連載「ワーママのモヤモヤ整理します」は、託児付きランチサービス「ここるく」の経営者で、育休復帰・働き方改革のコンサルティ ングも手掛ける山下真実さんが、ワーママが抱えるモヤモヤを整理・解消に導いていく企画です。

2回目のモヤモヤ整理は、最近職場で昇進をしたという1児の母、もえさんが主人公。ビジネスパーソンとして成功し、これからますます活躍したいという思いはあるものの、子どもと過ごす時間が少ないことにモヤモヤとした思いを抱えているといいます。

  • 仕事は楽しい、でも、子どもと過ごす時間が少なくなっているのは気になる...※画像はイメージ

【今回の相談者】

もえさん(34歳) 3年前に出産し、復職後は人事部で勤怠管理などの業務に携わる。最近昇進をし、採用責任者となった。ビジネスパーソンとして成功したいという思いのもと、仕事にまい進する日々を送るが、 3歳の息子さんと過ごす時間が少ないことに、モヤモヤとした思いを抱えている。

今の生活には満足...でも、子どもに見えない負担をかけているかも

山下さん: 「息子さんと過ごす時間が少ないということですが、今はどのような働き方をしているんですか?」

もえさん: 「フルタイム勤務で20時に子どもをお迎えに行くまで残業をしています。保育園では18時半に夕食も出しても らえるので、ありがたく利用させてもらっています」

「復職したばかりの頃は9~15時の時短勤務だったのですが、息子が2歳の頃、ある日保育園へお迎えに行ったら『もう来たの?』って顔をされまして....。保育園で過ごすのが大好きで、もっと遊びたいと思っているようでした。息子は保育園で遊びたい、私はもっと仕事をしたい、お互いにとってWin-Winだと感じて、時短勤務をやめました

山下さん: 「あまりモヤモヤしていないような気がしますが....?」



もえさん: 「私はビジネスパーソンとして成功したいという思いがあるし、息子も保育園が好きだから保育園に長時間預けていることについては、何も思っていません。ただ、お迎えに行ってから寝るまでの時間がすごく短いし、とはいえ就寝時間は22時くらいと遅くなってしまうので、息子に見えない負担をかけているのではないかと考えてしまいます

「それから夕食を作ってあげなくていいのかな、一緒に食べなくていいのかな、という思いもありますね。母からも、 『夕食くらい作ったら?』と言われることがあって。私が夕食を作っていないこと、母親の味がない、ということが気に なって」


山下さん: 「一緒に過ごす時間が短くて、寂しい気持ちになることはありますか?」


もえさん: 「息子とは信頼関係が築けていると思いますし、お迎えの後は保育園で楽しかったことをたくさん話してくれますし.....寂しい気持ちはあまりないですね。教育的観点から、大丈夫なのかなぁ、ずっとこんな生活でいいのかなぁと考えてしまいます」


我が家のルールを明確にしよう

山下さん: 「今日はお子さんと一緒に来てくださっていますね。お子さんの様子を見ていても、とてものびのびとされているし、お話を聞いていて、育つ環境として問題があるようにも感じません。もえさんの子育てという意味では、うまくいっていると思うんですよね。社会の目というか、もえさんのご家庭のルールと違うところの、外部のルールが持ち込まれたときに、モヤモヤしてしまうのではないでしょうか

「今の生活に自分も納得していて、子どもも納得している様子を感じられている。病気がちだったり、寝不足で日中の保育園で無気力な様子だったり等、体調面で気になることもないんですよね?」


もえさん: 「そうですね、元気に過ごしてくれています」


山下さん: 「もえさんがルール設定できる家庭の中ではうまくいっているなら、『家庭の外にあるルール』との折り合いをどうつけるかにフォーカスしましょう。例えばもえさんも、就寝時間が遅くなることや家庭での食事の在り方については、周囲の意見を聞くとどこか迷ってしまう。とはいえ、現状としての生活はうまく回っているわけですから、その上で就寝時間や家庭での食事を見直すべきか、つまりそれらを『変えるべきコト』と決めるかどうかがポイントになってきます。そこを自分で決めてほしいなと」

「『一般的には手作りの夕食を親子で食べる家庭が多いけれど、我が家は保育園でお世話になる』『子どもが小さいうちは時短勤務を選ぶ女性が多いけれど、私は残業する』といったように、一個一個『我が家のルールはこれ』『外のルールと違っても気にしない』と自分の中で振り分けていくと、気持ちが揺れづらくなるのではないでしょうか


時代で変わる「子育てはこうあるべき」に振り回されないで

山下さん: 「実は私、どちらかというと子どもと過ごす時間が少ないと寂しいと感じるタイプでした。私が長女を産んだ のは、金融コンサルでバリバリと仕事をしていた時期で、娘が生後4カ月のときに復職したのですが、19時には寝てしま う娘とほっこりとした時間を過ごせるのは1日10分くらい。それがすごく寂しくて、私は働き方を柔軟にした方がいいと思い、起業に至りました。でもそれも、本人どうし(もえさんの場合はもえさんと息子さん)に寂しい気持ちがないのであれば、無理して同じように早く帰る必要もないのかなと思います

「もしかしたらもえさんのご家庭に対して、子どもが不幸だ、かわいそうだと言う人もいるかもしれません。でも、す ごくロングスパンで考えると、親だけが子育ての中心にいる時代って歴史的に見てもそんなに長くありません。例えば夏の稲刈りの時期は、地域の人が順番で子育てを担っていたりしたわけで...。そもそも、親、ましてや母親だけが中心となって子育てを100%担うというのは無理があると思うんですよね

「今の生活を続けて、例えば子どもが体調を崩したり、『たまにはママに早く迎えにきてほしい』と言われたりしたら、ガーンとくるかもしれない。でもそのときは、『今、どこのルールが変わろうとしているんだっけ?』と整理できれ ば、問題ないと思います。社会のルールは時代と共に変わるけれど、家庭の中のルールは変わらない。でも家族の誰かの事情によって、変わることもある。そう思っておくと、モヤモヤせずに済むのではないかな」


もえさん: 「そうですね、なんとなく『このやり方で進んでしまおう』と今のライフスタイルを築いてしまっていたの で、モヤモヤしたのかもしれません。ルールとして明確化してみたいと思います。私は産休・育休を1年半いただいたのですが、その間、息子と濃密な時間を過ごしたという思いがあって.....息子との信頼関係に自信を持って、今の生活を楽 しんでいきたいです」


山下さん: 「ルールとして明確にできていなかったと言うけれど、自分の中で自然と整理できていたんだと思いますよ、だからきっともえさんは、処理能力が高いのね! 今のもえさんのご家庭の生活に、ぜひ自信を持ってくださいね」


山下真実

株式会社ここるく 代表取締役・社会起業家・2児の母
米国留学によるMBA取得、米系投資銀行・金融コンサルを経て、ママになったことをきっかけに子育て支援という全くの新領域へ。人気レストランから選べる託児付きランチサービス「ここるく」を2013年にスタート。サービスを通じて集まる働くママのインサイトと、MBA・コンサルで得た専門知識の両面から、ママ向けサービス開発や育休復帰・働き方改革コンサルティングなども手掛ける。
『第14回女性起業家大賞』、三菱UFJ銀行主催『Rise Up Festa』最優秀賞受賞。