なぜ西洋画にはヌードが多いの? ピカソって本当に絵がうまい?……そんな絵画の疑問、ありませんか? 名画がなぜ名画なのかよくわからない、という人も多いでしょう。1年に300件以上の美術展に足を運んでレビューを発信する著者が「名画のひみつ」を解き明かし、おもしろくてためになる絵画の知識を解説する『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)より、一部を再編集してご紹介します。

今回のテーマは『トリックアート』。

どこまでが絵なの? ついだまされるトリックアート

絵画の中でも独特なのがトリックアート。ドアを開けようとしたら、壁に描かれた絵だった、みたいな絵のこと。

ポンペイ遺跡にも見られるほど古くからあり、さまざまなタイプがあります。たとえば、建物にレリーフ(浮彫)を刻んだように見える絵を描いたり、天井画を平面で描きながら、遠近感を付けて立体的に見せたりするなど。建築やインテリアでさかんに取り入れられてきました。

名画の中にも、巧みな「だまし絵」がいくつもあります。レンブラント『カーテンのある聖家族』では、絵の周りの額縁やカーテンも描き込まれていますが、一見、絵の外にあるように見える仕掛けです。ちなみに、当時は埃除けとして絵の前にカーテンをかけ、開け閉めしていました。

ここには紹介していませんが、だまし絵作家として有名なマウリッツ・エッシャーは、だまし絵にとどまらない魅力的な作品を多く残しているほか、日本でも鈴木其一の「描表装」というだまし絵があります。

■絵の外にあると思いきや…

  • レンブラント・ファン・レイン『カーテンのある聖家族』1646年/カッセル州立美術館(ドイツ、ドレスデン)

子どもを抱く母親やそばに猫の姿が描かれています。ですが、その外側にある額縁や、手前にあるカーテンレールとカーテンまでも、じつは絵で描かれたもの。これもだまし絵の一つです。

■顔のつくりをよく見てみたら……

  • 歌川国芳『みかけハこハゐがとんだいゝ人だ 』1847~1852年/東京富士美術館(日本、東京)

人間の顔ですが、不思議な線がたくさん描かれています。よく見ると、人間の身体をたくさん組み合わせて描かれている! 手や指先も同様で、見るほどに不思議な作品です

【豆知識】

レンブラント、エッシャーはともにオランダ出身の画家です。フェルメールも同じようなカーテンを用いただまし絵的な作品を描き、またワルラン・ヴァイヤンは手紙をモチーフとしただまし絵を描きました。

次回のテーマは「それが理由!? 西洋画にヌードが多い本当のワケ」です。お楽しみに!

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『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)
著者:青い日記帳 監修:川瀬佑介

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