寒い季節がやってきました。そしてなぜか、決まって毎年のように冬に太る人は多いと思われます。「今年の冬こそは正月太りをしたくない」と考えている人もいるでしょう。もちろん、冬の長期休暇中に「食って寝て」を繰り返せば、太ってしまうことになります。でも、意外かもしれませんが、体のメカニズムとしては「冬こそダイエットに適した季節」なのです。その理由と効率的にダイエットをする方法を解説します。

  • 撮影場所協力/Chicken Gym(渋谷)

■冬の基礎代謝は夏に比べて5〜10%上がる

ダイエットの鍵を握るのは、体がエネルギーを消費する「代謝」です。代謝は、大きく3つにわけられます。まずは、「基礎代謝」。これは、なにもしなくても体の生命維持活動によって消費してくれるエネルギーです。ふたつ目が、「運動誘発性熱産生」というもので、運動をして体を動かすことによって消費されるエネルギーです。最後の3つ目が、「食事誘発性熱産生」と呼ばれるもの。食事をして内臓が働くこともエネルギーを消費する活動なのです。

重要なのは、それぞれの消費エネルギーの割合です。ふたつ目の運動誘発性熱産生については、もちろん運動量によって大きく変わりますが、だいたい1日の消費エネルギーの30%ほどを占めます。食事誘発性熱産生はわずか10%で、基礎代謝が消費するエネルギーは、なんと約60%に達します。このパーセンテージを前提に見ると、基礎代謝を上げることがダイエットの基本といえます。

では、なぜ「冬はダイエットに適した季節」といえるのでしょうか? その理由は、この基礎代謝が夏に比べて5〜10%も上がるからです。わたしたちの体は季節を問わず一定の体温を保とうとします。そのため、寒い冬はより多くのエネルギーを消費して体温を上げる必要が出てくる。そうして、基礎代謝が上がるというわけです。

■汗だくになることもない冬は運動をしやすい季節

加えて、冬には運動をしても夏のように汗だくになることもありませんから、運動を継続しやすいということもダイエットに向いている理由のひとつでしょう。夏の場合なら、すぐに汗だくになってバテてしまうので、運動をしたとしてもそれほど多くのエネルギーを消費していないケースも多いものです。

それに、夏の暑い盛りには、なかなか運動をする気分になりませんよね。でも、夏は「ひと駅分、歩いてみよう」なんて気にはならなくても、冬だったら「体も温まるしちょうどいいかも」なんて思えます。

そう考えると、冬に運動をするときには、室内でも温度を上げ過ぎないことが大切になります。極端にいえば、冬なのに暖房をガンガンに使って夏のような温度にしてしまえば、「基礎代謝が上がる」「運動を継続しやすい」という冬のメリットを失ってしまいます。

■冬の運動不足と暴飲暴食には要注意

ただ、そうはいっても、冬に太ってしまうという人はたくさんいます。その要因は、寒さからの外出不足によって運動量が減ってしまうことと、忘年会をはじめとしてイベントが多く暴飲暴食をしてしまうからです。

「猫はこたつで丸くなる」じゃありませんが、寒がりの人なら、冬には室内に引きこもりたくなるでしょう。たしかに、運動のために真冬の早朝に外出するのはつらいものです。でも、先にお伝えしたように、冬は本来運動をしやすい季節ですから、気温が上がってくる時間帯に運動をすることを心がけるといいと思います。

それこそ、今年の冬はダイエットに最適といえるかもしれません。というのも、新型コロナウイルスの感染拡大によって、暴飲暴食をしてしまいがちな忘年会などのイベントの自粛が予想されるからです。もちろん、自宅での食生活を乱してしまえば元も子もありません。

とくに、日常的に料理をしないシングルの人は要注意。冬の長期休暇中、自宅に引きこもってピザなどのデリバリーサービスばかり利用してしまっては、イベントに行かずとも太ってしまいます。

そして、もしどうしても出席しなければならないイベントがある場合には、アルコールと一緒に食べるものに注意してください。アルコールを摂取すると、体はアルコールを分解することを優先的に行います。そのため、先にも触れた、食べ物を分解して栄養素をとり出して熱をつくり出す食事誘発性熱産生があとまわしになる。

結果として、食べ物のエネルギーが体脂肪として体に蓄積しやすくなるのです。そうしないために、アルコールと一緒に食べるものは、脂質や糖質が少ないものを選ぶべきですね。

また、アルコールを口にする場合は、お酒自体に糖質が含まれない蒸留酒を選びましょう。ただ、そうはいってもウイスキーなど度数が高いものはなるべく避けてください。それもやはり、アルコールの分解を体が優先してしまうからです。もちろん、どんなお酒であっても、過剰に摂取することはNGです。

■筋肉量を増やし、冷えやむくみも解消する「カーフレイズ」

なにもしなくても基礎代謝が上がる冬ですが、ダイエットを考えるならやはり筋トレも大切。筋肉量が増えれば、それだけ基礎代謝が上がることはいうまでもありません。しかも、冬ならではの一石二鳥を狙いましょう。そんな家トレが、ふくらはぎを鍛える「カーフレイズ」です。

ふくらはぎは、「第2の心臓」とも呼ばれます。それは、下半身に送られた血液を重力に逆らって心臓に送り返す「筋ポンプ作用」という働きを持っているから。ふくらはぎを鍛えると、筋肉量が増えることはもちろん、筋ポンプ作用が高まることにより血行が促進されます。すると、血行不良による冷えやむくみという冬の悩みを解消することもできるのです。まさに、一石二鳥というわけです。

  • 壁や柱に手をついて、足を腰幅に開いて立つ。

  • かかとを上げてつま先立ちになる。その後、かかとを床ギリギリにまで下ろしていき、再びつま先立ちになる。1秒でかかとを上げて1秒で下ろすイメージで行う。30回×3セットを目安に。

かかとを上げてつま先立ちになる。その後、かかとを床ギリギリにまで下ろしていき、再びつま先立ちになる。1秒でかかとを上げて1秒で下ろすイメージで行う。30回×3セットを目安に。

■「鶏とショウガの炊き込みご飯」で体を温め、タンパク質を補給

ショウガには、ジンゲロールという血行を促進して体を温めてくれる働きを持つ辛味成分が含まれます。低脂質高タンパク食品の代表格である鶏むね肉と一緒に炊き込みご飯にすれば、冬の筋トレを補助する最適な一品となります。

【鶏とショウガの炊き込みごはん】
●エネルギー約344kcal タンパク質15g(ひとり分)
●使用する食材 (ふたり分) 白米1合、鶏むね肉100g、ショウガ1/2かけ、しょうゆ大さじ1、酒大さじ1、みりん大さじ1、塩小さじ1、水200ml、顆粒だし適量、万能ネギ

1.鶏むね肉を2cm角に切り、ショウガをせん切りにする。
2.すべての材料を炊飯器に入れて通常炊飯する。
3.炊き上がったら全体をさっくりと交ぜて、小口切りにしたネギを散らしてできあがり。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム)、清家茂樹(株式会社ESS) 写真/櫻井健司