今まで、ドル/円についてはその方向性を円高で見て参りましたが、このたび、以下のような理由から、円安に180度転換することと致しました。

ドル/円の見方を変更する理由

まず、テクニカル分析でお話しします。あえてテクニカルで見るのは、相場の転換点を見極める時は、理屈で考えるのではなく、テクニカルで考える方が、経験上、分かりやすいと感じているからです。

それでは、まず、日足のドル/円を見てみましょう。

  • ドル/円 日足

ウェッジ(楔形)・フォーメーションが上に抜けて、買いのサインが出ています。

正確には、日足の実体(ロウソク足の寄り付きと引け値の間の太い部分)のレジスタンスであった5月21日の引け値111.03を、7月11日に大きく上回って112.00で、ニューヨークが引けているということです。

こうなると、今年の実体の安値である3月23日の引け値104.72と、5月21日の引け値111.03の差6円31銭を足した、つまり111.03+6.31=117.34近辺が日足のターゲットとなります。(ターゲット)

  • ドル/円 週足

週足を見ても、5月から7月に掛けて形成されたフラッグ(旗)・フォーメーションが上に抜けてきています。

下から上がってきてフラッグを形成したものを、ブル(強気)・フラッグと呼び、本来、上げ基調の中で形成されるもので、まさにそれが完成し上抜けたと言えます。ただし、114円近辺で、過去何度も止められており、114円あたりに強いレジスタンスがあることがわかります。目先は、この114円台が突破できるかが課題です。

月足を見てみますと、2015年からのペナント・フォーメーション(三角保ち合い(もちあい))がかなり収束してきたところから、7月の足が上に抜けてきており、レンジ相場からトレンド相場への転換点になろうとしているように見ています。

112円台以上で月が引けると、117円~118円を目指すことになりそうです。

  • ドル/円 月足

さらに申し上げれば、2015年から3年越しで形成してきた三角保ち合いがブレイクしてトレンド転換しようとしているわけですから、トレンド相場のスケールも大きいものと思われます。

すなわち、117円~118円近辺が最終点ではない可能性があります。つまり、2015年6月につけた高値125.86近辺までの上昇もあり得るのではないかと思われます。そして、ドル/人民元とドル/円の最近の推移を見比べてみると、おもしろいことがわかります。

つまり、米中の貿易摩擦が過熱し始めたこの4月からいずれもドル高になっています。

今や、中国に限らず、アジア圏は、世界でも最も成長著しい経済圏になってきており、域内の国々の連動性を強めています。したがいまして、ドルが人民元に対して上昇すれば、ドル/円も含め、ドルはアジア通貨全般に対しても強まってきています。

  • ドル/人民元 月足

  • ドル/円 月足

  • ドル/シンガポール・ドル

つまり、ドル/円も、先進国通貨という括りから、アジア通貨という括りで見なくてはならない時代に入ってきているのではないかと思われます。

なお、ドル/円については、本邦機関投資家による、オープン外債(為替ヘッジなしの外債運用)に絡んだ、下がったらドル買い、上がったらドル売りというオペレーション(通貨操作)が盛んに行われ、それがドル/円の動きを狭めているように推測されます。

しかし、上記でも述べましたように、ドルのアジア通貨全般に対する変動を無視したオペレーションは、マーケットに歪みを生み、結局は、大きな為替変動を生むのではないかと見ています。

米中の貿易戦争も、これからまだ拡大の様相です。夏場の上昇トレンド相場をサマーラリーと言いますが、今年はサマーラリーの夏になるのではないかと見ています。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら