なぜ西洋画にはヌードが多いの? ピカソって本当に絵がうまい?……そんな絵画の疑問、ありませんか? 名画がなぜ名画なのかよくわからない、という人も多いでしょう。1年に300件以上の美術展に足を運んでレビューを発信する著者が「名画のひみつ」を解き明かし、おもしろくてためになる絵画の知識を解説する『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)より、一部を再編集してご紹介します。

今回の名画は『ヴィーナスの誕生』。

ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』はなぜマンガチックか?

貝殻やちりばめられた花々、穏やかな表情の人物など、見ているだけでハッピーな気持ちになりますね。ルネサンス文化の中心地フィレンツェに生まれた、サンドロ・ボッティチェリが描きました。

  • 『ヴィーナスの誕生』1485年頃/ウフィツィ美術館(イタリア、フィレンツェ)

中央に立っているのは、ギリシャ神話に登場する愛と美の女神ヴィーナス。海から生まれて、ホタテ貝に乗ってやってきたという神話の通り、生まれたままの裸の姿え描かれています。周りには、風の神ゼフュロスや時の女神ホーラが描かれ、ヴィーナスを応援しているかのようです。

ボッティチェリは人物の輪郭線をはっきりと描く特徴があり、「線の画家」と呼ばれるほど。くっきりした輪郭線のおかげで、どこかマンガチックにも見えてしまいます。

■裸を恥じらう可愛いヴィーナス

ルネサンス期に注目された古代ギリシャ・ローマ神話をテーマに描かれました。それぞれに意味を持つさまざまなものが描き込まれており、自分でも調べていくとおもしろいでしょう。

A:時の女神ホーラは、ヴィーナスを祝ってベールを手にして迎え入れています
B:ヴィーナスの首はちょっと長すぎるのですが、絵画的に美しいバランスで描かれました
C:風の神ゼフュロスは、口から風を送って貝殻を騎士に近づけています
D:たくさんの種を作ることから、子孫繁栄の象徴である植物ガマが描かれています

■ボッティチェリの描いたもう一つの名作

『ヴィーナスの誕生』とセットで描かれたと言われる作品です。中央のヴィーナスの周りに花の女神や樹木の精などが描かれ、背景に描かれたオレンジが実った木々が「繁栄」を表します。

  • 『春(プリマヴェーラ)』1480年頃/ウフィツィ美術館(イタリア、フィレンツェ)

【豆知識】

ルネサンスとは、15世紀のフィレンツェを中心に始まった文化運動。古代ギリシャローマ文化を見直して取り入れ、この時代に遠近法や明暗法など、西洋美術の基本となる技法も多く確立しました。

次回のテーマは「『ひまわり』はゴッホの幸せな気持ちがあふれた名作だった」です。お楽しみに!

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『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)
著者:青い日記帳 監修:川瀬佑介

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