なぜ西洋画にはヌードが多いの? ピカソって本当に絵がうまい?……そんな絵画の疑問、ありませんか? 名画がなぜ名画なのかよくわからない、という人も多いでしょう。1年に300件以上の美術展に足を運んでレビューを発信する著者が「名画のひみつ」を解き明かし、おもしろくてためになる絵画の知識を解説する『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)より、一部を再編集してご紹介します。

今回のテーマは『西洋画にヌードが多い理由』。

西洋画にヌードが多い本当の理由

美術の教科書を見ていると、突然現れる裸体の女神などの絵にドキッとすることはありませんか? 古代ギリシャ・ローマ文明では、神に近い理想の姿として、美しさや強さを持つ裸体彫刻が多く作られました。『ミロのヴィーナス』などがそうですね。ですがその後、キリスト教が普及すると裸体の表現はタブーとされました。

しかし、ダメと言われれば見たくなるもの。画家たちも、美しい裸体をなんとか描けないものかと、頭をひねりました。その結果、ルネサンス以降の画家たちは「聖書や神話の一場面を描く」という口実で女神のヌードを描きました。クラーナハの描いたたくさんのヴィーナス、デューラー『アダムとイヴ』などです。ちなみに、ティッツィアーノの『ウルビーノのヴィーナス』は、現実の女性をモデルにしたとされ、色気たっぷりです。

こうした作品の多くは貴族が自宅でこっそり楽しむために持っていたもの。今も昔も、みな裸が大好きだったというわけですね。

■豊かさの象徴でもあるふっくらヌード

  • ピーテル・パウル・ルーベンス『三美神』1630~1635年/プラド美術館(スペイン、マドリード)

3人の女神を裸体で描いた、ルーベンスの作品です。かなりふっくらと描かれたヌードは、女性らしい美しさを褒めたたえる意味と、物質的な豊かさを表す意味があると考えられています。

■色気たっぷりなヴィーナスNo.1

  • ティッツィアーノ『ウルビーノのヴィーナス』1538年/ウフィツィ美術館(イタリア、フィレンツェ)

長椅子に横たわり顔立ちもリアルなヴィーナスは、じつは現実のモデルを使って描いたとされます。マネの名画『オランピア』もほぼ同じポーズで、影響を与えたと言われています。

【豆知識】

マネ『草上の昼食』では洋服を着た男性のとなりに、裸の女性を描きました。当時の風俗場面に一般の女性の裸を描いたこの作品は、絵画の近代化への道を開くきっかけになりました。

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『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)
著者:青い日記帳 監修:川瀬佑介

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