男性なら6つに割れたシックスパックの腹筋、女性であればうっすら縦にラインの入った引き締まったお腹――。誰もが一度は憧れたことがあるでしょう。トレーニングの世界では、「腹筋は台所でつくられる(Abs are built in the kitchen)」という言葉があります。これの意味するところは、筋肉をつけるにはなにを食べるのが大事かということ。とくに腹筋は、やみくもに筋トレを頑張っただけでは割ることはむずかしい箇所。

  • 「腹筋は台所でつくられる」。脂肪を落として腹を割れ! /パーソナルトレーナー、管理栄養士・西巻草太

    撮影場所協力/Chicken Gym(渋谷)

だからこそ、食事の摂り方を意識して体脂肪を減らすことが、割れた腹筋をつくるためには必須なのです。ちなみに、男性では15%以下、女性では20%以下の体脂肪率が腹筋のラインが見えてくる目安です。今回は、割れた腹筋を手に入れるためにするべき「家トレ」と、簡単な調理で糖質オフができると話題の食材「オートミール」を活用したレシピを紹介します。

思い出してほしい。あなたの腹筋は、もともと割れている!

これはみなさん聞いたことがあるかもしれませんが、腹筋(腹直筋)というのは、本来、誰もがもともと割れています。腹筋は恥骨から胸骨の剣状突起までつながる縦に長い筋肉を指しますが、途中で腱画と呼ばれる組織によって縦に2分割、横に3~4分割されています。そのため、誰でも腹筋は6~8個に割れているのです。そう、あなたの腹筋は、もともと割れています。

それなのに、なぜ腹筋が割れて見えないのか? ひとつは腹筋の上に脂肪が乗っているからで、もうひとつは腹筋の発達が単純に足りないから。ここで、もういちどいいます。「あなたの腹筋は割れている」のです。それがただ見えなくなってしまっただけ。つまり、シックスパックを手に入れるためには、腹筋のトレーニングと脂肪を落とすための食事管理の両方からのアプローチが必要になるということです。

「腹筋を鍛えればお腹の脂肪が落ちる」は間違い!

パーソナルトレーナーとして仕事をするなかでよく感じるのが、「腹筋のトレーニングをすればお腹の脂肪が落ちる」と認識しているクライアントさんが非常に多いこと。ほかの部位でもいえるのですが、トレーニングした部位の脂肪が燃焼されるわけではなく、脂肪の燃焼はトレーニングの強度に応じて全身で起っています。

腹筋はけっして大きな筋肉ではないので、トレーニングによるエネルギーの消費自体は多くありません。筋トレだけで部分痩せを目指すのではなく、引き締めたい部位の筋トレと食事管理を並行して行うことこそ、あなたが「目指したいカラダ」になる近道です。

ただ、腹筋に関していえば、たとえ6パックに割ることができなくても、筋肉がある程度つくことでお腹周りを引き締める効果は確実に得られます。腹筋が弱く緩んだ状態だと、内蔵の位置が下になってしまいお腹がポッコリでた体型になりやすいので要注意。腹筋を鍛えることで内蔵の位置が正常な位置に戻るので、筋トレだけでもある程度の引き締めは可能です。

腹直筋、腹斜筋の両方を鍛える強度の高い筋トレ「ロシアンツイスト」

家でもできる腹筋トレーニングとしておすすめなのが、ロシアンツイスト。腹直筋と腹斜筋どちらも鍛えることができるので、シックスパックを目指したい意欲的な人、もちろん、くびれたウエストを目指す人、どちらにもおすすめのトレーニングです。

腹筋の代表的なトレーニングであるシットアップやクランチでは、主に腹直筋というお腹の正面の筋肉だけに刺激が入ります。それに対してロシアンツイストは、お腹を丸めて腹直筋を収縮させたまま身体をひねるので、同時に腹斜筋にも強い刺激が入る少しレベルの高いトレーニング種目となります。そのぶん、お腹を引き締める効果は抜群です。

  • マットに座り、膝を軽く曲げて足を浮かせる。上半身は45度くらいの角度で後ろに倒し、手を身体の前で組む。

  • 足を浮かせたまま上半身を左右にひねる。ポイントは手だけ動かすのではなく肩を反対側にひねるようにして脇腹のひねりを意識すること。左右交互に20回×3セット行う。ペットボトルやダンベルを持って行うとさらに強度が上がるのでトライして。

主食を1日1食置き換えて簡単に糖質カット! オートミールの実力

体脂肪を落として割れた腹筋を目指すうえで気をつけてほしいのは、脂質よりも糖質の摂り方にあります。糖質を摂り過ぎたり、糖質に偏った食事だったりすると、食後に血糖値が急上昇しインスリンというホルモンがたくさん分泌されてしまい体脂肪が増える原因に。インスリンの過剰な分泌を抑えるためには、糖質の量を減らすのはもちろん大事。そしてなにより、食品のGI値を意識することが重要です。GI値とは、食後の血糖値の上がりやすさを示す数字で、その数字が高いほど血糖値の上がりやすい食べ物といえます。

そこで推薦したいのが、いま注目の食材であるオートミール。オートミールはオーツ麦という穀類を加工したものですが、食物繊維をはじめとしたさまざまな栄養が豊富で、GI値が非常に低いのが特徴です。たとえば、夕食のごはんをオートミールに変えるだけでダイエット効果が期待できます。

他にも、玄米やもち麦なども白米よりGI値が低くおすすめの食品ですが、オートミールは少量でも満腹感が得られるのが特徴。たとえば100gあたりのカロリーで比較すると、精白米100gの358kcalに対してオートミール100gは380kcalと意外にもオートミールのほうが高カロリーです。しかし「1食分」の量で比較した場合は、お茶碗1杯のごはん200gは約320kcal、オートミール1食分30gは114kcalとかなりカロリーも抑えることができます。

オートミールがダイエットに適しているのは、GI値が低いことに加え、オートミールに豊富に含まれる水溶性食物繊維が水をたくさん吸収するため、少ない量でも腹持ちがよく、ダイエット中の空腹感を感じにくいこともひとつの要因です。

「腹筋は台所でつくられる」。

本気で腹筋を割りたいならば、この言葉を思い出して、積極的にオートミールレシピを取り入れてほしいと思います。夢の実現のためには、メモを見える場所に貼るという手法がありますが、ぜひキッチンの見える場所にこの格言を貼っておいてください。

【オートミールトマトリゾット】

1. オートミール30gとノンオイルツナ缶70gを用意。トマトジュース200mlで3~5分煮る。

2. コンソメと塩コショウで味を整える。好みでオリーブオイルや粉チーズをかければできあがり。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/櫻井健司