くしゃみや鼻水などの症状がつらい秋の花粉症と合併しやすい口腔アレルギー症候群とは?

秋口の今の時期、鼻がむずがゆかったり、鼻水やくしゃみが出て困ったりしている人はいませんか? 花粉症のつらい症状は、身体の防御反応が過敏な状態を意味しています。

実は花粉症の方がある特定のフルーツや野菜を食べると、「口」が腫れたりかゆくなったりする「口腔アレルギー症候群」になることがあります。今回は、特に花粉症の方に知っておいてほしい「口」のアレルギー反応について解説していきましょう。

花粉症で口腔アレルギー症候群が起きる理由

8月から10月はイネやブタクサ、ヨモギなどによる花粉症が起こりやすい時期です。身体を守る免疫システムが花粉を「異物」と認識し、過敏な防御反応をとる結果、鼻水やくしゃみなどのつらい症状が出てしまうのが花粉症の仕組みです。

そして、その花粉症と高い頻度で合併するのが「口腔アレルギー症候群」。フルーツや野菜を「口」から摂取したことによって引き起こされ、口唇や口の中に腫れやかゆみ、ヒリヒリ感が生じる食物アレルギーの一種です。「口腔アレルギー症候群」は、花粉の特定のたんぱく質(抗原)がフルーツや野菜の特定のたんぱく質(抗原)と似ているために起きると考えられています。

例えば、秋のブタクサ花粉症の方は、メロン・スイカ・キュウリ(ウリ科)に注意が必要です。ウリ科のフルーツや野菜が「口」に触れたとき、体はブタクサ花粉と勘違いして、過敏な防御反応が出てしまうのです。他にも秋のヨモギ花粉症の方は、セロリ・にんじん(セリ科)、マンゴー(ウルシ科)に注意しましょう。セリ科やウルシ科のたんぱく質がヨモギ花粉のたんぱく質に似ているからです。

「口腔アレルギー症候群」の原因になる食べ物は、リンゴ・サクランボ・モモなどのバラ科が37.9%で最も多く、セリ科が12%、キウイなどのマタタビ科が10.2%です(※1)。他にも国内で最も多いスギ花粉症の一部の方にも「口腔アレルギー症候群」が起きる危険性があります。

なぜアナフィラキシーに注意が必要か

多くの種類があるアレルギーですが、基本的には4つに大別できます。花粉症や食物アレルギーは、命を落とす危険性があるアナフィラキシーと同じI型(即時型)と呼ばれるグループに分類されます。

「口腔アレルギー症候群」も食物アレルギーの一種です。「口腔アレルギー症候群」の方が原因となるフルーツや野菜を食べすぎると、「口」の症状だけでなく、アナフィラキシーを起こすため注意が必要です。

簡単にアレルギーの4グループの特徴をご紹介しておきましょう。I型アレルギーでは、特定のたんぱく質(抗原)に対して免疫の準備ができ(感作)、次にその物質が身体に入ってくると急に激しい症状が出る即時型です。Ⅱ型は輸血する血液型が間違ったときに起こる溶血性貧血などの細胞障害型です。Ⅲ型はリウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患です。そしてIV型は金属アレルギーなどの遅延型です。

ある調査では、「口腔アレルギー症候群」の症状を起こした方の約3割がじんましん、約4割が息苦しいなどの呼吸器の症状を呈し、そしてなんと約1割でアナフィラキシーショックが起こったと報告されています(※1)。

アナフィラキシーの症状の中でも、特に皮膚のかゆみやじんましん、吐き気などのアレルギー反応が全身に出て、血圧が急に下がった状態をアナフィラキシーショックと言います。血圧が急に下がるので顔が真っ青になり、意識が遠くなります。重症の場合、のどが腫れて息苦しくなり、命を落としてしまう方もいます。

命に関わるような重症なアナフィラキシーの場合、心臓が止まるまで約5~30分との報告があります(※2)。アナフィラキシーに対しては、アドレナリンという救急薬品を使わないと死亡リスクが高くなってしまいます。そのため、アナフィラキシーを経験した人や、アナフィラキシーを起こすリスクが高い人にはエピペン(アドレナリン)が必要です。

自分の状態を把握しよう

睡眠や生活習慣は、免疫システムに影響すると言われています。規則正しい生活を心がけ、疲れやストレスをためすぎないようにしましょう。そして「口腔アレルギー症候群」は、正しい診断に基づいた必要最低限の原因の除去が最も重要です。一人で悩まず、まずはアレルギー科、耳鼻咽喉科、皮膚科などの専門家に相談しましょう。特定の食べ物で「口」の過敏症状がある場合、血液検査や皮膚の検査(プリックテスト)で診断されます。

また「口腔アレルギー症候群」は、食べ物を「口」から摂取後15分以内に症状を認めるため(※3)、食べ物の「メモ習慣」で原因が特定できることがあります。フルーツや野菜だけでなく、豆乳による「口腔アレルギー症候群」で花粉症の方がアナフィラキシーを起こして救急搬送されたという報告もあります(※4)。「口」の中の腫れ、かゆみ、ピリピリ感などの自分の感覚を大事にしながら、食べ物を通じて自分の状態を把握したいですね。

注釈

※1 『特殊型食物アレルギーの診療手引き2015』 研究代表者 島根大学医学部皮膚科 森田栄伸

※2 参考: アナフィラキシーガイドライン 日本アレルギー学会

※3 『口腔アレルギー症候群』 北海道大学大学院耳鼻咽喉科・頭頸部外科 中丸裕爾 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 117 (2014) No. 5 p. 702-703

※4 『アナフィラキシー症状を呈した豆乳による口腔アレルギー症候群の一例』 宮部はるか、川島佳代子 耳鼻咽喉科免疫アレルギー Vol. 31 (2013) No. 4 p. 253-256

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著者: 古舘健(フルダテ・ケン)

健「口」長生き習慣の研究家。口腔外科医(歯科医師)。
1985年青森県十和田市出身。北海道大学卒業後、日本一短命の青森県に戻り、弘前大学医学部附属病院、脳卒中センター、腎研究所など地域医療に従事。バルセロナ・メルボルン・香港など国際学会でも研究成果を発表。口と身体を健康に保つ方法を体系化、啓蒙に尽力している。「マイナビニュース」の悩みを解決する「最強ドクター」コラムニスト。つがる総合病院歯科口腔外科医長。医学博士。趣味は読書(Amazon100万位中のトップ100レビュアー)と筋トレ(とくに大腿四頭筋)。KEN's blogはこちら。