓄なら、税制優遇もありお得です。また、財形貯蓄はお金を引き出すのに勤務先の窓口や上司の印鑑が必要という手間があることで、普通預金のようには簡単にお金を払い出せません。これもお金を貯めるにはいい仕組みと言えそうです。まずは、勤め先に財形貯蓄制度があるかの確認から始めてみましょう。

武藤貴子

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント

会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中。