前回は後払いサービスについて解説いたしました。今回はレベニュー・ベースド・ファイナンス(以下、RBF)について再び取り上げます。RBFは売上高の将来予測をもとに資金の提供を受け、実際に獲得した売上高を以って資金を返却していく資金繰りの枠組みです。企業間取引における掛売りと比較して売掛金の回収を早期化できることがメリット、対価として財務コストが増加することがデメリットと言えます。

日本におけるRBFは、民法第466条の6に規定されている将来債権の譲渡性を根拠に契約が締結されるケースが多いです。商品の継続販売やサービスの継続利用が見込まれる可能性の高いビジネスをリカーリング・ビジネスと呼び、レベニュー・ベースド・ファイナンスはリカーリング・ビジネスと相性が良いとされています。Flex CapitalのブランドでRBFを運営している株式会社Fivotに話を伺いました。

Flex CapitalのRBFサービスでは、2024年9月時点で100万円から最大5,000万円までの資金供給を受けることができます。過去の売上をはじめとした財務データや販売・決済データから予測される将来の推移によって、支援金額と支払期間を決めています。年商約1,000万円の規模の企業からの申し込みも受け付けており、赤字・債務超過であっても審査しているので、スタートアップのシード・アーリー期や成長中の中小企業も対象になります。 契約条件として担保・保証は不要で、支払期間(融資における返済期間に相当)は6か月から12か月、手数料は元本に対して5%から12%の水準になります。審査時の提出資料は会計・入出金データのAPI連携もしくはCSVデータのみで、他の資金調達手段と比較して簡素です。審査期間は最大で2週間です。12か月後までの将来売上高を現金化するときは、支払期間も12か月に設定します。

利用企業の代表的な契約内容のイメージとして、支払期間10か月で1,000万円の資金提供を受けるケースが多いです。SaaSやECなど、仕入・広告宣伝費の多額の出費が売上高の入金に先行するタイプの事業を営む企業や、エクイティファイナンスするためのリードタイムを十分に確保するためにキャッシュポジションを上げてランウェイをコントロールしたい企業に人気があります。

同業他社と比較したときのFlex Capitalの強みは、幅広いステージやニーズに合わせた商品を提供可能なことで、ベンチャーデットのサービスも提供しています。主な対象はアーリーからミドルステージの企業で、最長3年最大3億円の融資実績があります。エクイティキッカーのある「転換社債」「新株予約権付き融資」の形態は用いないポリシーで運用しており、過剰なコベナンツ条項(財務制限条項)も設定しない方針です。審査時の提出資料と審査期間はRBFと同等で、申込企業側の事務負担が最小化されています。

ベンチャーデットの取引実績がある企業の年商規模は数億円から最大で20億円までです。金額は3,000万円から3億円、返済期間は12か月から36か月、融資実行時に支払うアップフロントフィーは2%から6%、融資金利は年率で3%から8%の範囲の契約条件です。RBFとベンチャーデットを併用している企業の事例もあり、事業進捗やステージの進行に伴ってRBFからベンチャーデットへとFlex Capitalが提供する商品が変わるケースが多いです。過渡期に2商品を併用している状態になります。

Flex Capitalが提供しているRBFサービスの紹介は以上です。次回は災害発生時の融資について情報を整理いたします。

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