海外にいると、日本の姿が違って見えてくる。日本食、カルチャー、トレンド、価値観……世界各地の目線から見える“ニッポンの今”とは? 現地在住ライターが、海外から“逆照射”される日本の面白さをお届けする連載、第12回のテーマは、「台湾でボンドロが爆発的人気」。
セーラームーンにたまごっち、たれぱんだにこげぱん……1990年代後半~2000年代初期に流行したアイテムやキャラクターが、日本でいま、再び脚光を浴びている。ブームの中核にいるのは、この時代(つまり平成初期~中期)に幼少期を過ごした女性たち、いわゆる「平成女児」である。
この「平成女児ブーム」を牽引しているアイテムの代表格が、シールだ。平成時代、女児たちは「シール交換」をすることでコミュニケーションスキルと交渉力を磨いた、といっても過言ではない。それほどまでに、シールは世の中に広く浸透していた。女児だけではない。やや時代は遡るが、ビックリマンシールが社会現象になり、世の中の男児たちがシール集めに夢中になっていたのも、昭和末期から平成初期の頃だった。
そして令和のいま、歴史は繰り返している。現在市場に出回っているシールの中で爆発的な人気を誇っているのが「ボンボンドロップシール」、通称「ボンドロ」だ。
■2,100万枚超を売り上げる大ヒット
ボンドロの日本での定価は税込み500円程度。1シートに約40個のシールがセットになっていて、平成時代に流行した「シール交換」ができるような仕様になっている。
樹脂コーティングによるぷっくりとした質感や、ラメ入りの層が重ねられた豪華かつアーティスティックな見た目が特徴。平成時代のシールと比べると、見た目も質感もかなり進化している。この懐かしさと新しさのミックス感が大きな反響を呼び、累計2,100万枚以上の売上を誇る異例の大ヒット商品となっている。
ボンドロの人気は日本国内に留まらない。実はこのブームは海を越え、台湾にも到来している。
■「若者の街」西門町で人気に火がつく
日本でのボンドロ人気にいち早く目をつけ、SNSで関連情報を発信している文具店が台北市内にある。台北市内で「若者の街」「アニメ・漫画文化の街」として知られる西門町に拠点を構える「文林文具」だ。
台湾の文具店はもともと日本の文具を非常にたくさん取り揃えているが、文林文具も例外ではない。店内には日本製の筆記用具やノートがずらりと並ぶ。また、文林文具のネットショップ上には「文具ファン必見のマストバイアイテム! 日本文具大賞」という特設ページが設けられており、2024年以降の日本文具大賞受賞アイテムが掲載されている。
文林文具のオーナーとして、日本の流行をウォッチし続けてきた陳氏は32歳だ。
国や性別は違えども、平成女児たちと同世代。ブームを牽引する世代である彼に、台湾でのボンドロ人気を解説してもらった。
■秋頃からじわじわと人気に
まず文林文具では、ボンドロをいつから、どこから仕入れているのか。
台湾におけるボンドロの輸入業者は「欣美勝國際有限公司」だ。1987年に設立された同社は事務用品を商材としており、サンスター文具(株)の台湾における代理店でもある。
文林文具では2025年9月頃から、欣美勝國際有限公司からボンドロを仕入れて販売している。販売価格は1シート175元(約875円)。
「当店が扱っている台湾製のシールの値段は、40元~50元前後です。それらと比べると、ボンドロは4倍近い値段になります。価格競争力が乏しいので、当初は販売が芳しくありませんでした。ですが、去年の11月頃から人気が出てきて、12月頃には、台湾人だけでなく日本人の購入者も目立つようになってきました」と陳氏。
同店でのボンドロの主な購入者は中学生から20代の女性。日本と違って小学生は少ないという。また、日本と違い、台湾には「シール交換」の文化はない。なぜシール交換の文化がないのか。
「日本は、シール交換のためのアイテムが充実しています。例えば、クリアタイプのシール帳。台湾では流通していません。類似品はありますが台紙が貧弱なので、たくさんのシールを貼り付けるのには適していません。このような背景もあって、シール交換が文化として根付かなかったのだと思います」
価格的な要素も影響しているという。ボンドロは高価なシールであるため、台湾ではあくまでも自分で使うためのデコレーションパーツとして購入されている。携帯ケースやiPadケース(もしくは本体)を、ボンドロで思い思いに「デコる」のだそうだ。
日本から同店にシールを買いに来る人は増えているのか。
「肌感覚ですが、日本人のお客様は増えています。日本で発売されたものが台湾の店頭に並ぶまでには、1~2か月程度の時差がある。このため、日本で完売となってしまったシリーズが、台湾では新発売となることもあります。日本のお客様には『日本では買えなかった』と喜ばれることもあります」
陳氏によると、文林文具におけるボンドロの購入者層は、日本人と台湾人が約半数ずつとのこと。陳氏の発言を裏付けるかのように、取材をしていた30分程度の間にも、日本人のお客様数組が興奮気味にボンドロに手を伸ばしていた。
■台湾での人気デザインは
陳氏からの発言で興味深かったのは「台湾でシール交換の文化がないのは、シール帳がないから」という点だ。関連産業の成熟度合いが、その国・地域でのブームの方向性に少なからぬ影響を与えている。
台湾でボンドロを販売しているのは文林文具だけではない。日系の大規模小売店や、セブンイレブンなどのコンビニエンスストアでも販売されている。よく目にするのは、台湾でも人気の「ちいかわ」や「サンリオ」のシリーズ。売られている店舗はランダムで、神出鬼没。都市部から離れた街のセブンイレブンで見かけることもある。台湾に来たときには、宝探し感覚で探してみるのも楽しいかもしれない。
海を越えたボンドロが、日本発祥のキャラクターを台湾に広める役割を担い、日本から台湾への送客という経済効果も生み出している。日本とは異なる形で広がり始めている台湾のシール文化。“平成女児ブーム”は、海を越えて新たな進化を見せているようだ。






