日経BPは、このほど『できるリーダーが「1人のとき」にやっていること マネジメントの結果は「部下と接する前」に決まっている』(1,980円/大野栄一著)を発売した。本書は、優秀なリーダーが持つ力についてひも解き、リーダーシップの質を高める「1人の時間」の重要性や過ごし方のヒントについて解説した一冊である。
リーダーの「喚起力」が部下の自発性を伸ばす
◼︎部下の主体性は、リーダー次第で高まりも低まりもする
リーダーとして組織を導くためには、「喚起力」を磨くことが不可欠です。喚起力とは、部下自身が自発的に行動したくなるような意欲や創造性を引き出す力のことです。
『星の王子様』で有名なアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリは、「船を創造するとは、人々に細かい仕事を割り振るのではなく、海原を目指す心をもたらすことだ」と述べたとされています。
このメッセージは、喚起力の本質を示しています。 具体的な指示や命令を与えるのではなく、人々に「広大で無限な海への憧れ」や 「可能性」を抱かせることで、自発的な行動を促しているからです。
◼︎部下の能力を疑うリーダーが三流であるわけ
リーダーの役割は、部下が自分のリソース(資源や能力)を最大限に活用できるよう サポートし、リソースフルな状態をつくり出すことです。
「リソースフルな状態」とは、自己の能力や経験、知識などのリソースにアクセスし、それらを効果的に活用できる状態を指します。この状態では心が安定し、パフォーマンスを最大限に発揮できます。
たとえば、結婚式のスピーチに立った際、緊張のあまり頭が真っ白になる人がいます。事前に十分な練習をしているため、スピーチを行うための能力(リソース)は備わっています。
それなのに頭が真っ白になったのは、何らかの理由で(会場が広すぎて緊張してしまった、時間が押してしまった、話す順番が変わった、など)リソースにアクセスできなくなってしまい、「リソースを使えない状態」に陥ってしまったからです。
一方、同じ状況でも、自信を持ってスピーチに臨める人は、自己の経験や練習の成果といったリソースにしっかりアクセスし、それを活用できています。これがリソースフルな状態です。
多くのリーダーは、「部下が成果を出せないのはリソースが足りない(能力がない)から」と考え、部下の能力や意欲に懐疑的です。
しかし、「誰もが仕事を成し遂げるためのリソースをすでに持っている」と考えることが重要です。
◼︎のびのびと活躍する部下は皆「リソースフル」
チームやメンバーが力を発揮できないのは、「リソースがない」からではありません。何らかの理由でリソースにアクセスできない状態にあり、その原因を見極め、適切にサポートすることがリーダーの役割です。
たとえば、部下が新しいプロジェクトに対して自信を持てず、成果を上げられない場合、リーダーはその原因を探る必要があります。部下が過去に成功した経験や持っているスキルを再認識させることで、自己のリソースにアクセスしやすくなり、リソースフルな状態を取り戻す手助けができます。
同様に、部下が十分なリソースを持っているにもかかわらず成果が出ない場合、リーダーはその原因を探り、「リソースにアクセスできる状態(リソースフルな状態/リソースを使いこなせる状態)」を整えることが求められます。
そのためには、リーダー自身が先入観を持たず、フラットな視点で部下と向き合うことが重要です。先入観は判断を曇らせ、部下がリソースにアクセスできない理由を正しく見極める妨げとなります。もちろん、リーダー自身がリソースフルな状態を保つことも重要です。
部下の強みや可能性に目を向け、肯定的なコミュニケーションをとり、部下がリソースフルな状態になるようにサポートしましょう。
書籍『できるリーダーが「1人のとき」にやっていること マネジメントの結果は「部下と接する前」に決まっている』(1,980円/大野栄一著)
本書では、部下の変化に気づく「観察力」やリーダシップを高める「主語の転換」についても解説。リーダーとしての在り方について模索中の方は、ぜひ本書を通じて実践方法を学んでみてほしい。
イラスト: 村林タカノブ