なぜ西洋画にはヌードが多いの? ピカソって本当に絵がうまい?……そんな絵画の疑問、ありませんか? 名画がなぜ名画なのかよくわからない、という人も多いでしょう。1年に300件以上の美術展に足を運んでレビューを発信する著者が「名画のひみつ」を解き明かし、おもしろくてためになる絵画の知識を解説する『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)より、一部を再編集してご紹介します。

今回のテーマは『ジャポニスム』。

西洋で“ジャポニスム”が盛り上がった本当の理由

日本では山や森、滝など、自然の風景をテーマにした作品が多くあります。歌川広重の浮世絵『東海道五十三次』シリーズでは、街道を行き交う人々とともに、山や川、雨や雪などの自然描写がバリエーション豊かに描かれています。

西洋では、宗教画や肖像画が多く描かれた後、17世紀には風景画も描かれるようになりました。ですが、日本画での自然の描き方は西洋画とはかなり違っていてため、とても新鮮に映りました。草花と一緒に虫を可愛らしく描いたり、目には見えにくい雨の様子を描くなど。そうした独特の構図や色使いは、西洋の人々を魅了しました。

19世紀後半、「ジャポニスム」と呼ばれた日本美術ブームが、ヨーロッパを席巻。印象派をはじめとした作家たちに影響を与えました。モネやホイッスラーが日本の着物を着た女性を描き、ガラス工芸家のガレは野に遊ぶ虫や花を作品に取り入れました。ゴッホは、浮世絵をそのまま油彩画で模写したほど、夢中になったのです。

■浮世絵を西洋画でマネしたらどんな感じ?

漢字までマネした“うそっこ日本語”がユニーク

  • 左:ゴッホ『雨の大橋、広重作品模写』1887年/フィンセント・ファン・ゴッホ美術館(オランダ、アムステルダム) 右:歌川広重『名所江戸百景・大はしあたけの夕立』1857年/東京富士美術館(日本、東京)

線で表現した雨が斬新だった広重の名作を、ゴッホがそっくりキャンパスに模写。構図はマネしたものの、筆使いや色使いにはゴッホらしさを発揮し、雰囲気の異なる作品に仕上がっています。

油絵で描かれる梅の花がなんとも不思議

  • 右:ゴッホ『花咲く梅の木、広重作品模写』1887目m/フィンセント・ファン・ゴッホ美術館(オランダ、アムステルダム) 左:歌川広重『名所江戸百景・亀戸梅屋敷』1857年/東京富士美術館(日本、東京)

インパクトのある梅の銘木が描かれた広重の作品をゴッホが模写。広重の絵をトレースして描いたと言われています。

【豆知識】

ゴッホの『タンギー爺さん』では、人物の背景にたくさんの浮世絵が描かれており、歌川広重の作品もたくさん描かれています。この作品からも、ゴッホが浮世絵にとても魅了されていたことがよくわかります。

次回のテーマは「ざわわ…ムンクの『叫び』を見ていると不安になる3つの理由」です。お楽しみに!

この連載の一覧はこちら

『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)
著者:青い日記帳 監修:川瀬佑介

「モナ・リザの絵はなぜあんなに有名なの?」「ピカソって本当に絵がうまい?」――そんな“絵画の疑問”、ありませんか? 国内外の美術展の詳細なレビューで圧倒的な支持を誇る著者が、 『モナ・リザ』からバンクシーまで、「名画がなぜ名画と呼ばれるのか」を解き明かす。絵画にまつわるおもしろくてためになる知識を解説する同書は、 AMAZONで好評発売中です。