相場には、ビギナーズ用の相場も、中上級者向けの相場も、また、プロ専用の相場も、アマ専用の相場もありません。

つまり、すべてが、同じひとつの相場の上で戦っています。

ですから、自分は初心者だからと思っていても、マーケットはそんなことを知る訳もなく、容赦なく攻めてきます。

つまり、「初心者だから」は、マーケットでは通用しません。

むしろ、初心者とわかれば、弱みにつけこまれることになります。

今回は、そんなお話です。

私が、ロンドンで、ディーリングの世界に入ってしばらくした、まだ駆け出しの頃、スワップディーラーとなりました。

スワップとは、FXで毎日のポジションをキャリーするために行うあのスワップ取引ですが、トレードとしてのスワップ取引は、2国間の金利差の拡大縮小を予測してポジションを張るもので、期間を、1営業日ではなく、もっと長く、大体6カ月物にしていました。

スワップの値動きは、スポット、いわゆるFXより狭いため、期待利益を大きくするため、取引金額をFXの数十倍、数百倍にしてやっていました。

このスワップのブローカー(仲介業者)を介して、ふたつの米銀のイギリス人ディーラーふたりと親しくなり、パブで一緒に飲んだりしました。

しかし、彼らは、稼げると思えば、誰からも徹底して稼ごうと思っているプロでした。

ある日、ブローカーからマーケットをサポートしてほしいと頼まれました。

マーケットをサポートするとは、マーケットメイクとも言いますが、銀行がブローカーにプライスを出して、マーケットを作り出して、それを呼び水にして、取引を活発化させることです。

その時、私は、ドル/円の翌日物から1年物まで、各ターム(期間)のオファーとビッド(売りと買い)、両サイドのプライスをブローカーに提示し、ブローカーは他の銀行に伝えました。

そうしたところ、特別何が起きたわけではないのに、突然ブローカーに預けた私のプライスのオファーサイド(売りサイド)が、たちどころにすべて他行に叩かれてしまいました。

ネームチェック(相手銀行へのクレジットライン(信用許容枠)のチェック)もありましたので、相手銀行のネーム(名前)を聞いたところ、あのパブで一緒に飲んだふたりの銀行2行でした。

そして、相場はさらにアゲンスト(不利)になり、やむなく、手持ちのポジションをすべて投げました。

そして、またネームを聞いたら、またあのふたりの銀行2行で、何のことはない、あのふたりに貢いでいました。

まんまと、あのふたりとブローカーにはめられたわけです。

彼らは、さぞやほくそ笑んでいることだろうと思うと癪に障りました。

そして、必ず強くなってやると、心に誓いました。

それから、2年後、東京に戻った私は、経験も積み、しかも東京という大所帯で取り扱うボリュームが格段に増えました。

あるスワップ取引で、世界中を相手に、ひとりで完全に流れを止めたことがあり、あのロンドンの米系銀行のふたりも、あいつかと言っていたそうです。

こうした臆面もなく、隙あれば、付けこもうとするところは、海外では決して珍しいことではなく、結局、油断せずに見構えていることが、常に必要です。

言ってみれば、隙を見せたほうが悪いぐらいのものです。

このように、マーケットは、非情です。

強い者に食べられたくなければ、自らが強くなるしかありません。

やさしい空気に包まれた日本で、生まれ育っているだけに、意識しておく必要があります。