マーケットでなにが起きているかチャートから読み取ることは、相場を生き抜いていく上で、大変重要です。チャートから読み取れる海外勢・ビッグプレーヤーの動きについてお話ししてみたいと思います。

まず、申し上げておきたいことは、リーマンショック以降、コンプライアンス(法令順守)が厳しくなり、直接的な情報入手が極めて難しくなっています。 そのため、チャートや値動きから、マーケットで何がおきているかを読み取ることが大変重要になります。

コールオーダー

例として、特にユーロ/ドルで見受けられるコールオーダーについてお話ししたいと思います。このチャートは、ユーロ/ドルの1時間足チャートです。

  • ユーロ/ドル 1時間足

1.1400接近で、寄り付きと引け値が近く、上下にヒゲを連続して出しています。これは、1.1400近辺で、大口で売りたい勢力がいたために起こりました。

日本の顧客とは違い、海外の顧客は、大口で売りたい場合、自分の手口(※)を見せたがらないため、指値はせず、コールオーダー(Call order)にすることが多く、銀行に対して、たとえば、1.1400に相場が接近したら電話(Call)してくれと依頼します。(コール・オーダー)

(※)手口:相場用語。相場で、だれがどれだけいくらで売買したかという売買内容。

銀行は、そのレベルになると顧客に電話し、顧客は、たとえば、「それじゃあ、1.1400前後で静かに3億ユーロ売ってくれ」といった指図をし、銀行はそれに従って売ります。

これに対して、投機筋が、たぶん上にあるストップロスをつけようと、死に物狂いで買ってきます。

そうすると、投機筋の買いを、顧客の指示を受けた銀行がもぐらたたきのように叩くため、上げたり下げたりの一進一退の動きとなり、そのために、このように寄り付きと引け値が近くヒゲを長く出すチャートが連続することになるわけです。

しかし、ここでいう顧客とは、投資家であることが多く、売ったらそんなに簡単には、買い戻しませんから、時間が経つにつれロングを抱えた投機筋にはその重みがボディーブローのように効いてきます。

この場合でも、3時間の一進一退の攻防戦の末反落して、投機筋が敗退しています。

また、このチャートの形状から、投資家が1.1400近辺であれば、売り興味があることが実感としてわかるわけです。

このように、短期のチャートを見るだけで、なにが起きているかを読み取ることは、結構できます。

超大口ロスカットが出るタイミング

マーケットには、ビッグプレーヤーと呼ばれる、超大口のポジションを持っている人たちがいます。しかし、彼らとて人の子、相場観が外れることも、当然あります。

そうした時、自分が間違っていると悟れば、さっさと手仕舞おうとします。しかし、ここで問題は、ポジションが大き過ぎるため、十分な流動性(交換できる)がある時間帯に、一気にポジションを手仕舞う必要があります。

その十分な流動性がある時間帯とは、三大マーケットと呼ばれる東京、ロンドン、ニューヨークのオープン直後です。

この時間帯は、マーケットがオープンしたばかりですので、相場自体に厚みがあり、また元気があります。

そこを狙って、怒涛の売りなり買いなりをしてきますので、いくらマーケットが厚い時間帯と言っても、急落あるいは急騰をします。

  • ユーロ/円 1時間足(東京オープン直後)

したがい、三大マーケットの寄り付き直後に、このような急激な動きをするようでしたら、ああ、ビッグプレーヤーの損切りが出ているなと見て、まず間違いはありません。

こうした超大口のロスカットをしている最中は、どこまで上がるか、あるいはどこまで下がるかはわかりませんので、押し目買い、戻り売りは危険です。

また、超大口のロスカットが出そうな時は、マーケットが急に静かになったり、打診的な売買があったりするなど予兆がありますので、なにかおかしいと感じたら、様子を見るほうがよろしいかと思います。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら