長引くコロナ自粛により、スポーツや外出する機会はどうしても減少しがち。その一方で、ストレスから食事やアルコールの量はかえって増えていたりして、そろそろ今までの服がキツクなってきたという人も少なくないのでは? 糖質ダイエットに詳しい臨床医の宇佐見啓治先生が勧めるのは、無酸素運動の筋トレ法。

  • カギは血糖値のコントロール! 太りにくい体は無酸素運動でつくれ /糖尿病臨床医・宇佐見啓治

ダイエットなら有酸素運動じゃないの? というあなたのために宇佐見先生が理由を説明する。

太るだけじゃない! 運動不足のリスク

Q:運動不足が続くと、どんなリスクがありますか?

A:外出の機会が減ると、どうしても体を動かす機会が減少しますよね。私の医院がある福島県では、原発事故の後、子供たちが外で遊べなくなった影響で、運動不足になりがちでした。その結果、筋肉が弱って、糖質が体内に留まることによる肥満傾向が7~8年間続きました。地方の場合、日常的な移動手段がマイカーになっている点も、肥満を加速させたひとつの要因だと思います。

コロナの影響でこのまま運動不足が続けば、やはり人々の肥満傾向は進むでしょう。しかも、肥満になると、将来、糖尿病や高血圧、腎臓病といった病気を発症するリスクが一気に高まります。今のうちに手を打って、未来の自分の健康と洋服のサイズを守りたいものです。

太りにくい体を作るなら、有酸素運動より無酸素運動

Q:一般的に「痩せたいなら有酸素運動」と言われていますが?

A:一口に運動といっても大きく2種類あり、一つはウォーキングやジョギングなど、体をリズミカルに長時間動かすことにより脂肪を燃焼する「有酸素運動」。心臓や肺を鍛える効果があります。もう一つは、運動時のエネルギーを酸素ではなく糖から作り出す「無酸素運動」で、短時間に強い負荷がかかる筋トレや100mダッシュが代表例になります。筋肉をつける際に有効な運動です。

「ダイエットならやっぱり有酸素運動でしょ?」と思う方も多いと思いますが、私は無酸素運動をお勧めします。それぞれの運動の目的は大きく異なり、有酸素運動は「できるだけ少ないエネルギーで、遠くまで行ける体を作ること」です。鍛えれば鍛えるほどエネルギーを節約する能力が高まるため、油断した時に太りやすい体になります。

一方、無酸素運動は、筋肉量を増やして基礎代謝(呼吸、体温維持、循環など、生命維持のために最低限必要なエネルギーのこと)を高めることを目的としています。基礎代謝が高まればエネルギー消費量が増えますから、体は太りにくくなります。このため肥満予防としては、無酸素運動の方が適しているといえるでしょう。筋肉が増えれば見た目的にもバランスが良くなり、自分の体に自信がつく……といったおまけの効果も期待できます。

Q:無酸素運動を効率的に行うコツを教えてください。

A:大きな大筋群(大腿四頭筋、大胸筋、広背筋など)を鍛えることで筋肉量を増やし、基礎代謝を向上させることが効率的な方法です。特に、太もも前面の大腿四頭筋は、20歳を過ぎると他の部分に比べて急激に減ってしまいます。歩く、立ち上がるなど下半身のさまざまな動きに関わってくる重要な筋肉ですから、しっかり鍛えておきたいところです。

  • 『血糖値がみるみる下がる!7秒スクワット』(文響社 宇佐見啓治 著)P.31より

ちなみに、筋肉は糖質をエネルギー源としますから、筋肉を鍛え、増やすことは血糖値の上昇を抑制する効果も期待できます。高血糖もまた、肥満同様、糖尿病や高血圧、動脈硬化といったさまざまな病気のもと。そこで、手軽に誰でも筋肉を鍛えられる「7秒スクワット」を紹介します。

怠け者でも運動嫌いでも続けられる筋トレ「7秒スクワット」

Q:7秒スクワットのやり方を教えてください。

A:やり方は次の通りです。動作中は呼吸を止めず、下半身の筋肉を伸ばすことを意識して、ゆっくり行ってください。

(1) 両腕をまっすぐ前に出し、両足を肩幅よりも広げて立ちます。

(2) 5秒間かけてゆっくりと腰を落としていきます。

(3) 太ももが床と平行になったら静止し、2秒間キープしてから反動をつけずにゆっくりと立ち上がります。

これを10回1セットとして、1日3セット行います。また、筋トレを行うと筋肉は軽度の損傷を負いますから、毎日続けるのはNG。1~2日は休みを入れることで筋肉は修復され、より強く太く育っていきます。

Q:7秒スクワットに適した時間帯とかはあるのですか?

A:運動する時間帯としては、午前中は避けてください。交感神経系が優位のため血圧が上がりやすいと言われています。ベストなタイミングは血糖値が最も上がりやすい夕食後30分から1時間です。また、セットとセットの間は30秒から1分ほどの休みを入れ、3セットは続けてやるようにしてください。3セット続けてやっても20分ほどですから、テレビを見ながら気軽に行えます。