日本全国どこでも居住可能な「WORK LOCAL」、特別有給休暇やお祝い金などで子育てや家族介護を支援する「Fun for Family」 ー スタートアップとしては充実の福利厚生といえる。これを実現しているのが、「STORES プラットフォーム」を手掛けるheyだ。

今回は、hey PX(People Experience)部門 カルチャー本部 高橋真寿美氏に、同社の特徴的な福利厚生・社内制度に込められた思いや狙いについて聞いた。

  • hey PX(People Experience)部門 カルチャー本部 高橋真寿美氏

顧客中心で考える文化を育成するためのユニークな社内制度

heyは、小売業や飲食店などを営む中小企業をターゲットに、キャッシュレス決済やネットショップ開設、オンライン予約システムなど業務のデジタル化を一気通貫で支援するスタートアップ企業だ。2021年にはネットショップと一体化したPOSレジサービスの提供も開始し、店舗のデジタル化を“まるっと”サポートできる体制の強化を進めている。

事業持株会社として2018年に設立された同社だが、2021年1月に当時のグループ企業であったストアーズ・ドット・ジェーピー、コイニー、クービックの3社を吸収合併し、現在は、各社サービスの運営会社として事業を展開する。2021年8月に入社した高橋氏は、組織やカルチャーの統合に向け、ミッション・ビジョン・バリューの策定や浸透施策のほか、人事制度をはじめとする働き方の整備に取り組んでいる。

高橋氏によると、社内制度を考えるうえでは従業員の顧客理解を重要視しているという。heyでは、自社サービス利用者のことを「オーナーさん」と呼ぶ。リニューアルされたばかりの東京オフィスには、オーナーさんの商売繁盛を願う長さ14mの特注暖簾が設置されているほか、全国各地のオーナーさんがSTORESで販売している商品を実際に試せるコーナー「hey WAGON」もある。

  • オーナーさんの商売繁盛を願う特注暖簾を設置。広々としたコミュニケーションスペース

  • 全国各地ローカルな街のオーナーさんの商品が体験できる「hey WAGON」

この取組みの狙いについて高橋氏は「自社のサービスが使われる場面を自分たちで体験することで、よりお客さまのことを知って、学んで、普段の仕事に活かすことが必要という考えがもとになっている」と説明する。

STORESの各サービスを利用している店舗での買い物補助として月額上限5,000円が従業員に支給される「STORE Visit」というプログラムも、顧客理解を促進するためのものだ。現在では毎月60~70%の従業員が利用しており、Slackチャンネルで買ったものを報告しあったり、購入品ランキングを発表したりなどして同プログラムの浸透を図っているという。

多様なオーナーさんのため、多様な人が働けるように

heyにはこのほかにも、特徴的な社内制度が多数ある。

「WORK LOCAL」は、日本全国どこでも居住可能な人事制度だ。月数回程度の出社を想定し、交通費が月15万円まで支給されるという。新幹線や飛行機の通勤も可能となっている。 また、リモート環境整備の補助金として毎月1万円の支給もある。高橋氏は「オーナーさんは地方に多いということもあり、お客様に触れられる機会を得るという意味でも重要な制度」と話す。

社内外から高い評価を得ているのは、「Fun For Family」というプログラムだ。産休・出産・育休お祝い金の支給、パートナーの出産予定日前後で10日間の特別有給休暇を取得できる「ベビーウェルカム休暇」、子育てのほか介護や看病など二親等以内の家族の対応1人につき年5日(上限15日)の特別有給が付与される「ファミリーサポート休暇」と、充実の内容となっている。2020年度のベビーウェルカム休暇取得率100%、男性育休取得率85.7%、2021年度の女性育休復帰率100%という数字から、同プログラムの効果が伺える。実際に、社内からも「使いやすい」という声は多いという。

また、ベンチャー・スタートアップの場合、こうした福利厚生の整備は遅れがちになるが、同社は取締役のうち2名が子供を持つ女性ということもあり、会社設立直後という早いタイミングから子育てしながらでも安心して働ける環境をつくってきた。

「制度があっても使いづらければ意味がありません。heyでは、オンライン会議中に子供が入ってきても受け入れられたり、マネージャークラスのメンバーのカレンダーに『お迎え』という予定が入っていたりと、子育てしているメンバーに対する理解があります」(高橋氏)

heyがこのように多くの魅力的な社内制度を整えているのは、多様な人材を確保したいという狙いがあるためだ。高橋氏は「全国のオーナーさんは多種多様。多様なオーナーさんに対応できるよう、自分たちの会社でも多様な人が働けるようにしていきたい」と意気込む。

heyが求める人材とは

これまで中途採用がメインだったheyだが、今年からは新卒採用もスタートした。初の新卒メンバーは現在、職種を超えたチームを組み、2024年新卒向けの採用イベント実施に向けた「ルーキーズプロジェクト」を進めているところだという。

インターン生採用にも積極的に取り組む。本人の志向性を踏まえて年間随時受け入れている長期インターンシップのほか、エンジニア採用を強化すべく、今年9月にはハッカソン形式の2週間のサマーインターンシップが行われる予定となっている。

「heyでは、ミッションである『Just for Fun』を組織づくりにおいても大切にしています。Fun=楽ということではなく、楽しくあり続けるためには努力が必要という考え方です。そうした努力を続けられる方に、ぜひheyで働いていただきたいです」(高橋氏)