決まった住所を持たず、日本中を旅しながら生活しているカメラマンの南谷有美(なんや・ゆみ)さん。訪れた地域では人々とどのように交流し、どんな仕事をしてきたのか。それぞれの地域の魅力についても綴っていただきます。
長野県といえば、テレワークやワーケーションなどに力を入れていることでも有名で、各所でさまざまな取り組みがされています。
その中で今回ご紹介したいのが、松本市にあるコワーキングスペース「SWEET WORK」。パン屋さんが運営しているちょっと変わったお店です。お店の立ち上げ理由や思いについて、同店でコミュニティマネージャーをしている河西佳代さんにお話を伺いました。
シアトルで見つけた、新しいコワーキングスペースの形
このコワーキングスペースを運営しているのは、長野県松本市でパンを製造・販売している「SWEET」というお店。現在は日本に拠点を置いていますが、創業はアメリカ・シアトルで、1913年から続く老舗のパン屋さんです。
同店の4代目とは、もともと家族ぐるみのお付き合いがあった河西さん。2013年、お店の100周年を記念して一緒に何か新しいことをしたいと考えていました。そんなときに訪れたシアトルのコワーキングスペース、その形にとても感銘を受けたといいます。
コワーキングスペースというと、それぞれがパソコンに向かって作業をしているというイメージを持っているという方も多いと思いますが、シアトルのコワーキングスペースは一味違ったようです。
「スナックタイム」「弁当タイム」などホッと一息をつける時間が設けられていたり、「経理を一緒にする日」などがあったりと、フリーランスにとってうれしいイベントもあったそう。
そのシアトルでの体験をもとに構想を膨らませ、2017年10月末にコワーキングスペース「SWEET WORK」が誕生したといいます。
パンもドリンクも無料! 驚きのサービス
首都圏はオフィスの代わりに使われることが多いコワーキングスペースですが、地方の場合はまだまだ自宅で作業している方も多いのが現状です。
自宅ではなく、「SWEET WORK」だからこそできることをはっきりと提示する必要があると考えた河西さん。提供できるメリットの一つとして、「フリーパン、フリードリンク」を導入しています。
ロスパンや試作パンなどを活用し、自由に食べられるパンを提供しているそうで、このパンを楽しみに来ている方も少なくないだろうと思います。バリエーションも豊富で、選ぶのに迷ってしまいそうです。
こんな人もいるの? 個性豊かな利用者たち
私も経験しているのですが、フリーランスとして自宅で作業をしている方は「今日1日誰とも会話しなかった」という日が生まれがちです。そのため、もう一つの取り組みとして「人と人を繋げること」を意識されているそう。講演会や勉強会などを開催し、フリーランスが交流できる場を積極的に提供しています。
実際ここに来てみると、自然と人に出会うことができますし、何気ない雑談や今後の仕事に繋がる真剣な議論まで、さまざまなところで話に花が咲いていました。「SWEET WORK」にはどんな人がいるんだろうと気になる方もいると思うので、少しご紹介します。
プログラマー 後藤良輔さん
株式会社オズビジョンの研究開発部門に所属して、リモートワークをされています。AIの研究開発やソフトウェアの設計や開発などの仕事をしています。
フロントエンドエンジニア 占部紘さん
Web制作に携わっています。WordPressにも精通していて、2019年5月には共同で本も出版されています。
Webディレクター 筒木愛美さん
東京・松本の2拠点で活動されています。企業の広報や自治体のSNS運用などを行っています。
番外編
何と、利用者の中にお子さまがいることも。休みの日には、学生さんが宿題に取り組む姿も見られるそうです。
フリーランスの懸け橋に
松本駅から徒歩12分、松本城からは徒歩5分の場所に位置する「SWEET WORK」。1階にはベーカリー・オープンカフェも併設しているほか、パワースポットとしても有名な四柱神社も近いそうです。
「これからもたくさんの人と人を繋ぐ存在でありたい」と河西さん。お手軽なドロップインもあるとのこと、観光がてら、立ち寄ってみるのも楽しいかもしれません。
●Information
「SWEET WORK」
住所: 長野県松本市大手4-1-13 スイート縄手本店3階
アクセス: 松本駅から徒歩12分、松本城からは徒歩5分
営業時間: 平日9時~19時
定休日: 土日祝日・年末年始
南谷有美(なんや・ゆみ)
カメラマン/ライター
2018年4月に認可外保育園の園長を退いてから、各地を巡る旅人に。リモートで仕事をしながら、好きな場所で好きなことをして生活しています。