今回は私事で恐縮だが、毎年制作しているクレジットカード本の最新版『最強クレジットカードガイド2016』(角川SSCムック)が3月7日に発売されたので、その見どころと裏話について書かせていただこうと思う。

ここ1年で勢力図が激変

この1年はクレジットカード&ポイント業界において、大きな変化が相次いだ。高還元と呼ばれていたカードでポイント制度の改悪が立て続けにあり、その一方で「P-one Wiz」や「Orico Card THE POINT PREMIUM GOLD」(ともに第17回の記事参照)など、新たに名乗りを挙げるカードが登場。

また、昨年12月にNTTドコモが新たな共通ポイント「dポイント」をスタートさせ、今年2月にはJR東日本でもグループ共通のポイント「JRE POINT」が誕生。同じく2月には、遅れていたPontaとリクルートポイントの統合も完了し、ポイントを取り巻く状況は激変したと言っても過言ではない。

そうしたことも踏まえ、今回は巻頭特集で「新メインカード候補大紹介!!」と題して、最新の高還元カード20枚を解説。ポイントの使い道や電子マネーとの相性、付帯サービスの充実度などの要素も含めて紹介した。第2特集では「知らなきゃ損するポイント講座」と題して、Tポイント、Ponta、楽天スーパーポイント、dポイントの基本を解説。それぞれ効率よくポイントを貯める方法や、相性のいいクレジットカードを紹介した。

このほかにも航空マイルの特集では、ANA、JALの各マイルを貯めやすいカードや、実は国内航空券へのマイル交換がおトクな外資系航空会社のカードを紹介。ネットショッピングの特集では、Amazon.co.jp、楽天市場、Yahoo! ショッピングの3大サイトの攻略法を中心に解説した。

また、ライフスタイル別のカード紹介では、家電量販店、スーパーマーケット、百貨店&ショッピングセンター、旅行、カーライフの各ジャンルでおトクなカードをピックアップ。コスパに優れたゴールドカードの特集や、ここ1~2年で続々と新種が増えている電子マネーについても改めて説明した。

今回も200枚以上のカードを紹介しているが、このシリーズでは、できるだけ多くの選択肢を提供することをテーマとしている。なぜなら最強のカードとは使う人、使う場所次第で変わるからだ。ネット通販をたくさんする人と、百貨店をよく利用する人では、当然最適なカードは違ってくる。

複数のカードを持ち、その場面場面で最も還元率の高いカードで支払うことが理想だが、そこには年会費、年間利用額、ポイントの使い道など、様々な要因も絡んでくるため、持つべきカードの組み合わせは人の数だけ正解があるのだ。

それにポイント還元だけが正解というわけでもない。本の中では空港ラウンジが使えるゴールドカード、コンシェルジュデスクが使えるプラチナカード、アニメやタレントとコラボしたカード、野球・サッカー・ゴルフと関連したカードなども紹介している。個人的にはデザインが好きという理由だけでカードを選んでも何ら問題はないと思う。

本には書けない編集裏話

それと、本を読むうえで気をつけてほしい点が2つほどある。ひとつはポイントカードとクレジットカードの違いを理解すること。例えば、ポイントカードにクレジット機能がついたカードでは、ポイントカードを「提示」することで得られるポイントと、クレジット機能で「支払い」をすることで得られるポイントは、分けて考える必要がある。

提示で100円につき1ポイント(還元率1%)、支払いで100円につき1ポイント(同1%)が貯まるカードでは、これを「ポイント2倍」と表現することもあるが、提示で得られるポイントが他のクレジットカードで払った場合でも変わらないのであれば、還元率1%以上のクレジットカードで支払ったほうがトクである。

本の中では「提示によるポイント」や「クレジット払いに対するポイント」といった表現を多用しているが、それは見せかけの「ポイント2倍」に騙されないようにするため。これはネットショッピングでも同様で、この場合は「提示」という言葉の代わりに、「ショップ利用に対するポイント」などといった表現を使っている。

もうひとつは、「○○できる」や「△△すれば○○できる」という表現は、「○○しかできない」や「△△しなければ○○できない」という意味でもあること。当たり障りのない例を出すと、年会費の説明で「年間10万円利用すると次年度無料」と書いている場合は、年間10万円利用しなければ次年度は年会費が必要ということでもある。

これは読者に不便をかけて非常に申し訳ないのだが、基本的に誌面でのカード紹介は、券面画像を提供してもらう代わりに、カード会社からの原稿チェックを受け入れている(事実誤認を防止するためでもあるが)。そこで「○○できない」と直接的に表現してしまうと、カード会社から掲載拒否され、券面画像が借りられなくなってしまうのだ。

本の中では使い方次第でオススメしたいカードしか紹介していないので、そこまでネガティブな面に言及することはないが、カード会社から丸々原稿を差し替えてくれという要望が来ることも少なくない(特に今回多かったのが、いつ変更するかわからないので、具体的な数字を出さないでほしいという要望)。

しかし、そこでカード会社の言いなりになっては、読者の利益が守れなくなってしまうため、うまくお互いの妥協点を見つけることに毎回苦心している。また、比較的ネガティブな面に触れても許容してくれるカード会社もあるので、いかに不平等にならずに作り上げるかも毎回の課題である。

このような事情から、読み手にもある程度のスキルを求めざるをえない部分はあるものの、基本的には初心者でもわかるように意識して作っているので、あまり身構えずに読んでいただければ幸いである。ほかにも裏話は山のようにあるが、だいぶ長文になってしまったので、またの機会にさせていただこう。

最後は編集後記のようになってしまったが、冒頭で触れたように、ここ1年でカード&ポイントの勢力図は激変し、いまはそれが一段落した状態。手持ちのカードを見直すには絶好のタイミングだ。年度末や年度始めは入会キャンペーンも多い時期なので、この機会に自分だけの最強カードを見つけてほしい。

公式サイトは以下の通り。

最強クレジットカードガイド2016

(※クレジットカードの用語などは以下を参照)

『シーンで選ぶクレジットカード活用術 (1) 最低限知っておいてほしい基礎知識』

※本記事で紹介したサービス内容は、消費税率8%を前提とした更新日時点の情報です。また、各サービスには一部対象外となるケースがあります。ご利用の際は公式サイトなどで最新の情報をご確認ください。
<著者プロフィール>

タナカヒロシ(ライター・編集者)

普段は音楽やエンタメ関係の仕事が多いが、過去に勤めていた会社の都合でクレジットカード本を作ったことをきっかけに、クレジットカード、電子マネー、ポイントなどに詳しくなる。以降、定期的にクレジットカードのムック本を編集・執筆。3月7日発売の『最強クレジットカードガイド2016 本当にトクするカードの選び方・使い方=写真=』(角川マガジンズ)では、編集統括および記事の大部分を執筆している。

※写真は本文と関係ありません