「休むも相場」、有名な相場の格言です。

相場は「売る」「買う」「休む」の3つから成り立っています。相場のかかわりが長くなるほどに、休むことの重要さを痛感させられます。

休むことが利益を生み出す

ニューヨークにいたときの体験で、FED(ニューヨーク連銀)の突然のドル売り介入により相場が急落し、たまたま大口のショート(ドルの売り持ち)を上司も私も持っていたため、大儲けをしたことがありました。

そのとき、上司が「こんなラッキーなことはないから、すべて利食ってしまおう」ということになり、早速、すべて買い戻したことがありました。時季は、2月の半ばだったと思いますが、この大儲けで半期の目標もクリアしてしまったため、3月末の本決算までトレーディングはお休みすることになり、その間に日本のお客様を訪問したりして過ごしました。 そうして、頭をリフレッシュさせることができた上に、せっかくの儲けもキープすることができました。

あれが、介入の翌日も欲をかいてショートを持ち続けていたらどうなっていたでしょう。マーケットはFEDが売ってきたのだから売るしかないと売り上がってしまったために、相場は大きくショートに偏ってしまい、全戻し(下げた分を全部戻す)となり、利益は単なる絵に描いた餅となるところでした。

欲もほどほどにして休むことも、ある意味、利益を生み出していることになるのではないかと思います。

トレーディングにはメリハリが必要(画像はイメージ)

レンジ相場でも休むことは大切

最近の相場がそうであるように、レンジ相場においても、休むことは実に大事なことです。なぜなら、レンジ相場でも乱高下し、しかも、意外とレンジ相場に入っていることに気づかず、相場が上がれば買い、下がれば売りを、何回か繰り返すだけで、大きな損失を被ることがあるからです。

まずは、今の相場がトレンド相場か、レンジ相場かを判断する必要があります。この見極めは、トレンド相場のときと同じようなトレーディングを連続してやって3回損が続いたら、それは、今までの一方向に向かうトレンド相場から、上下動を繰り返すレンジ相場に、相場が移行していると見るべきかと思います。

レンジ相場だと判断したら、少なくとも、常時相場に出るのではなく、出るにしても、よほど考えてからするか、でなければ、休むことです。

「儲け損なう恐怖」とは?

相場心理で、「儲け損なう恐怖」というものがあります。恐怖と言えば、損する恐怖もあります。これはストップロスを入れておけば、割り切れますが、儲け損なう恐怖は、大変タチが悪いものです。「この相場に乗り切れなければ、後がない」と自分で自分を煽り立て、その結果、儲け損なう恐怖から、相場に飛び込んでしまった挙げ句、損をするというものです。

この儲け損なう恐怖は、レンジ相場では往々にしておきます。なぜなら、レンジ相場は、思わせぶりな値動きが多く、思わずムラムラっとして、相場に飛び込み、返り討ちにあうことが多いからです。ですので、レンジ相場で気をつけなければならないのは、損する恐怖で飛び込むことを意識的にせず、むしろ休むことに徹することです。

これは、レンジ相場だけでなくトレンド相場でも言えることですが、「ライオンになること」が必要です。獲物がいるときは果敢にしとめる一方、獲物がいなければ横たわり体力の消耗を抑えるべきです。このメリハリが、トレーディングには必要です。のべつ幕なしに相場に入っていると、視野が狭まり、大局的に相場を見通すことができなくなることが結構あります。それだけに、あえて、休むときを設けて、視野を広げ、そして何よりも、気力、体力を充実させることが重要です。

なお、往年の株の大相場師、是川銀蔵翁の言葉に、「よく寝ること」とあります。これは、24時間相場である為替市場のためにあるような言葉ですが、ちゃんと割り切って、睡眠時間を確保することが大切なのです。

※画像は本文とは関係ありません。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売される。詳しくはこちら