決まった住所を持たず、日本中を旅しながら生活しているカメラマンの南谷有美(なんや・ゆみ)さん。訪れた地域では人々とどのように交流し、どんな仕事をしてきたのか。それぞれの地域の魅力についても綴っていただきます。


コワーキングスペース、ビジネスホテル、旅館、ゲストハウスなど、テレワークに適した場所という記事を以前ご紹介しました。今回、この4カ所のどれにも当てはまらない第5の場所を見つけてしまいました。その名も「お寺ワーク」。お寺でテレワークをするというものです。

お寺ワークとは

お寺ワークとはどのような取り組みなのか、興味を持った私は早速問い合わせてみることにしました。

お寺ワークを運営しているのは、お寺ステイを運営する株式会社シェアウィング。

2017年9月に1拠点目となるTemple Hotel高山善光寺を開業して以降、東京都港区の正伝寺、群馬県桐生市の観音院、山梨県身延町の端場坊、和歌山県東牟婁郡の大泰寺の5拠点でサービスを展開されています。

「ココロとカラダを調える場とサービスを日本から世界に広げ、健康で幸せな人を増やす」ということを目標に、お寺での滞在・体験を通したサービスに力を入れているそうです。

お寺ワークに行ってきました

百聞は一見に如かずということで、実際にお寺ワークに行ってきました。今回は、岐阜県高山市にある高山善光寺にて体験してきました。

  • 「お寺ワークのスケジュール」

他の宿泊施設とは一味違う、お寺ならではの取り組みも多数見られました。時系列でその内容をご紹介します。

1日目

<到着>

高山の閑静な街並みの中にある善光寺。高山駅から徒歩5分と、公共交通機関でも行きやすい点が特徴です。私は車を駐車場に停め、早速入口へと向かいました。

  • 高山善光寺本堂。趣があります

  • 宿坊の入口はこちらです

<チェックイン>

そこでは、僧侶の山本海史さんが笑顔で迎えてくださいました。チェックインをし、プランの説明や館内設備の紹介を受けてから中に入ると、宿坊内は予想以上にきれいで、驚きました。

  • 僧侶の山本海史さん。2日間よろしくお願いします

  • 宿泊した部屋。花見の間

  • 仏様もいらっしゃいました

  • 廊下にも風情を感じます

<テレワーク>

一息ついたところで、早速テレワーク。本堂を含め、どこで仕事をしても良いとのことでした。私は、電源が近くにあって見渡しがいい、キッチンスペースで仕事を行いました。

  • キッチンスペース。静かで仕事も捗ります

  • オリジナルコーヒーも楽しめます

<写経>

お寺ワークの最大の魅力が、仕事の合間に寺ならではのアクティビティが体験できること。ヨガ、座禅、着物、戒壇めぐりなどさまざまなプランがあります。私は、その中で一番興味を持った写経を体験しました。

写経とは1300年前から続く、仏様の教えを書き写す修行のことです。願い事を先に決め、それを浮かべながら書きます。書き進める中で感じる心の動きに着目すると良いそうです。

  • いざ、実践

  • 無事に書き上げました

自分的にはあまり上手に書けなかったと感じましたが、「丁寧に書けていますね」と言って頂きました。意外にも私は完璧主義で、もっと自分を許してあげることも大切だなと感じました。

2日目

<朝勤行>

毎朝7時からの30分は、朝勤行が行われます。僧侶が読経を行うというもので、宿泊客だけではなく誰でも参加することができるそうです。

朝から、響きわたる鐘の音と読経。穏やかな気分で1日がスタートしました。

  • 朝7時、響きわたる鐘の音

  • 読経開始

  • 心が穏やかになります

<テレワーク>

朝勤行後は、そのままテレワーク。早起きは三文の徳という言葉通り、時間を有効に活用することができました。修行を通して心が少しきれいになったおかげか、仕事も捗りました。

  • ロビーでもテレワークをすることができます

<チェックアウト>

名残惜しくも、16:00チェックアウト。素敵な環境の中で集中して仕事に取り組むことができました。2日間、お世話になりました。

  • 2日間ありがとうございました

お寺ワークをしてみた感想

「お寺ワークって何だろう。ダジャレみたいで面白そう!」と、半ば興味本位で問い合わせてみましたが、実際に体験してみると本当に理にかなったサービスだなと感じました。

テレワークをする上で大切になってくるのは、自分軸。自分自身を律することが大切になってきます。

今までは会社に行けばみんなが仕事をしていて、それを見て「あ。私も仕事しなきゃ」という想いになっていたという方も多いのではないでしょうか。

しかしテレワークが普及してそういった環境がなくなってしまった今、自身で自分の生活を作り上げていくことが大切になってきます。

お寺では、朝勤行を始めとし規則正しい生活が送れるようになっています。そして何より、自分自身の心を見つめ直す時間を持つことができます。仏教の教えを元に、よりよく生きるための術を手に入れることも可能です。

まだまだ拠点は少ないお寺ワークですが他サービスでは得られない付加価値から、問い合わせが増えているそうです。テレワークをしたい人はもちろん、自分自身を見つめ直してみたいという方にもおすすめしたいサービスです。

今回は、テレワークの新しい可能性であるお寺ワークについてご紹介しました。自分と自分、人と人を繋ぐ素敵なサービスでした。興味のある方は是非体験してみてくださいね。私もまた伺いたいと思います。

南谷有美(なんや・ゆみ)

カメラマン/ライター
2018年4月に認可外保育園の園長を退いてから、各地を巡る旅人に。リモートで仕事をしながら、好きな場所で好きなことをして生活しています。