東京2020オリンピック競技大会では、史上最多となる33競技339種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「サッカー」にフォーカスする。

得点シーンのドラマティックさが観客を熱狂の渦に巻き込む

1チーム11人ずつで、ボールを相手ゴールに入れて点数を競う「サッカー」。ボール1つあればプレーできるため、ヨーロッパ、南米、アジア、アフリカなど大陸を問わず、世界中で広く楽しまれている。

1863年に設立されたフットボール・アソシエーション(イングランドサッカー協会)によってルールが整備され、1930年から4年ごとに開催される「FIFAワールドカップ」は、世界中で高いテレビ視聴率を誇る大イベントとなっている。

オリンピックの男子サッカーはFIFAワールドカップよりも歴史が長く、ロサンゼルス1932大会を除いてパリ1900大会から毎大会で実施されている。モスクワ1980大会まではオリンピック憲章のアマチュア規定のためプロ選手が出場できず注目度は低かったが、現在は世界の若手スター選手のお披露目・活躍の場となっており、毎回大きな盛り上がりを見せている。

バルセロナ1992大会からは出場資格が23歳以下となり、アトランタ1996大会からは23歳以下のチームに3名のオーバーエイジ選手を加えることができるようになり、FIFAワールドカップでは実現しない若い顔ぶれの活躍が見られる。

女子はアトランタ1996大会から加わった。こちらは年齢制限がなく、金メダルはワールドカップと同等のステータスを持つ。オリンピックの女子サッカーは男子と比べて歴史は浅いが、世界における女子サッカーの普及・発展に大きく寄与している。

ゴールキーパー以外は手でボールを扱うことができないため、ボールを操る足技、相手ディフェンスをかわして相手ゴールへとボールを運ぶチームワーク、相手チームの攻めを防ぐ戦術などが見どころとなる。得点はバスケットボールやラグビーなどと比べて少ない。だがそれだけに1得点には重みがあり、得点シーンのドラマティックさは観る者の目をくぎ付けにし、熱狂させるのである。

ポジションは大きく分けて、ゴールキーパー、ディフェンダー、ミッドフィルダー、フォワード。ゴールキーパーはゴールエリア内でほぼすべての時間を過ごし、役割は相手チームのシュートを防ぐことに特化しているが、最も後方から全体を見渡し、味方に大声で指示を与えて陣形をまとめる重要な役割も持っている。

ディフェンダーは、相手チームの攻撃をゴール前で食い止めるために仲間と連携して動く。プレーエリアが自陣ゴールから近いため、一つのミスが失点につながることもあり、冷静沈着な判断と勇気あるプレーを常に必要とされるポジションだ。また戦術によっては、ディフェンダーがピッチをダイナミックに駆けあがって攻撃に参加し、得点につながるプレーをすることがあり、こちらは豊富なスタミナと俊足とを兼ね備えた選手が務める。

ミッドフィルダーは主にピッチのハーフウェイライン付近にポジションをとり、守備と攻撃の両方に関わってゲームメイクをする。守備的な動きが多く、相手の攻撃の芽を事前につぶすボランチ(守備的ミッドフィルダー)の働きは一見目立たないが重要だ。より相手ゴールに近いエリアでプレーする攻撃的ミッドフィルダーは、前のスペースを見つけて一発で通すスルーパスなど、華やかなプレーで観客を沸かせる。

フォワードは、自陣から仲間たちが運んで来たボールを相手ゴールに入れる「得点」を至上命題としているポジション。ゴール前での攻防は視聴者の目を集めるだけに、点が入れば大スターになるとともに、ここぞというときのシュートミスも観る者に大きな印象を与え、良くも悪くも目立つポジションといえる。

競技は1グループ4チーム総当たりのグループリーグを経て、上位2チームが決勝トーナメントに進み、メダルを争う。日中の屋外でハーフタイムを挟んで90分間走りっぱなしという競技の過酷さながら、アトランタ1996大会までは、競技をオリンピック期間に収めるために中1日で試合をこなしていた。

シドニー2000大会からは特例として、サッカーのみ開会式の前に競技開始することで選手の健康面に配慮しているが、それでも厳しい日程には変わりなく、交代選手の起用なども含め、いかにチームのコンディションを落とさずに連戦を戦い抜けるかについても、メダルを目指すためには大きな課題となる。

イラスト:けん

出典:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会