連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。
サラリーマンの能力開発やスキルアップを支援する国の仕組み
サラリーマンの給与からは、「雇用保険料」が天引きされています。「雇用保険」というと、失業したときに受け取れる「失業手当」を連想する方が多いかもしれません。しかし、雇用保険の役割はそれだけではありません。「教育訓練給付制度」も雇用保険の仕組みのひとつです。
サラリーマンが自発的に能力開発やスキルアップ、キャリアアップ、キャリアチェンジなどを図りたいと思って教育訓練の受講をしたときに、支払った費用の一部が支給される国の仕組みが「教育訓練給付制度」です。
能力開発やスキルアップのための教育、研修は、勤務先で実施される場合もあるでしょう。しかし、それらは現在の仕事に直接関係のあるコンテンツが多いのではないでしょうか。また、受講が強制されることもあるでしょう。
教育訓練給付制度は、自費で自発的、主体的に受講する場合に、経済的な援助を国が行うものです。なお、受講できる講座や学校は、国によって指定されています。そのため、この制度の適用を受けるには、指定されたものの中から選択しなければなりません。
給付金の種類には、「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」の2種類があります。「一般」は、語学検定や情報処理検定、あるいは税理士や社会保険労務士、介護福祉士などの専門的サービス等の資格取得講座など、教育訓練期間が比較的短いものが対象になっています。
一方「専門実践」は、看護師や美容師、保育士などの養成施設の課程で教育訓練期間が1年以上3年以内の長期的に渡るものが対象になっています。興味がある方は、ハローワークのサイトに検索ができるページがあるため、どんな講座があるか確認してみてください。
「一般」と「専門実践」とでは、そのほかにも支給対象者や支給額などに違いがあります。
支給対象者や支給額は?
一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付金の支給対象者や支給額について、現在サラリーマンの方で初めて給付金の支給を受けようとする方のケースを下の表に簡単にまとめてみました。なお、これら以外にも条件が定められていますので、詳細はハローワークに確認をしてください。
退職した方も一定の要件を満たせば対象に
講座を受けたときに既に退職しており、雇用保険に加入していない場合でも、一定の要件を満たせば、支給対象者になることができます。
「一般」も「専門実践」も、退職後1年以内に受講を開始することが条件です。かつ、初めて給付金を受けようとする人について、「一般」の場合は退職前に1年以上、「専門実践」の場合は退職前に2年以上、同じ会社に勤務していることが必要です。
支給額について、「一般」は上の表と同じです。「専門実践」は教育訓練施設に払った教育訓練経費の50%相当額です(3年の場合の限度額は120万円、2年は80万円、1年は40万円、4,000円未満は支給なし)。ただし、受講終了後に資格等を取得し、1年以内に再就職して雇用保険に加入した場合は、上の表と同じになります。
また、初めて専門実践教育訓練(通信制、夜間制を除く)を受講する方で、受講をスタートするときに45歳未満など一定の要件を満たす方が、受講をしている間失業状態にある場合、失業手当を受けられない期間に「教育訓練支援給付金」を受けることができます。金額は失業手当の日額の80%相当額です(2022年3月31日まで)。
2回目、あるいは、3回目など、複数回教育訓練給付を受ける場合は支給要件が異なります。ハローワークで確認してください。
手続きはハローワークで
サラリーマンの方も、給付金の申請手続きは、会社ではなく、直接自分の住まいの最寄りのハローワークに出向く必要があります。
様々な書類を提出する必要があります。また、申請期間なども細かく定められていますので、事前にハローワークのサイトなどで確認をしてみてください。
社会人になって、自分が興味・関心を持ったことを主体的に学ぶことは、とても楽しいものです。せっかく雇用保険料の負担をしているのですから、能力開発やスキルアップを目指して、この制度を活用してみてはいかがでしょうか。
執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)
「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)
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